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10月B定期(ジャナンドレア・ノセダ指揮)

2008年10月29日 | N響公演の感想(~2016)
10月29日(水)ジャナンドレア・ノセダ指揮 NHK交響楽団
《10月Bプロ》 サントリーホール

【曲目】
1.ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第2番ハ短調Op.18
 【アンコール】ドビュッシー/前奏曲集第1巻~「西風の見たもの」
Pf:レイフ・オヴェ・アンスネス

2.レスピーギ/ブルレスカ Op.59
3.ラフマニノフ/レスピーギ編曲/5つの練習曲「音の絵」

今月のN響B定期は冒頭にラフマニノフのコンチェルト、後半に軽めの曲が置かれる変則プログラム。

その始めのラフマニノフがいきなりの圧巻。アンスネスは大きな手で鍵盤を掴み、これから展開する演奏を予感させるような底力をにじり出す。それに導かれたオケとの協奏は、普段聴き慣れた熱っぽくもロマンチックな弦のうねりに乗ったアルペッジョとは随分雰囲気が違い、勇ましい行進曲のよう。コントラバスのピッチカートが打楽器のようにビートを刻み、ピアノが明瞭に烈しいコントラストで進んで行く。熱くたぎり沸き上がり噴き上げる溶岩のよう。そしてトゥッティでの強烈なクレッシェンドでグィーンと盛り上がり、一瞬にして弱奏へと転じる、出来過ぎなほどに巧いオケのパフォーマンス。この曲の最初の2分半程の演奏がどんなだったか、これでイメージ出来るだろうか…

演奏は全曲に渡ってこのスタイルを維持。高いテンションのオーケストラに、とにかく良く鳴るピアノがクリアにバリバリと響き渡り、駆け巡る。危なげ全くなし、音たちは実に正確に鳴るべきところで鳴るべき音量と音響で打鍵される。颯爽と誇らしげに全曲を閉じると、N響B定期には珍しい万雷の拍手とブラボー。

ただ、僕はこの演奏に心酔することができなかった。余りに出来過ぎた、何か作り物めいたものを感じてしまった。この演奏には汗臭さや曲が持つ特有の臭いといったものが皆無。指揮のノセダとピアノのアンスネスが得意技を披露し合っているような、体操競技のウルトラCをこれでもかというほどに見せられたような気分… ウルトラCが悪いというわけではないのだが。

N響は巧い!アンサンブルとしても、ホルンの松崎さんやクラの横川さんを始めとするソロ達も。ただ、絶妙な「間」や「匂い」を大切にするコンマスのマロさんが、この指揮とピアニストでは持ち前の「ルフトパウゼ」を出す隙を与えてもらえないような気がした。この指揮者、何だかヤンソンスみたい…

アンスネスが拍手に応えて弾いたドビュッシーも、西風の向こうにある異郷の空気といったものは感じられなかった。何故か「そういえば昔ワイセンベルクってピアニストがいたっけ…」なんてことをふと思い出した。

後半の曲目はその点、とくに「音の絵」のようなリアルな情景描写をイメージするような曲ではノセダのパフォーマンスがぐっと引き立つ。細部まで明晰に描き出す写実性は鮮やかな映像をリアルに見せてくれるようで、オケから伝わる高いテンションが気持ちをワクワクさせてくれた。

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