映画は楽しい!

今日見た映画の覚え書き(のみ)

草原の実験

2016-07-05 11:56:27 | 外国映画
『草原の実験』(TEST)(2014年/ロシア)


 


監督* アレクサンドル・コット(Alexander Kot)
出演* エレーナ・アン(Elena An), Karim Pakachakov, Danila Rassomakhin, Narinman Bekbulatov-Areshev


全編セリフが一言もなく、登場人物の関係や事情ははっきりとはわからないのだが、すべての画面が圧倒的に美しく、緊張感があって目を離すことができない。

「実験」とは何なのかは最後のシーンでわかるのだが、人は本当に少しのモノだけで暮らせるものなんだなあということに圧倒的感慨を覚えた。そんなささやかな暮らしのなかでも人はそれぞれに喜びや悲しみを抱え、それぞれに強い意志を持ってこつこつと自分の人生を築いていっている。そういうものを一瞬に破壊してしまうものがあることを最後のシーンが強烈に感じさせる。舞台はカザフスタンだそう。



黒澤明監督作品

2016-03-15 15:45:55 | 日本映画
黒澤明の映画をリアルタイムで見たのは晩年の3作くらいで、それらにはまったく感心しなかった。この人がなぜ「世界のクロサワ」なんだろうと不思議に思っていたので、あらためて全作品を見ることに。
結果、初期の作品は本当に斬新で、こまかいところにものすごく工夫があり、見ている人をぐいぐい引っ張っていく面白さがあった。


『一番美しく』(1944/85分/白黒)
出演* 矢口陽子、入江たか子、志村喬、萬代峰子
光学軍需工場で働く女子挺身隊と、彼女たちを暖かく見守る寮母(入江たか子)の物語。
戦意高揚映画を目ざされたのだろうが、軍需工場の管理職の男たちをはじめとする周囲のおとなたちがみな穏やかで優しいので、少女たちの哀れさが際立ってくる。そこにメッセージがあるのかも。


『虎の尾を踏む男たち』(1945/58分/白黒)
出演* 大河内伝次郎(弁慶)、榎本健一、藤田進(富樫)、志村喬、小杉義男、仁科周芳(岩井半四郎ー義経)
歌舞伎『勧進帳』の、義経・弁慶一行の安宅の関所越えの場面を描いたもの。
強力(ごうりき)役のエノケンが怪演。エノケンってものすごく個性的で変な役者だったんだな。


『素晴らしき日曜日』(1947/108分/白黒)
出演* 沼崎勲、中北千枝子、渡辺篤、菅井一郎


『酔いどれ天使』(1948/98分/白黒)
出演* 志村喬、三船敏郎、小暮実千代
反骨精神旺盛で一途な町医者(志村喬)が結核にかかったヤクザの青年(三船敏郎)を助けようとする物語。
しゃべりまくる元気旺盛な志村喬というのも初めて見たが、三船敏郎も日本人離れした美声年だったんだなあとびっくり。波打ち際をスローモーションで走る夢のシーンなどは、フランス映画のフランス人俳優を見ているようだ。


『蜘蛛巣城』(1957/110分/白黒)
出演* 三船敏郎、千秋実、山田五十鈴
びっくりの完全な『マクベス』翻案。美しい!








繕い裁つ人

2015-10-12 11:42:25 | 日本映画
『繕い裁つ人』(2015/日本)
監督* 三島有起子
出演* 中谷美紀、三浦貴大、伊武雅刀、余貴美子、中尾エミ


渡辺葵『繕い裁つ人』という漫画が原作らしい。これは前評判(宣伝?)が高かったんだが、見たらつまらなかった。
なにか素敵そうな雰囲気だけでできていて、まるでリアリティがない。もちろん映画にリアリティはなくたってぜんぜんかまわないんだが、これは小さな町のふつうの人々のつましい日常生活を描くヒューマン・ドラマ(?)なんだから、そこにリアリティがないと見ている人に訴えかけてくるものがぜんぜんないんである。

だいたい、町の小さな仕立て屋の先代(主人公の祖母)が作り、孫の若い女性がお直しを続けている服を町の人たちが着て、毎年「夜会」を催し、鹿鳴館時代のように踊るなんて考えられるか? そもそも中谷美紀という女優にもリアリティがないかも。歩きかたがロボットのようだし、あんなふうに背中にものさしが入っているような直立不動の姿勢でミシンなんて踏めるか?とか、突っ込みどころ満載。





武士の一分

2015-10-12 11:07:05 | 日本映画
『武士の一分』(2006/日本)

監督*山田洋次
出演*木村拓哉、壇れい、笹野高史、坂東三津五郎、緒形拳


「一分」は「いちぶん」と読み、「譲ることの出来ない一身の面目、名誉」を意味するのだと初めて知った。藤沢周平の原作は『盲目剣谺(こだま)返し』というごくごく短い短篇で、そこに一度だけ出てくる「武士の一分」という言葉からこれだけの映画を仕立てた山田洋次の力はさすがという評があった。山田洋次らしく、暖かくて抑制のきいた人情ドラマ。

主演のぜんぜん武士らしくない木村拓哉が思いのほかよかった。下級の取るに足らない浅薄な武士にも、譲れない「一分」があるということがうまく出ていた。歌はへたでも、山ほどいるアイドル志望者のなかから抜け出てくる人というのは、やっぱりたたいて磨けばどこまでも伸びる素質と勘のよさがあるんだなあと感心。




八日目の蝉

2014-12-28 21:26:56 | 日本映画
『八日目の蝉』(2011年/日本)
監督* 成島出
出演* 永作博美、井上真央、小池栄子、余貴美子

角田光代の小説の映画化作品。
井上真央、永作博美と子役たちの演技力、カルト集団の教祖役・余貴美子の怪演が圧倒的。






悲しみのミルク

2014-08-19 11:45:23 | 外国映画
『悲しみのミルク』La teta asustada/The Sorrow of Milk(2009年/ペルー)

監督*クラウディア・リョサ
出演*マガリ・ソリエリ(ファウスタ)
第59回ベルリン映画祭金熊賞


圧倒的。哀しく美しく恐ろしく、映画でしか表現できない作品だと思った。
ファウスタ役の女優の表情がすばらしい。最後に希望が見えたので救われる。





ベンジャミン・バトン 数奇な人生

2014-05-29 21:42:07 | 外国映画
『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』The Curious Case of Benjamin Button(アメリカ/2008年)

監督* デヴィッド・フィンチャー
原作* スコット・フィッツジェラルド
出演* ブラッド・ピット(ベンジャミン)、ケイト・ブランシェット(デイジー)、
    ティルダ・スワントン(エリザベス:ベンジャミンの育ての母親)、ジェイムズ・フレミング(ベンジャミンの父親)


長い!(165分)。壮大な愚作。特殊メーク技術の展示会。
エリザベス女王もフラッパーも老婆も演じられるケイト・ブランシェットは、バレエも踊れるんだなあ。





アンナと過ごした4日間

2014-04-15 23:07:42 | 外国映画
『アンナと過ごした4日間』Cztery noce z Anną(ポーランド/2008年)

監督* イェジー・スコリモフスキ
出演* アルトゥール・スコランコ(レオン)、キンガ・プレイス(アンナ)


孤独な男の悲しく切ない映画。

この世でたったひとりの身内の祖母と暮らすレオンが、「雪が降ってきたよ、ばあちゃん」と言いながら家に帰ってくる。病気で少しボケかかった祖母の姿が見えないので、レオンは不安になって家のなかを探すのだが、そのとき字幕には「ばあちゃん」と出て、レオンは「ばっちゃん、ばっちゃん、ばっちゃん!」と叫ぶのである。ポーランド語はわからないが、ばあちゃんのことを「ばっちゃん」というのかな。すごく不思議。



*追記: ポーランド語でおばあちゃんのことを「babcia バブチャ」というそうだ。
     これでポーランドに行ったら少なくとも「おばあちゃん」だけはわかる。

嘆きのピエタ

2014-02-15 11:51:27 | 外国映画
『嘆きのピエタ』Pieta/피에타(2012年/韓国)

監督* キム・ギドク
出演* イ・ジョンジン(ガンド)、チョン・ミンス(“母”ミソン)


息子を思う母親の尋常ならざる強さ激しさを描いた韓国映画らしい作品。
2012年ヴェネツィア映画祭で金獅子賞をとったそうだが、暴力映画は嫌いだ。



私を離さないで

2014-02-09 21:39:37 | 外国映画
『私を離さないで』Never Let Me Go(2010年/イギリス、アメリカ)

監督* マーク・ロマネク
出演* キャリー・マリガン(キャシー・H)、アンドリュー・ガーフィールド(トミー)、キーラ・ナイトレイ(ルース)、シャーロット・ランプリング(校長)


カズオ・イシグロの同名の小説が原作。原作に沿って、しかも原作をよく理解して平明に作られているので、小説を読んだときよりもストレートに悲しみが伝わってくる。人間は誰でもかならず死ぬということが救いに思える。