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パリ原則とやらを読んでみた5(まとめ)

2005-05-19 00:00:00 | 人権擁護法案
国内機構の地位に関する原則(パリ原則) 《外務省HP》

パリ原則英文版《国連人権高等弁務官事務所HP》

「国内人権機構:人権の促進と擁護のための国内機構の設立と強化に関するハンドブック」について《外務省HP》

パリ原則を読んでみてわかったことを箇条書きにしてみます。
1.「国内機構」=「人権委員会」の任務は、原則として、「議会・政府等に対して勧告を行うこと」である(【権限及び責務】3(a))。つまり、「人権委員会」は法令等制度の改善を勧告することで多数派の支配する民主政のプロセスに働きかけ、それによって一般的な形で人権の救済を行うことが予定されているということです。
2.「人権委員会」に、個別の人権侵害事案を扱う権限を与えることもできる。しかし、その場合でも、議会・政府への働きかけにより法令の改善を通じて人権救済を行うことが「人権委員会」の原則的任務であることに鑑みれば、公平性に配慮しなければならない(【準司法的権限を有する委員会の地位に関する補充的な原則】本文)。つまり、「人権委員会」が個別の事案に介入するとしても、特定の事案に集中的に深入りするようなことがあってはならないということです。そういうことは、法令等の改善を通じてなされることが原則だからです。
3.「人権委員会」は「議会・政府等に対して勧告を行う」ために必要な範囲で「いかなる者からも聴取し,いかなる情報や文書をも入手する」ことができる(【活動の方法】(b))。パリ原則のどこを読んでも「人権委員会」が個別の事案に介入する場合に情報の入手等につき強制権限を持つとは書いてありません。「人権委員会」の情報入手等に関する強制権限は、あくまで「その活動の枠組みの中で」(【活動の方法】本文)与えられるものです。 そして、「その活動の枠組み」が個別的な事案を指すものではないことは明らかです。「人権」だから「拡大解釈してもいい」ということにはならないのは当然です
もっとも、個別の事案に強制権限を付与するべきという国連文書がないではありません。それは「国内人権機構:人権の促進と擁護のための国内機構の設立と強化に関するハンドブック」です。これについては、つぎに書きます。

「パリ原則」はそれ自体が直接国内通用力を持つ条約ではなく、国内法への変成手続きを必要とする条約です。そして、その手続きによって提案されたのがこの度の「人権擁護法案」ということになります。以上のような内容を持った「パリ原則」から、今回の「人権擁護法案」が生まれたことに奇異な感を受けざるを得ません。

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