二ノ宮知子「のだめカンタービレ」


 新交響楽団というノンプロ(アマチュアというと失礼なレベルです)のオーケストラに知り合いがいて、たまに池袋の東京芸術劇場へ演奏会を聴きに行きます。指揮者も日本の著名なクラスが出演するもので、毎回、高レベルの演奏で素晴らしいです。私はいつも2階席の一番後ろで聴いているのですが、これで定価1,500円は安いなあと思います。
 以前はチケットの値段は高くても外国の著名なオーケストラを聴くことが本物に触れるという感覚があったのですが、ある程度経験してこんなもんかと分かると、新交響楽団の水準で十分と思えます。コストパフォーマンスのよい演奏会です。

 前置きが長くなりましたが、「のだめカンタービレ」はクラシック音楽界を舞台にしたコメディ漫画です。最近はテレビや新聞などでもコミック本のランキングや紹介などをやっているので、この漫画が人気なのは漠然とは知っていました。ただ、クラシック音楽を舞台にしているという目新しさはあってもこれまでもバレエものも結構あったし(といっても漫画は読んでいませんが)すぐに読みたいという気はしませんでした。
 ところが、ちょくちょく拝見させていただいているブログ「おさかな♪の音楽日記」でこの漫画が頻繁に紹介されていて面白そうだったので手に取ってみました。

 おもしろいです。ギャグ、恋愛、青春の要素もおもしろいですが、クラシック音楽の部分も破天荒とリアルとの間の境界線上でうまく描かれていて結構説得力があります。人気漫画なのでストーリーなどは省略しますがお勧めです。

 それにしても漫画は安いですね。一巻390円なので12巻揃えても5,000円しません。音楽CDも含めた文化出版物については著作権と再販やレンタルの問題があり、一方で、大物の新譜も新人の挑戦作も同じ値段だということに素朴な疑問もあります。現時点ではこの件についてはコメントする知識を持ち合わせていないのですが、390円という値段には当然販売上の戦略もあるのでしょうが、なにか考えさせられるものがありました。
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夏川りみ「南風」


 夏休みの予定を考える時期が近づいてきました。沖縄行きたいなあ、ラスベガス行きたいなあと思うのですが、妻の出産を控えている今年は予定を立てることは出来ません。

 今となっては沖縄が好きになったのと夏川りみが好きになったのとどちらが先だったのかは憶えていないのですが、沖縄=夏川りみが大好きです。「涙そうそう」がヒットして紅白にも出場したので、今となってはメジャーですが、涙そうそうを初めて聞いて感動した3年前の夏は、当時キャンペーンでいろんなところで開催していた3曲くらい歌うミニコンサートに通ってしまいました。素人っぽいトークと当時下手な三味線も披露しての営業で、それでも歌を聞くと本当に涙が出ました。もともと沖縄音楽の先輩格のネーネーズは好きだったのですが、もう嵌ったという感じでした。

 このCDは、「涙そうそう」ヒット直後に発売された沖縄音楽を集めたミニアルバムのような構成になっています。「涙そうそう」は勿論いいのですが、初代ネーネーズ、古謝美佐子の持ち歌である「童神」、「黄金の花」、島唄の名曲である「イラヨイ月夜浜」、「てぃんさぐぬ花」、「花」が入っています。その後オリジナルのCDも2~3枚出ていますが、選曲からしてこのCDが一番好きです。おそらく聴いた回数だけだと生涯ナンバー1なのではないかと思います。一度聴きだすと繰り返し聴かないとやめられません。一晩中聴いていたこともあります。

 沖縄・宜野湾市の歌謡酒場「島唄」で聞いて一緒に踊った2代目ネーネーズの唄、おかまショーの「六本木金魚」での定番ショーである「花」の沖縄レビュー、そして夏川りみの唄。沖縄を思い出すと胸が熱くなるのはなぜなんでしょうか。

 ミニコンサートで聞いたのですが、夏川りみが好きな泡盛は「残波」(ざんぱ)の白なんだそうです。取扱店は少ないのですが、御徒町にある「多慶屋」では常に売っているのでたまに買ってきます。暑い時期に「残波」と氷を舐めながら、夏川りみの唄を聴く。私には至福の時間です。
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アバド指揮/ベルリンフィル「マーラー交響曲第6番<悲劇的>」


 アバドとベルリンフィルのマーラー・シリーズの第4弾です。第3番、第7番、第9番も素晴らしかったので大いに期待して聴きました。

 それにしてもものすごい音です。ゴージャスでゾクゾクするような音。特に弦の音、第2楽章のアンダンテ(通常の第2楽章と第3楽章が入れ替わっています)は聴いていて鳥肌が立ちそうです。磨き上げられた音に圧倒されます。このコンビの第9番を聞いたときもそうでしたが、初めて聴いた後の印象は、耳が洗われたなあというものでした。これは、指揮がすごいのか、オーケストラがすごいのか、録音がすごいのか。そんなの不可分、演奏全てを一体として聴いて楽しめばいいんだよと、それは尤もなのですが、どうも自分の中で整理できません。

 そこで、この演奏が何なのかもっとしっかり感じるために通常あまり使用しないヘッドフォンで大音響で聴いてみました。その結果は、もっと耳が洗われました。すごい音、すごい録音です。もう意味を考えるのは諦めました。こんな演奏をこれまで聴いたことがない以上、これはアバドという指揮者の統率のもとに生み出された芸術的な演奏なのでしょう。魅力的な演奏であることは間違いなく何も問題はありません。

 アバド時代のベルリンフィルのバカデカイ音については以前からよく批判的な書かれ方をされているのを読んでいました。オケのメンバーが好き勝手にやっている、アバドは完全に舐められている、コンサートマスターのクスマウルやブラッヒャーが辞めたのはそれに嫌気がさしたから、などなど。私は素人リスナーなので、ここで聴ける演奏でオーケストラが好き勝手にやっているのかどうかは分かりません。ただ、これだけの響きを生み出せるオーケストラはもうこれだけで価値があるんだと思えます。録音技術が進んで、このような演奏が実演でなくとも聴けるようになると、超一流ではないオーケストラはセールス上では更に不利になっていくのではないでしょうか。

 念の為、個人的にも好きで世評も高いバーンスタイン指揮ウィーンフィル盤を改めて聴いて比べてみました。やはりバーンスタイン盤が上です。マーラー演奏でバーンスタインを超えるのは難しいです。それでも、アバドのマーラー演奏は現代的でセンス溢れたものであり、バーンスタインとは違ったスタイリッシュな魅力に溢れています。早く続きを聴きたいです。
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「峰定寺」(京都 花背大悲山)


 美山荘の敷地の奥に「峰定寺」(ぶじょうじ)の入口となる鉄でできた門があります。宿の敷地を通らないと行けない寺なんて不思議なロケーションだなあと思っていたところ、帰京してから知ったのですが、そもそも美山荘は「峰定寺」参拝者の宿坊として始まったようです。それを3代目が昭和12年に現在のような料理旅館にしたんだそうです。それで納得しました。

 美山荘周辺は散歩に適しているとはいえないので、2日目の朝は散歩も兼ねてこのお寺をお参りしました。美山荘のスタッフから参拝するのであれば奥の家に奥さんがいるので必ず声をかけて参拝料を払ってからお願いしますと少し怖い顔で念を押されました。

 門から入ると、渓流が流れる敷地内に黄色い花が咲いていて本当にのどかです。昔の田舎はどこもこんな感じだったよなあと実際はそんなところに住んだこともないのに何か懐かしいような感じがしました。

 しばらくすると大きな白木の参拝門(というのでしょうか/写真)が現れます。昔の黒澤明の映画にでも出てきそうな雰囲気です。京都市内で手の込んだ装いを施された壮麗な門をいくつも見た後では、このむき出しの木のままの門は新鮮に感じます。ここから400段か500段、山道を登ったところに本殿があるんだそうです。
 脇の民家に管理する住職の奥さん(?)がいて、寺の歴史と登り方について説明を受けます。もともとは修行のために開かれたお寺なんだそうです。「六根清浄」(ろっこんしょうじょう)と唱えながら、登って心身を清める。六根とは、眼・耳・鼻・舌・身・意の働きのことで、身も心も無垢清浄になろうという祈りの言葉が「六根清浄」なんだそうです。首から掛ける鈴付きの袋と杖を借り、500円払ってから出発です。

 とても雰囲気のある山道です。我々が歩く音、山の音、チリンチリンと鳴る鈴の音しか聞こえません。以前、松尾芭蕉の「閑さや岩にしみ入蝉の声」で有名な東北の天童市近郊にある「山寺」を登ったことがありますがとても山や山道の雰囲気が似ています。

 そして、本殿が現れます。山の傾斜に作られた清水寺のような構造なのですが、これまた白木だけで作られており、全く装飾がなされていません。カメラを持ち込めないので写真はお見せできませんがストイックで神秘的な雰囲気のある本殿です。境内の周りの回廊を歩くことが出来るのですが、眺めも絶景です。

 存在を知らなくて行く予定のなかった峰定寺ですが、とても印象に残るお寺でした。今回の京都旅行のなかで最もよかった寺と言っても過言ではありません。厳格な修行場としての雰囲気を期待していた比叡山延暦寺が普通の観光寺(実態は違うかもしれませんが)で期待外れだったので尚更です。本当に心が洗われるようでした。
 美山荘に行く機会がなければ訪問しにくいロケーションですが、是非行っていただきたいお寺です。

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「美山荘 朝食」(京都 花背大悲山)


 どんなに夕食の美味しくない宿でも二流のホテルでも朝食(バイキング)はおいしく食べられます。外泊の醍醐味といえる部分だと思います。

 ところが、「美山荘」の朝食は若干期待外れです。何故かというと朝食らしくないからです。正直な感想は「昼食のような」食事です。

 まず、梅を溶かしたお茶のようなスープにようなものが出てきます。酸っぱさが食欲を刺激します。これで朝食への期待が膨らみます。

 そして朝食が出されます。内容は、「新玉葱の煮込み」、「山菜」、「珍味と大根おろし」にご飯とお味噌汁、それに二人で取る「椎茸と青菜」、「炊き合わせ」、「漬物」です。もちろん美味しいです。しかし、昨晩の食事の後では、あまりにも普通すぎて、驚きがありません。
 なにか朝食らしいもの、例えば卵を使った料理が欲しかったですが、それでは摘草料理とはならないのでしょうか。生卵を下さいと言おうかどうか迷いましたが、ニワトリを飼っているわけもなく、野暮かなとも思い止めておきました。
 当然、ご飯と味噌汁は朝作ったのでしょうが、その他のものは仕込んでおくか、作り置き出来るものだと思います。何か今作っばかりの食べ物があればよかったと思います。

 これだけの宿だからこそ、もう少し何か出来るのではないかと思いました。ただ、これは我々の感想なので、これでよいと思われるお客さんがいても当然です。

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「美山荘 夕食」(京都 花背大悲山)


 楽しみにしていた夕食。周辺の大悲山など京都の山や川で採れる食材を中心にした摘草料理なんだそうです。
 女性スタッフから、母屋の厨房脇の部屋で食べると聞いてほっとしました。部屋食はあまり好きではないです。美味しいものなら運ぶ時間が惜しい。すぐに食べたい。

 最近完成したという新しい棟。厨房脇のコの字型のカウンター。岐阜からのご夫婦と同席(同室)です。他のお客さんがいることは美味しい食事に暫くすると気にならなくなりましたが、これだけの料金、たったの4組であれば、4組とも個室になるような施設に出来なかったのかなあという気はしました。

 カウンター内と暖簾の後ろにある厨房とを往復して料理するのは、ご主人の下で任されているトップでしょうか。滋賀県から来ている若い料理スタッフです。
 頂いた料理は次のとおりですが、内容・順番が違っているかもしれません。また、料理の説明は受けたのですが山菜を中心に食材の名称について予備知識が少なくほとんど忘れてしまったのでいい加減で曖昧な表現ばかりです。

・「一献(日本酒)」
・「山菜(こごみ)」
・「和風前菜の盛り合わせ」(写真の料理)
・「お椀(白味噌仕立て、中に蓬で作った餅のような練り物)」
・「岩魚の刺身」
・「山菜の天ぷら 6種類くらい」
・「ちまき(さば寿司)2本」
・「曲がり筍を焼いたもの」
・「お椀(お澄まし、うなぎと山菜)」
・「岩魚の塩焼き」
・「蕗のとうの炊き合わせ」
・「豆ご飯と漬物」
・「クリームチーズ入りバニラアイスクリーム」

 摘草料理の印象をまとめて表すと、シャキシャキと歯ごたえがよく、新鮮で、苦味がある料理。といっても、枯れた精進料理ではありません。旨みも凝縮されています。食材のよさは勿論ですが、食材の持ち味を活かす調理がしっかり支えています。仕上がりは普通に見えますが、主役料理から小さな脇役料理に至るまできっちり調理されている。香りがよく繊細な旨みが詰まっています。「うまいなあ」と唸りっぱなしです。

 美味しかったのは…ほとんどになります。強いてあげると、始めの4つ。「こごみ」のシャキシャキ感。「前菜盛り合わせ」は写真では葉が邪魔してますが6品、小さいですがどれも味が鮮明です。「お椀」の白味噌のコク、旨み。「岩魚の刺身」の渋み、歯ごたえ。とあるサイトに「美山荘」と「草喰なかひがし」は、どちらも美味いが、「美山荘」のほうが華やかさがあって好きだと書かれてあるのを読みました。確かに味もそうですが見た目の美しさもあって山の幸が続いても飽きさせません。

 不満な点を上げるとすると、ご飯の前の「炊き合わせ」はこの段階ではもう十分です。私も妻も半分残しました。それから妻は山菜の天ぷらが大蒜の芽以外は味の違いがよく分からなかったということと後半に一つ高そうな食材(=肉)が食べたかったという感想のようでした。確かに思い返すと食材に肉を使っていません。これが摘草料理たる所以かもしれません。ただ、全く使わない訳ではなく、冬は山で狩猟した鹿や猪などの獣類を出すんだそうです。私は今回の料理はこれで十分満足できましたが、ネットで写真を見た猪鍋などが最後に出ると確かに完璧だなあという気はしました。ただ、冬にあの山道を登ってくるのは大変ですが。

 いずれにしても、私にとっては生涯最高の外食でした。美味しかったです。

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「ディープ・ブルー」


 このドキュメンタリー映画についてはミニシアターで上映されてヒットしていたのは知っていたのですが、最近は劇場に足を運ぶのがとても億劫になっているので、DVDで発売されるのを待っていました。
 とうとう5/27(金)に発売されたので、6/1(水)に渋谷に買いにいったのですがタワーレコードでもHMVでも売り切れで再入荷待ちとのこと。今回、ようやく購入することができました。

 もしかしたら、過去に撮影された映像の再編集ものではないかと危惧していましたが、心配は杞憂に終わりました。イギリスのBBC放送グループが新たに撮影した美しい映像ばかりです。宣伝帯に「製作7年、ロケ地200ヵ所、撮影フィルム7000時間」とあります。

 海にまつわる素晴らしい映像集です。
 冒頭のイルカが大きな波に波乗りしているシーンから映像の美しさに引き込まれます。海、水の美しさというより海の生き物のドラマが中心です。したがって、海の生き物が海の生き物を食べる一見残酷なシーンも多く含まれています。NHKのテレビや「ナショナル・ジオグラフィック」の映像で見て知っていたシーンもありますが、初めて見たシーンも結構ありました。単なる美しさを超えて自然の営みに惹きつけられます。

 詳細の内容は省略させていただきますが、もう3回も観てしまいました。こういう地球のダイナミックで美しい映像を観ると人間界の煩わしさもなんかちっぽけなことに思えてきます。大いに癒される映像です。2回字幕スーパー(英語版)で観て、1回日本語吹き替え版で観ました。こういうドキュメンタリーはオリジナル(英語)に拘ることなく日本語で聞くほうが分かりやすいです(と言ってもコメントは極めて少ないですが)。

 音楽も和楽の要素も取り入れたようないい感じの癒しメロディです。メイキング映像を見るとベルリンフィルが演奏しているようです。

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「美山荘」(京都 花背大悲山)


 京都の「美山荘」のことは随分前から有名なグルメサイトである「さとなおcom」で数少ない10点満点中10点の料理の宿ということで知っていていつか行きたいと思っていました。最近では、弟さんの店である銀閣寺参道にある和食処「草喰なかひがし」(残念ながらいつも予約が取れず未体験)共々、京料理の真髄をアラン・デュカスなどのフランス料理界の大物に紹介する様子を雑誌、テレビなどで見ていました。

 今回、妻が万博に行きたいと言い出したとき、すぐに「美山荘」と組み合わせた旅行にしようと決めました。「美山荘」はとても高いですが、妻の出産を控えているこの時期しかもう行く機会はないと思ったからです。
 念願かなった「美山荘」は想像以上に素晴らしい宿、食事でした。盛りだくさんなので宿全般、夕食編、朝食編と3回に分けてご紹介します。

 今回の旅行は仕事の合間を縫って金曜日から月曜日までの3泊4日と決めてから予約を始めました。美山荘には1ヵ月半前頃に電話をしたと思うのですが、金曜日と土曜日は満杯でしたが、幸いにも日曜日は離れの部屋が空いているというので予約しました。後で知ったのですが宿泊は1日4組までなんだそうです。週末は混んでいます。料金は、夕食の量(?)の違いだと思うのですが4万円、4万5千円、5万円とあり、迷いましたが中をとって4万5千円でお願いしました。

 大原の寂光院に着くと「6月2日まで休観」の看板が立っていたので本日の寺院巡りは終わりにして宿に向かうことにしました。美山荘にこれから向かう旨電話すると、近道の山道はとても険しいのでそちらは避けて、鞍馬を経由されたほうがよいとのアドバイスをいただきました。

 鞍馬寺近辺はとても混雑していますが、その先は山道に入ります。「美山荘まで21km」という青い看板があり、その後は分岐にこの看板が出てくるのでナビがないとしても辿り着くことはできると思います。道は結構狭いですが、京都バスが通っているくらいですから、譲り合えばなんとか通り抜けることは出来ます。それでも4~5回はバックしたでしょうか。冷や冷やしながらの運転です。ようやく最後の登りに入る道を右折してあと2km。山奥深くへ入り込んでいく感じです。
 鞍馬から40分間くらいでしょうか。ようやく到着し、宿の敷地内の駐車スペースに駐車するとスタッフの若い女性が走り寄って出迎えてくれます。駐車していただいて有難うございますと言うので何のことかと思いましたが、宿の入口前まで(といっても10メートル先ですが)運転して、後はスタッフに任せてキーも預けるシステムのようです。

 美山荘は門から入って、左が母屋(宿泊1室)と厨房・食事処の棟、右が渓流沿いの離れ(宿泊3室)とお風呂になっています。
 我々は離れでしたので、直接、部屋に通されます。もともと少ないですが他のお客さんに会うこともほとんどありません。
 テレビもスリッパもない宿です。離れの中は綺麗に掃除されていて気持ちがいいです。そして、部屋の外に何と言うのでしょうか木でできた広い「ベランダ」のスペースがあり、その先に渓流と山の景色が広がります。窓を開けると渓流の音に部屋は包まれます。かなり大きな音で聞こえますが勿論うるさい音ではありません。癒されます。テレビの音もないので部屋にいる間は渓流の音しか聞こえません。この宿は料理のことばかり書かれているので、こういう部屋だとは全く知りませんでした。携帯電話は山奥で圏外となり繋がりませんが、トイレはウォシュレットで快適です。とてもいい部屋です。

 離れに入ってから、車から荷物を運んでくれた若いスタッフに代わって部屋付きの女性スタッフになります。20代後半でしょうか、とても感じがよくキビキビ動く女性です。ここのスタッフは女将から全員、モンペ・はかまを着用していて純和風の雰囲気です。

 まず、お茶と蓬の和菓子が出され、その後にお抹茶が出されます。そして、館内の案内と食事の説明などがあります。17:00頃でしたが、折角なのでまず周りを散歩してから、お風呂、18:30からの夕食にしてもらいました。散歩に出ましたが、周りは大自然ですが、歩き回れる範囲はそんなに広くなく、暫くして宿に戻りました。部屋からの渓流の眺めのほうがよいかなという感じです。ここはお風呂が共有なので、順番に入っているようです。これがこの宿の数少ない欠点でしょうか。我々がまず散歩をしたいというと女性スタッフは承知しましたと言っていましたが、本音は先にお風呂に入ってほしそうでした。京都には温泉はない(?)のでお湯は天然の温泉ではありません。源泉を持ってきて沸かしているとのことでした。お風呂からも窓の外に渓流と山の緑が眺められます。我々が入った大きなお風呂の方は蛇口が5ヵ所ありますが、隣の小さなお風呂は蛇口が1ヵ所です。それでも夕食前の時間に到着が重なるとこちらも使っているようです。外泊するときくらい広いお風呂に入りたいか、部屋付きのお風呂でゆっくりと入りたいかの好みは人それぞれだと思いますが、ここのお風呂は、他のお客さんが入浴していると入れないので若干問題ありかなと思います。風呂上りに氷で冷やされた杏酒が出されます。サービスは至れり尽くせりです。
 その後の摘草料理の夕食はとても素晴らしいものでしたが、食事については次回以降にご紹介します。テレビがないので食事の後は、雑誌でも読みながらウトウトして眠るだけです。

 翌朝、近くを散歩していると若い男性スタッフがお客さんの車をタオルを使って丁寧に洗車していました。残念ながら我々の車はレンタカーだったので関係なかったのですがそれでもとても気分のいいサービスです。
 因みに、朝のお風呂は小さいほうにお湯が張ってありますが、大きいほうのお風呂のお湯は抜いてありました。

 朝食後、美山荘奥の峰定寺に参拝しました。この峰定寺もとても素晴らしかったので別途ご紹介します。宿に戻るとコーヒーが出されます。精算を済ませてから宿を後にしました。
 基本料金4万5千円にお酒代、サービス料15%に税金でトータル11万1千円でした。まあ高いですが、満足度も高いです。

 なお、今回は部屋付きの女性に心付けを3千円渡しました。これについてはご意見あると思いますが、値段も高いしまあいいかという感じでした。以前、広島の宮島にある有名な料理宿Sで、心付けを渡さなかった(用意していたが仲居さんが複数いてどの人に渡せばいいか分からなかった)ために、とても嫌な思いをしたことがあります。それも気になっていたので必要経費だと割り切りました(それでも高級旅館評論家(?)の柏木壽氏の本によると3万円以上の宿なら5千円が相場らしいですが…)。
 ところが、出発間際に、若女将から昨日は係のものが過分なお心付けをいただき申し訳ありませんと、そのお返しにお土産で売っている自家製の「蕗のとうみそ」の小瓶を一ついただきました。こちらとしては、女性スタッフに個人的に渡したつもりだったのですが、報告しているようです。心付けを貰うことを当然と思わない、貰うから丁寧なサービスをしているのではないという宿の心意気を示しているのだと思います。こういう対応がファンを多くしていくんでしょうね。

 スタッフの感じのよさ、部屋の居心地のよさは最高水準ですが、宿だけではお風呂の問題、値段が高いこともあり、もう一度訪れたいという気持ちにはならないかもしれません。しかし、ここは何と言っても料理がメインです。これまで宿泊した宿の中で最も満足度の高い宿となりました。安くてもとてもいい宿はいくつかあり、それは自分にとっての宝物のようなものです。それでも「美山荘」の食事の魅力は値段の高さはあっても他の宿からずば抜けています。機会があれば是非再訪したいです。因みに、年内の土曜日は予約で満杯なんだそうです。

 最後のお見送りで初めて、写真でよく見ていた女将の中東和子さんを見ました。母屋のお客さんに付いているのか、最近は若女将に運営の大半を任せているのでしょうか。
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千ひろ(京都 祇園)


 話題のグルメ本「美食の王様」でオールジャンル総合6位とされている京都の祇園にある割烹「千ひろ」。同じく祇園にある「千花」という有名割烹の先代主人の次男が2001年に開いた店だそうです。
 コースは1万2千円、1万5千円、1万8千円の3種類。予約時に電話で聞くと量ではなく質の違いだということだったので奮発して一番高い1万8千円のコースをお願いしました。

 祇園の花見小路から脇道に入り、さらにそこから細い路地に入ったところに店はあります。我々は一周してやっと場所が分かりました。清潔感があり凛とした佇まいです。
 少し緊張して入口を開けると、すぐ前のカウンターの中にご主人が立っており、にこやかに歯切れのいい声で迎えてくれます。カウンターは8席。左隣に座っていた女性2人組は雑誌社か何か芸能関係に近い仕事をしているようで、ご主人と「この前、カンクロウが・・・」というような話しをしていました。一方で右隣は結構崩した服装の若い3人組で、そんなに畏まる雰囲気ではありません。

 頂いた料理は、記憶が定かでないので順番・内容違い、和食に関する語彙不足から曖昧な表現ですが次のとおりです。

・「キウイ風味のタレがかかったそら豆、ホタテ」
 和食でもフルーツを合わせるのが流行りなのでしょうか。口始めとしての爽やかな風味とそら豆とホタテの食感が楽しいです。

・「山菜が中に入ったジュレ状の食べ物の上にウニを載せたもの」
 長崎の五島列島で取れたウニ。もう少しすると熊本の天草産のものが入ってくるがそちらのほうがもっとコクがあるんだそうです。

・「お造り(トロ、鯛、鯛の皮など) 細切りの塩昆布添え」
 目の前でかなり質のいいマグロの塊から中トロにあたる部分でしょうか、端を切り捨て、吟味して切り分けてくれます。こういうのは視覚付だと楽しいし食欲が刺激されます。それに鯛に、鯛の皮を湯引きしたものでしょうか。くるっと丸まっています。これを極細切した塩昆布を添えて食べます。「千花」の伝統的な名物(食べ方)なんだそうです。とても上品な味です。わさび醤油との食べ比べも楽しいです。刺身は身が締まっていて勿論美味しいですが、皮がいいアクセントになっています。

・「お椀(白身魚、しいたけ、餅のような練り物など)」
 カウンター内でご主人が何度も味見をしながらお汁を作ります。香りは私の故郷でのお雑煮のものに近いです。おそらく椎茸、鰹節などオーソドックスな出汁なんだと思いますが秘訣は分かりません。具はお椀に入って厨房から現れ、それにお汁を注いで出来上がりです。繊細でコクがあってとても美味しいです。お椀は和食ではメイン料理になるのでしょうか。とても満足度の高いお椀です。食べる前に、写真を撮っていいですかとご主人に聞くと、写真ならこっち向きがいいですとお椀の方向を変えてくれました。

・「筍を焼いた物」
・「湯葉の冷たいスープ」
・「琵琶湖の稚鮎、白子、外子」
 ここまでの料理はご主人がカウンター内で作り、カウンター越しに供されますが、ここからは厨房で作ったものがスタッフから運ばれます。カウンターで作っているところを見せること自体、新しい試みなんだそうですが、前半がご主人の手作りで、中盤以降は弟子が作っているような印象を受けます。誰が作ろうと店として水準は同じに違いないのですが、これだと見た目の楽しさが半減することになります。最後の盛り付けだけでもよいので、もう少しカウンター内での作業を見せてから仕上げる工夫があれば楽しいのになと思いました。また、ここから料理の説明をご主人がするのか、スタッフがするのか明確に区分けされていないようで、聞かないと説明がない料理もありました。

・「鮭 時知らず」
・「富山産の白エビのかき揚げ」
・「茄子の焼き物 胡麻ダレ」
 この3品がメインにあたるのでしょうかとても美味しかったのですが、満腹感が出てくる頃なので、もう少し捻りがほしいような気もしました。具体的には、「職人で選ぶ45歳からのレストラン」というグルメ本に写真付で紹介されている「タイのお頭の酒蒸し」のようなものが出されることを期待したのですが…。

・「鮎ご飯、冷たい味噌汁、漬物」
 最後はご飯。量は普通でよろしいですかと聞かれます。かなりお腹一杯になっていたので普通でお願いしました。変わっているのは味噌汁が冷たいことでしょうか。鮎ご飯と合わせておいしくいただけました。

・「フルーツジュース」
 デザートがフルーツジュースというのも「千花」の名物なんだそうです。聞き逃しましたが、マンゴーとオレンジのような爽やかなジュースでした。


 以上、評判どおりとても美味しいです。美味しいことは間違いないのですが、もう少し驚きが欲しいかなあという気もしました。高級割烹のカウンターでゆっくり食事するというのは考えてみるとほとんど経験がなく、和食が何なのかを知りませんが、洋食のようなメインでの最大の盛り上がりというピークがないような気がしました。もちろん平坦ではありませんが、なだらかな山の稜線のような起伏です。この後行った「美山荘」の食事でも感じたのですが、空腹感も手伝って初めの4~5品がとくにおいしく感じる。後半の盛り上がりが弱い。

 どれも美味しいです。本で紹介されているように、五感を澄ませて真剣に向き合わないとこの凄さは分からないのかもしれません。ただ、後半に、これまで食べたことのない驚きのある料理を一品食べたかったというのが本音です。この飽食の時代に1万8千円でそれを求めるのは無理があるのでしょうか。

 私がビールとお酒をいただいてトータル41,500円でした。出来れば現金でと言われ慌てましたが持ち合わせがありほっとしました。

 ご主人がお見送りをしてくれます。気持ちよく食事を終えることができました。

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権兵衛(京都 嵯峨)


 細木数子と徳光和夫が出演した京都旅行のテレビ番組で紹介された店なんだそうです。こんなにおいしい「ニシンそば」を食べられる店は他にないと絶賛されていて、その番組を見た妻が旅行の企画の段階で是非行きたいと言うので予定しました。

 店構えは小奇麗で少々高そうな感じですが、店中は感じのいいおばさんが出迎えてくれる庶民的な雰囲気です。ちょうど昼前の時間帯だったので込むんじゃないかと思い、2人用の小上がりに座ろうとすると、「おいでやす。空いてますから広いところにどうぞ」と4人用の小上がり席を勧めてくれます。

 メニューには印刷された各種そば・うどんの上に手書きで「にしんそば 1000円」と書かれています。それ以外にも、おつまみと持ち帰り用に「にしんの甘露煮 1本500円」と載っていたのでニシンは前からの名物料理なのでしょう。

 写真のとおり見た目は普通の蕎麦ですが、確かに「ニシンの甘露煮」は美味しいです。とても丁寧に骨抜きの処理がされていて、ほどよく身が締まっています。風味もとてもよく蕎麦に合います。蕎麦、汁は普通といえば普通ですが、全体のバランスがとてもよく美味しく感じます。思い返してみれば、そば屋のメニューにニシンそばはよく見ますが、あまり注文して食べた記憶はありません。したがって、他店のニシンそばと比較は出来ないのですが、この店の「ニシンそば」はとても満足できる味だと思います。

 お土産用のニシン甘露煮を2人前買ってしまいました。
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京都の寺院・庭園(醍醐寺)


 醍醐寺の参道の写真です。

 次回以降は、京都での食事と宿のご報告です。生涯最高の食事を頂くことができました。

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京都の寺院・庭園(三千院)


 三千院の庭園です。
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京都の寺院・庭園(円光寺)


 円光寺の庭園です。
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京都の寺院・庭園(詩仙堂)


 詩仙堂の庭園です。
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京都の寺院・庭園(宝厳院)


 宝厳院の庭園です。
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