市の中心部に
コンパスの針を刺した
大きな市の机に地図を広げて
くるりと一巡させる
狂いがあると困るから
もう一巡くるりとした
コンパスの円の中は
原発震災前の町
空き地がいっぱいあった
もう一度くるりと
まわしてみると
もうどこにも空き地がない
円の外に
はみ出た多くの場所には
新しい住宅ができ
こんな!
と 驚くような場所にも
新しい住宅が
ぶら下がるような姿でできている
もうこの地図では
住宅事情など分からない
不動屋さんは
休みもなく空き地探しで忙しい
それにしても
とんでもなく価格が高騰した
大工さんも同じで
二年先まで予定がぎっしり
坪単価も大きく上昇した
それでも
そこに割り込みたいのだが
この価格ではと
諦めが先に立つ人が増えている
仕方がないからと
県境を出て
少しでも安い土地を求め
住宅を建築する
と いう避難者が増えてきた
一方役場では
古里が無くなるという危惧が
年々大きくなってきた
国と歩調を合わせるようにして
帰還を促している
放射線量は
除染の効果はあるものの
まだらだ
それでも戻れという声が大きい
町のアンケートの数値は無情だ
国や町の声を跳ね返すように
町を維持する数値にはならない
無情にならなければ
子供たちや孫たちの世代にまで
責任が持てない
放射線量は目に見えないし
後からじわりと影響がでてくる
五年目に入って
少しずつ出てきている
線量パンクの作業員のことが
新聞報道された
また一歩古里が遠ざかった
目に見えないから怖いという
この判断は
住宅事情がどうであれ
臆病なほどいい