英国的読書生活

イギリスつながりの本を紹介していきます

権力の階段の先は・・・

2014-01-21 | イギリス

 

ヒラリー・マンテル「罪人を召し出せ」

 

原題は「Bring Up the Bodies」

前作「ウルフホール」の続編。前作に続いてブッカー賞受賞という死角無しの作品です。
ヘンリー王の秘書官として、外交から内政問題まで、その類まれな事務処理能力とバランス感覚で辣腕を振るうトマス・クロムウェル。そこには富と権力が自然と集まり、彼の視線の先を皆が注視する存在となっている。
アン・ブーリンが正式な后となり、イギリスは安定したかに見えたが、一方でお世継ぎ問題は一向に解決していない。ヘンリーとアンとの間に生まれた子は女の子。ヘンリーの関心は何時しかアンの女官の一人、ジェーン・シーモアに移り、アンとの間には微妙な空気が・・・。でもアンは諦めてはいない。懐妊の発表。そして軟禁されていたキャサリン前后の死。しかし、・・・・流産・・・・男の子だった・・・。
王位継承権を主張する者たちが眠りから目を覚ます。
ヘンリーはクロムウェルに問い質す。「アンとの結婚は正しかったのか?」
苛立ちを隠さない国王を前に、クロムウェルは「危うさ」を感じる。国の「危うさ」と自身の「危うさ」。
ここから彼の耳が動き出す。彼の目が動きだす。彼の鼻が動きだす。
アンの私的エリアへの近づきを許された者たちへの揺さぶり・・・。
噂話、想像、やっかみ、妬み、憧れ、敬い・・・。
決定的な証拠は無い。でも結論は決まっているのだ。
アンの傍に仕える楽士が圧力に屈し、口を割る。
それを発端に次々とジェントルマンたちの逮捕者が・・・。
宮廷内は息を潜める。ブーリン家はアンを見限る。シーモア家はクロムウェルに助言を乞う。
クロムウェルによりアンの告発書が出される。複数の男との不義密通。実兄との近親相姦。そして彼らとの会話の中で国王の死を語ったとして、反逆罪の適応。
当初、アンは后の身分を剥奪されて修道院に行かされるのだろうと宮廷中は考えていた。彼女自身もそう感じていたのだろう。クロムウェルも初めは考えていた・・・。
男どもは全員ロンドン塔で斬首刑。アンも日を変えて斬首刑。アンの斬首は普段使われる斧ではなく、ヘンリーがわざわざフランスから呼び寄せた執行人による剣にて執り行われた。

「危うさ」は去ったのか?

まだまだ物語は続きます。

 

 

 



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