詩の自画像

昨日を書き、今日を書く。明日も書くことだろう。

若木

2017-01-18 06:35:42 | 

若木

 

この若木は木に戻ろうとしている

一Fのメルトダウンにより放射能を下げるため

切り倒された庭の大木

いつの間にか新しい命が誕生していた

 

春夏秋冬を五年も繰り返してきた

希望とは何かを

若木は知らず知らずの内に身に付けた

空に向かって真っ直ぐに伸びろという親の教え

 

震災後丸六年になるから

切り倒された一年後に命が宿ったことになる

命の水は親木の導管を通して摂取してきた

まだ導管の水は欠かせない

 

除染が機能して

放射能の値は低くなってきたが

今も放射能の魔方陣が解けない場所がある

帰還困難区域だ

 

若木は空を目指して伸び続けている

津波被害を被って生き残った木が新聞に載った

この新しい命の誕生は誰も知らない

毎日若木が伸びていく、希望の木だ

 

切り倒された大木は神経が細やかだった

暑い夏には日陰を作り寒い冬には雪の傘となった

若木も大木になろうとしているから

親木の神経の細やかさも引き継いでいる

 

親木の導管から自分の導管へと切り替わると

若木は親木の衣を脱ぎ捨てる

立派な年輪も出来上がってくると

親木は切り株となって朽ちていくのだ