現代アート道楽の日々。

首都圏の展覧会の感想など。しばしば遠征。【不定期更新】

直島旅行記(ベネッセハウス)

2005-12-23 | アート感想@遠征
前の記事の続き。

地中美術館チケットセンターからマイクロバスに乗り、宿泊先のベネッセハウスに戻る。ベネッセハウスは美術館とホテルが融合した建物で、こちらも安藤忠雄による設計。

最初に、予約していたレストランで夕食。HPの写真では、団体旅行での旅館の食事みたいに皿がゴテゴテと並んでいるけど、実際は一品ずつ運んでくれて、じっくり味わうことができる。郷土色を強めたコース料理「直島遊膳 きとま」は、とりわけ魚介類が新鮮で、刺身(タイ、シマアジ、サザエ)と海鮮しゃぶしゃぶ(サワラ、タコ)が絶品。ちょっと値が張ったけど、十分それに見合う内容だった。

食事のあとは屋内作品を鑑賞。四十数点の充実したコレクションは、どの作品も観ごたえがある。その中でも私の一番のお気に入りは、ブルース・ナウマンの《100生きて死ね》。ホールの天窓から光がこぼれ落ちる昼間に観るのも良いけど、暗闇の中でネオンが妖しく光る夜は、また別の表情を見せてくれた。このほか、コンクリートの隙間から雑草が生えているように見える、須田悦弘の木彫《雑草》もオススメ。

続いて別館に移動。本館と別館を結ぶ6人乗りのモノレールには、宿泊者はルームキーで自由に乗ることができる。宿泊専用の別館は人工の滝や池があり、ライトアップされて非常に幻想的な光景だった。建築を楽しんだあとは、ラウンジバーで夜景とアートを眺めながらカクテルを楽しむ。カクテルはなかなかの味だったけど、チーズは市販の包装そのままだったのがちょっと残念。

そして宿泊する部屋に戻る。部屋はゆったりとした造りで、当然のように室内にも作品が飾られている。ベランダからはライトアップされた瀬戸大橋が美しく、天気が良ければ満点の星空も美しいに違いない(曇ってた……涙)。机の上には夜食として可愛らしくラッピングされた稲荷寿司が置いてあったけど、さすがにおなか一杯だったんで、冷蔵庫に入れて翌朝食べることに。

あと、部屋にはテレビがなかったけど、代わりに『直島通信』などのドキュメントや、「スタンダード展」などのカタログがあって、テレビを見るよりも充実した時間を過ごすことができた。でも、アンテナはあったので、頼めばテレビを借りられたのかもしれない。

冒頭の写真は、翌朝撮影したベネッセハウスの玄関。

次の記事に続く。

直島旅行記(地中美術館)

2005-12-23 | アート感想@遠征
前の記事の続き。

地中美術館の少し手前にあるチケットセンターでチケットを購入。地中美術館へ向かう途中に、モネの庭園をイメージした「地中の庭」があったけど、冬だったのでイマイチ。

さらに少し歩いて、地中美術館に到着。敷地内では撮影厳禁なので、冒頭の写真が最後の撮影。

この美術館は、ベネッセが所有するモネの《睡蓮》を展示するために構想されたもので、奈義町現代美術館(7/30の記事)と同様に「まず作品ありき」の美術館。モネ以外には、デ・マリアタレルの作品も恒久展示されている。

美術館の設計は安藤忠雄によるもので、コンクリート打ちっ放しの壁や、壁のスリットから注ぐ光は、いかにも安藤建築といったもの。建築のほとんどが地下に埋設されているけど、通路の天井がぽっかり開いていて空が見えていたり、中庭が吹き抜けになっていたりするため、地下にいるとはあまり感じなかった。

最初に、最も深い地下3階にある「ウォルター・デ・マリア室」へ。この部屋は、部屋全体が《タイム・タイムレス・ノー/タイム》というインスタレーションになっている。コンクリート打ちっ放しの空間に鎮座する巨大な花崗岩の球体は、まるで世界の始まりからそこにいたかのような雰囲気を漂わせていた。また、四方の壁に配置された、一つとして同じ組み合わせのない27組の金柱の列も、この空間の宗教的・神秘的な雰囲気をさらに厳かなものにしていた。

続いて、地下2階の「ジェームズ・タレル室」へ。ここには3点の作品があって、そのなかでも《オープン・フィールド》が特に素晴らしかった。壁にスクリーンのように青く光る部分があって、その前の階段を上っていくと、スクリーンのように見えていたところが開口部だということが分かる。さらに開口の中に入っていくと、全身が青い光に包まれ、自分がどこに立っているのか分からなくなるような感覚。後ろを振り返ると、通常の電灯に照らされた「外部」が強烈なオレンジ色に見えるのも印象的だった。

そして、同じく地下2階の「クロード・モネ室」へ。白い床、白い壁、白い天井で囲まれた空間(しかもスタッフは白装束)で観る5点の《睡蓮》は、オールドマスターの絵画というより、今の時代の生々しいアートという感じがした。

作品を観たあとは、「地中カフェ」で休憩。このカフェは斜面の中腹に突き出たような位置にあって、海を眺めながらお茶を飲んだり、ランチ(1500円~)を食べたりできる。モネのレシピを再現したバナナアイスクリームを試してみたけど、濃厚なバナナの味と香りが口いっぱいに広がって本当に美味しかった。また、カフェの奥の扉から外に出て、潮風を浴びるのも気持ち良かった(ちょっと寒かったけど)。

最後に、ジェームズ・タレル《オープン・スカイ》ナイト・プログラムを鑑賞。寒いうえに雨がぱらつく生憎のコンディションだったけど、刻々と変化する空の色と、日没後のLEDによる光の演出が本当に美しかった。人生で一度は観ておくべきかも。なお、カッパ・タオル・ひざ掛けの貸し出しあり。

美術館を出ると、あたりはもう真っ暗。天気が良かったら満天の星なんだろうなあ……。

次の記事に続く。

直島旅行記(序章)

2005-12-23 | アート感想@遠征
現代アートの聖地(?)、直島へ行ってきた。実は2回目の来訪だけど、前回(3年前)は地中美術館も護王神社もオープンしていなかったなあ。

今回、あえて陸路を選択したけど、ちょっと裏目。関東は良い天気だったけど、豊橋あたりから徐々にあたりが白くなっていき、岐阜羽島を過ぎると真っ白。大雪による徐行運転で1時間ほど到着が遅れ、1つ後の船になってしまった。

宇野港に着くと目と鼻の先に直島が見える(冒頭の写真)。15分ほど船に揺られ、直島・宮ノ浦港に上陸。本当に近い。

宮ノ浦港から町営バスに乗車。イベントがあるせいか、いつものマイクロバス「すなお君号」ではなく、臨時の大型バスだった。それでもあっという間に満席になって、立っているお客さんもちらほら。

バスの中から石井和紘設計の小中学校や町役場(改修中)を眺め、ベネッセハウス下で下車。ベネッセハウスに荷物を預けたのち、蔡国強の《文化大混浴》などの屋外作品を観ながら地中美術館を目指す。

写真の巨大なゴミ箱は、今年設置されたばかりの三島喜美代《もうひとつの再生 2005-N》。産廃処理施設と現代アートが共存する直島にふさわしい作品として設置されたとのこと。ただ、ベネッセハウスからも地中美術館からも遠いのが難点。

そして、いよいよ地中美術館へ。

次の記事に続く。