孔子廟の大成殿(台北)
奈良行博 著『現代中国の道教――庶民に生きる信心文化』(阿吽社) を読んでいると、道教も仏教も儒教も中国の伝統的文化や習慣を担いながら信仰活動をしており、また道教も儒教も仏教も、仏寺が道観(道教の祭祀・礼拝・修道のための建築物)に変わったりその逆もあったゆえその変遷や盛衰を追っていくと、各々の事情が複雑極まりない事実があることにまず驚かされる。それに加え、たださえ広い中国に地域によって土地神が異なり、その土地神の廟境内には道教・仏教・民間信仰が各種混在していたりする例もあったりするなど、中国の宗教は決して一言では語れず、多種多様なのだということにも驚かされる。
さて、上に再掲した台北市の孔子廟だが、これは祠廟(しびょう)にあたる。祠廟は神霊を祀って祭神儀礼や信仰活動が行なわれる記念的建造物の全般を指すが、本によればこれも一筋縄ではいかないらしい。ただ、祠廟建築には地方色が認められ、その様式には個性が現われるという。
上の孔子廟は1970年代に再建されたものだが、この様式は福建系祠廟である。福建省と台湾は近いので、台湾に福建省からの流入者が多いことをこの孔子廟の大成殿も示しているといえそうだが、大陸の方にはこの様式の道観も存在しているのだという。なので、私の見た孔子廟は、福建系祠廟様式の孔子廟であって、孔子廟がすべて福建系祠廟様式ではないのだ。軽はずみに「孔子廟って福建系祠廟様式だよね」などと言ってしまわないようにしよう(笑)。
(ちなみに、台北市の孔子廟は2011年以降、けっこう充実したものになっているらしい。詳しくは、こちらをご覧になれば分かると思うが、もし再び台北に行けたらまた孔子廟に立ち寄りたいものだ。)
(つづく)
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