パール・S・バック『大地』読了。
ずばり、大河小説の名作である。
作者の経歴でも察することができるが、彼女は相当、中国のことに通暁していたことは分かる。また作品で描かれている時代を生で見つめてきた人が書いた作品であることも分かる。
『大地』はそれ自身のオリジナリティを持つ叙事詩といえるし、ありとあらゆる小説の主だったあらすじを思い出せるような面を持っているようにも思う。とくに印象に残ったのは、それは古典として評価される要素、つまりはどこかで聞いたことのある話や日常で得れたり嫌でも付き纏う人生の経験則みたいなものが、王家の人々の生き方に写し出されているところである。おそらく作品から読者が感じるものを一言で言い表すとしたら、それは「血」であろう。この家族という木の根にしかと流れている血がもたらす運命の写実的かつ綿密に迫力のある表現を用いて、ここまで描ききっている作品は1931年以前の作品では個人的には覚えがない。
私の読んだ『大地』は新潮文庫の全4巻の分だが、その作品解説には1960年代後半の中国の研究者が人民軍を擁護する見地から、『大地』に「人民軍の功績」について書かれていないことを批判した「研究」の例が紹介されているが、改革開放後の現代中国では『大地』がいかに読まれ、どう解釈されるのか興味を覚える。"外国人"の方が中国の混迷期をいかにも中国っぽく描いているじゃないか、と思う人が案外少なくないのではないだろうか。
(途中経過1)
(途中経過2)
(途中経過3)
| Trackback ( 0 )
|
|