デカダンとラーニング!?
パソコンの勉強と、西洋絵画や廃墟趣味について思うこと。
 



『海の都の物語―ヴェネツィア共和国の一千年〈上・下〉』 (塩野七生ルネサンス著作集) (新潮社)読了。

『ローマ人の物語』を書く前に、特定の人物や時代ではなく国そのものの歴史を『海の都の物語』で描いたことは大きかったろうなぁというのが読了直後の感想。
同じ作者の本とはいえ『ローマ人の物語』『ローマ亡き後の地中海世界』『十字軍物語』『皇帝フリードリッヒ二世の生涯』『ギリシア人の物語(途中)』と読んでくると、史観のちがいで歴史的事実がどのように裁かれるかといったことや、世界を変えた発明品がいかなる交易ルートに乗ってもたらされ改良されまた世界に普及していくダイナミズムとか、より多角的に歴史を捉えるにはそれなにの時間がかかるんだなぁと分かったようなことを思ってしまった。
『海の都の物語』ではヴェネツィア共和国の歴史を描いているが、自国に資源を持たない国が交易でもって発展するために自国の政治体制をいかなるものにしていったか、また思想や信仰の異なる周囲の国々と交易するうえで肝に銘じたことや外交上のテクニックのきめの細かさについて知ることのでき、とてもおもしろかった。また読んでいて、ヴェネツィア共和国の興隆期が飛ぶ鳥を落とす勢いの戦後の日本の絶頂期と重なるようにも思えたところもある。
もちろん、別々の国が同じ歴史をたどることはない。とはいえ、似て非なるともいえるし、「非て似なる」ようにも感じたが、国が勢いを失う前に先手を打つことができなかった点ではヴェネツィア共和国と日本とでは決定的な違いがあると思える。
国の栄枯盛衰の歴史は国があるだけ存在するが、その歴史に学ばないのみならず、人としての習性をも理解しようともせず、ついついわかりやすさだけを追求していくような衝動は私にもある。歴史を紐解き活用することは耳の痛いことを言われることでもあるが、その耳の痛いことというのは読み手にとってはまるで知らなかったことばかりであることが多い。今回もそのことを痛感した読書となった。

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