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今日見た映画の覚え書き(のみ)

『荒野のストレンジャー』と『ペイルライダー』

2010-04-26 16:32:08 | 外国映画
今日見たDVD:
『荒野のストレンジャー』High Plains Drifter(アメリカ/1972)
監督*クリント・イーストウッド
出演*クリント・イーストウッド、ヴァーナ・ブルーム(サラ)、ビリー・カーティス(小人のモーディカイ)


『ペイルライダー』Pale Rider(アメリカ/1985)
監督*クリント・イーストウッド
出演*クリント・イーストウッド、マイケル・モリアーティ(ハル)、キャリー・スノッドグレス(サラ)、シドニー・ペニー(ミーガン)


クリント・イーストウッド監督2作目の『荒野のストレンジャー』とそれから13年後に制作した『ペイルライダー』は、話の中身がよく似ている。どこからともなく現れた無敵のガンマンが、虐げられている人々を助け、ならず者や悪徳保安官をやっつけて、またどこへともなく去って行くというお定まりの西部劇なのだが、実はものすごく変わっている。どちらの作品でも、主人公のガンマンはどうやら幽霊らしいのだ。

それははっきりとは語られないし、主人公の背景はいっさい説明されないのだが、唐突に挿入されるフラッシュバックや何気ないセリフで暗示される。『荒野のストレンジャー』では、クリント演じる流れ者のガンマンはどうやら町の住民たちに見殺しにされた正義の保安官のよみがえりらしいし、『ペイルライダー』では非道な連邦保安官とその部下たちに撃ち殺された男らしい。ゆらゆらかげろうが立ち昇る荒野にふいに現れた馬上の男は、悪辣な事業家に追い立てを食っている砂金掘りの村の人々を助け、自分を見殺しにした町の人々にちょっとお仕置きをしつつも結局は町を救い、自分を殺した男たちに復讐し、ウィスキーをあおって静かに黄泉の国に帰っていくのだ。

いままでこんな西部劇があったろうか? クリント・イーストウッドの作品をずっと見ていくと、この監督はすごく変わったひとだということがわかってくる。一見、単純な勧善懲悪劇や娯楽サスペンスやアクション映画のようで、それはそれで単純に楽しめるのだが、よく考えると妙な場面や腑に落ちないエピソードがたくさん含まれている。皮肉やあてこすりやユーモアもあちこちに見える。リアリストでもある。一人で何人ものガンマンを撃ち殺すなんてできるわけがない、できるとすればそれは「この世のもの」であるはずはない。それでこんな西部劇をつくってしまうのだ。そうやって見ていくとクリント・イーストウッドの映画はどれもとても面白い。