フランスに揺られながら DANS LE HAMAC DE FRANCE

フランス的なものから呼び覚まされることを観察するブログ

J'OBSERVE DONC JE SUIS

ヴォーヴナルグとは QUI EST VAUVENARGUES ?

2006-07-14 23:55:07 | 科学、宗教+

先日このブログへのアクセス・キーワードを見て驚いた。「ヴォーヴナルグ」 で70件ものアクセスがあったからである。このブログでは一つのキーワードで多くて10件、普通は数件のアクセスなので異常なアクセスになる。以前には 「マチュピチュ」 で同様のことがあった程度。どこかの学校の課題にでもなったのであろうか。

この人の名前を見た時の正直な反応は、この人誰?というもの。そのページを読み返してみると、ショーペンハウアーが引用した人であった。ショーペンハウアーの発言は覚えているがこの人については全く記憶に残っていない。今回、謂わば歴史に埋もれている人を掘り起こすような面白さを感じながら、まずウィキペディアを調べてみた。

リュック・ド・クラピエ、ヴォーヴナルグ侯爵
Luc de Clapiers, marquis de Vauvenargues
(6 août 1715 – 28 mai 1747)

日本で言えば、8代将軍徳川吉宗の時代の人。エクサンプロヴァンスの貧しい貴族の家に生れた彼は、学校でギリシャ語やラテン語を習うことはなかったが、翻訳でプルタークを読み、その崇拝者になった。18歳からの10年間は軍隊生活。戦いに次ぐ戦いであった。その後友人が文学への道を薦めるが、貧しくてパリに出ることはできず。外交官への道を探るもならず。

結局、30歳でパリに落ち着くが、ヴォルテールなどとの交際を除いては引きこもりの生活をする。ヴォルテールの薦めで、父には逆らい文筆生活に入り、"Introduction à la connaissance de l'esprit" 「精神認識序論」、 "Réflexions et Maximes" 「考察と箴言」 などを著す。わずか31歳でパリで亡くなる。彼の 「精神認識序論」 はネットで読める。

Introduction à la connaissance de l'esprit (1746)

ざっと目を通したが、江戸時代のフランス語とは思えぬほど読みやすいという印象を持った。

両著は 「不遇なる一天才の手記」 として訳されている (関根秀雄訳)。早速手に入れてみたが、30歳そこそこで、これほど断定的にものが言えるのかと驚かされる。悟ってしまったのだろう。やはり天才か。今日のところは、900以上ある箴言のうち200程度に目を通したが、その年齢のせいか、見ているところが違っているのか、今ひとつ中に入ってくるものが少ない。その箴言からいくつか。

「戦争の重荷は隷従のそれほどではない。」
« La guerre n'est pas si onéreuse que la servitude. »

「隷従はあくまで人間を引き下げる。人間がこの境遇を好きになるまで。」
« La servitude abaisse les hommes jusqu'à s'en faire aimer. »

「偉大な事柄をなしとげるには、おれは決して死ぬはずはないくらいの意気込みで生きなければならない。」
« Pour exécuter de grandes choses, il faut vivre comme si on ne devait jamais mourir. »

「大多数の人々は己の身分の枠内に小さくなっていて、思想の上でその枠をつきぬけるだけの勇気すら持たない。だから、偉大な事柄の思索のためにいわば小さな事柄ができなくなってしまった人たちも、なるほど世間にはいくらもあるけれど、小さな事柄にばかりかかずらっていて偉大なことは感ずることすら出来なくなった人たちに至っては、益々多いのである。」

この連休に街に出て、吉宗の同時代人の声にもう少し耳を傾けてみたいと思っている。ピンとくるものが出てくるかどうか楽しみにしながら。

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今回、このブログの中にある話題や言葉を頼りに辿り着いた方々の興味を一つの基点として、ブログの中身を味わい直し、世界を広めることができるということを知った。これからの一つの楽しみになりそうである。

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