日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

ドコモVSアップル~スマートフォン戦争の行方を占う

2010-11-09 | ビジネス
今年急激な伸長を見せるスマートフォン市場。国内の携帯電話は急速にスマートフォンへの乗り換えが進んでいます。昨日はNTTドコモが冬春モデルを発表し、この冬のボーナス商戦へ向けた役者が出揃う形になりました。国内ではソフトバンクが独占販売するアップル社Iphoneの独走を止められるのかが注目。ドコモVSアップル(ソフトバンク)の対立構図を軸に、この冬以降の日本のスマートフォン市場の行方を占ってみます。

まず、この冬のドコモの新機種の目玉として既に10月発表で店頭にもお目見えしているのが『GALAXY S』『GALAXY Tab』。今回発表の機種はシャープ製の『LYNX 3D SH-03C』東芝製の『REGZA Phone』などの高機能スマートフォンがメインで、これらは『GALAXY』も含めてすべてOSにはアンドロイドを使用。完全にIphoneを意識したつくりとなっており、これまでの高機能携帯電話をさらにグレードアップする機能が各種搭載されています。これらドコモのスマートフォン各種の機能面でのメインは、ネット閲覧はもとより、1000万画素レベルの高精度カメラ、3D映像機能、おサイフ携帯、ワンセグ(以上、機種による搭載の違いあり)などなど。ハード面では新高機能テンコ盛り状態であります。

対アップル戦略上からは、ハード面以上に重要なのはソフト面であろうと思われますが、その点はどうなのか。その目玉となるのはAppストアに対抗した「ドコモマーケット」の開設でしょう。これは12月6日にオープンだそうで、現段階でその中身については詳しくは存じ上げないのですが、アプリ、書籍、音楽等々のダウンロード販売事業を提携先との共同事業を含めてドコモがその威信にかけて展開する一大ビジネスになると思われます。ソフト面でのサービス提供がスタートすることで、ようやくこれまでの“スマートフォン・モドキ”状態からは脱却がはかれることになるのでしょうが(ちなみに、携帯大手のもう1社auなんぞはまだまだソフト部門までとうてい手が回らない状態で、今秋の新機種発表でも無料通信Skypeとの全面提携が精一杯の“スマートフォン・モドキ”状態です)、これで「ドコモマーケット」が充実すればIphoneに追いつき、追い越せるのか、と言うと私はかなり疑問に思っています。

問題点その1は、今回の機能アップが依然として一部のマニアを喜ばせるだけの「高機能携帯」の延長線という印象が強い点。ワンセグでテレビが見れる、お財布携帯で電子マネーが使えるぐらいは、これまでの延長でいいとしても、1000万画素レベルカメラや3D映像機能がスマートフォンを求めるユーザーのどれほどの人間が必要とするでしょうか。この点はどうも、高性能開発競争がユーザーニーズを越えてなお継続するという日本の技術開発風土のいけない風潮がまだまだ残っていると思わされるのです。マッキントッシュを出発点とするアップル社の基本的技術開発思想、ユーザーの満足が得られるレベルの技術をいかに使い勝手良く提供するか、との差がそこに見てとれると思います。

そしてさらに大きな問題点その2は、ソフト面での充実についてもIphoneがなぜ支持されているかその本質的なポイントを捉えていない点です。これはすなわち何であるかと言えば、ただ携帯でアプリや音楽がダウンロードで買える、それだけの理由でIphoneがウケている訳ではないということ。アップルのソフト販売ビジネスモデルの根幹にあるのは、Appストアの存在ではなく機能性に優れたその管理PCソフトitunesに他ならないのです。これは携帯音楽機器市場におけるSONYの惨敗(一部で最近SONYが健闘しているかのような報道がありますが、それは携帯音楽機器販売台数に携帯電話であるIphoneの販売台数が含まれないというカラクリがあります)に学べばすぐ分かることなのです。

もちろんドコモはそんなことはとうに研究済みでしょうし、十分分かってもいるのだとは思います。しかしながら急あつらえの寄り合い所帯で、必死にIphoneの独走を止めスマートフォン市場の拡大メリットを享受しようと試みるが故の苦しいお家事情があるのだろうというのは想像に難くないことろではあります。ただ落ち着いて考えてみるに、この辺のアップルとは180°異なるビジネスモデル構築の流れは、単に日米の企業文化の違いと言うよりは、元官業の官僚的組織風土と自由闊達な創造的民間組織の違いであるようにも思えてきます(先の行きすぎた技術開発をよしとする部分もまたしかりです)。結論として、現時点ではまだまだアップルには遠く及ばないドコモのスマートフォン戦略ですが、今後の巻き返しのカギは外国資本との提携等によるドコモの組織風土の抜本改革にこそあるのかもしれません。

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