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足繁く通う演奏会の感想等でクラシック音楽を追求/面白すぎる台湾/イタリアやドイツの旅日記/「ドイツ留学相談室」併設

2006年 夏のヨーロッパ旅行 ~コルマール~

2006年10月05日 | 2006 夏のヨーロッパ旅行
【国境の駅・バーゼル】
ベルンからコルマールは電車でちょうど2時間。途中のバーゼル(Basel)はスイス、フランス、ドイツの3国の国境にまたがる駅だ。面白いことに「バーゼル・スイス駅」「バーゼル・フランス駅」「バーゼル・ドイツ駅」とそれぞれの国用のバーゼル駅がある。これらの駅間は徒歩で移動できるのだが、それぞれがそこそこの距離で離れている。

ベルンで乗った電車はコルマールまで直通で行くのでバーゼルではそのまま乗車していればいいはずだったのだが、検札のときに「この車両はバーゼル止まりだから、バーゼルに着いたら前の車両に移動して下さい。」と言われていたので、「バーゼル・スイス駅」に着いて一旦電車を降りた。

ところが、そのホームの掲示板にこの電車は"Nicht einsteigen"(乗車できません)と出ているではないか!「前の車両に乗り換えようと思って降りただけなのに、もうこの電車には乗れないのか?」とあせった。不安になって駅員に「コルマールに行きたいんですが…」と訊ねると「コルマールはフランス駅に行って、そこから別の電車に乗れ」というようなことを言われた。どういうこと?

でも今降りた電車の車両の行き先表示板には"Colmar - Strasbourg"と書いてある。それに中にはお客も座っている。多分、いやこれで絶対に大丈夫なはず!と思いなおして、そこに乗り込んで座っていると、間もなく発車して、ゆっくりと動いて別のホームに停車。そこは「バーゼル・フランス駅」だった。

「バーゼル・フランス駅」ではお客がいっぱい乗車してきた。みんな何やらフランス語をしゃべってるし、持っている新聞や雑誌もみんなフランス語だ。さっき「乗車できません」と書いてあったスイス駅は降車専用で、こっちのフランス駅は乗車用だったことがわかった。車内の雰囲気はすっかりフランス風になった。

ヨーロッパの、とりわけEU内なんて国境があっても気づかないことが殆どだったが、妙に国境を実感した。


コルマール COLMAR

フランス・アルザス地方のワイン街道の村、リクヴィールが今日の宿泊地だが、その前にまずはコルマールで一旦荷物を預け、ウンターリンデン美術館(Musee Unterlinden)を訪ねた。コルマールは7年前に一度来ているが、その時に見逃したグリューネバルトの名画「イーゼンハイム祭壇画」をどうしても見ておきたかった。


ウンターリンデン美術館は内部に回廊と中庭を持つ。もとは修道院だったところで、祭壇画を見るのに相応しい場所ではないか。

【イーゼンハイム祭壇画】

ドイツ・ルネサンスのグリューネヴァルトの傑作「イーゼンハイム祭壇画」はいくつも展示室を過ぎた奥の礼拝堂に静かに、まさしく「祭壇画」として展示されていた。
祭壇画中央のキリストの磔刑図は、ここの礼拝堂の空気も、時間さえも止めてしまうかのようなリアリティで迫ってきた。
「復活」など全く想像もしえないような、命の片鱗すら抜け去ってしまったような「死」に支配された静か過ぎるイエスの姿。
それに対し、全身が震え、か細く搾り出すような嗚咽が聞こえてくるような悲しみと、それでも現実を受け止めなければならないという覚悟を背負ったような聖母マリアや、必死で祈るしかないというマグダラのマリアは、体の中を熱い血が悲痛にうごめくような「命ある存在」として描かれている。
この「死」と「生」との対比、絵筆による驚くほどリアルな描写が、見る者の心の奥底に動かしがたい「死」の意味を突きつけてくる。祭壇画の前に置かれた長椅子からしばらく立ち上がることができなかった。

美術館を出て、リクヴィル行きのバスが出るまでの小一時間、コルマールの旧市街を散策した。窓辺に花を飾った木組みの家や三角屋根の古い家が軒を連ね、お土産屋やカフェやレストランがひしめく明るい町並みは、華やかで絵のように美しい。

そうした旧市街の中でも最も美しい水辺の地区、プティット・ヴェニーズ(Pettie Venise)へも7年ぶりに訪れたかったのだが、バスの時間が心配だったので残念ながらあきらめた。今回は殆ど「イーゼンハイム祭壇画」だけのためにコルマールに寄ったことを思えば、まあ仕方がない。

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