日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

野菜高騰は消費者の自己責任?

2012-02-20 | ビジネス
スタッフに「野菜の高騰が続いているのに、なぜうちの野菜は安いんですか?」と言われて言葉に窮しました。うちの会社が経営するカレー専門店では、農家直送野菜を載せた「野菜カレー」が好評なので、仕入れた野菜の一部店頭で販売もしているのですが、その価格は白菜、椎茸、ほうれん草、山芋、トマト、ネギ、きゅうり…、すべてひと房またはひと袋80~100円。昨年6月の店舗開店から全く変わることがありません。冒頭のスタッフの言葉が気になったので店長に確認すると、「うちは仕入値が変わっていないので、この価格で問題ないですよ」とのことなのです。

冒頭のスタッフ曰く、「今一番高いのは葉モノ野菜で、ほうれん草なんてスーパーじゃ200円ぐらいしますよ」とか。えっ?ウチの倍?わが社の価格とスーパーの価格に生じた大きな差額、どうしてこんなことになってしまったのでしょうか。野菜の高騰についてネットで調べてみると、相次ぐ大寒波の到来で野菜の成長に打撃を受けて出荷が減っているのがその原因と言われています。うちは埼玉、群馬産の野菜を使っていて影響はゼロ。付き合いのある農家の話では、「確かに、野菜の成長に影響はあって収穫が減ったりはしているけど、それでイコール値上げなんてできません」と。

ん?じゃ一体誰が儲けてる?短絡的に憶測するとスーパーの一人儲けのような気もしてきます。というのも、うちの材料野菜には市場経由の野菜も一部使っているのですが、出入りの仲買業者の価格もここ数ヶ月間大きな変化はないのです。となると、結果的に価格高騰を演出しているのはスーパーなんじゃないのか、という推測が成り立つわけです。すわ、“便乗値上げ”か?と言いたくもなりますが、必ずしもそうとも言い切れない経済のメカニズムもそこには存在しているように思うので、その辺も考察しておきます。

①上記の証言のとおり農家はいつもと同じ価格で野菜を出荷、ただし数量の減少はある。市場経由あるいは農家からの直送でスーパーは野菜を仕入れるものの数の不足で売り切れが続く。
②このままでは売上が減少するので、消費者のニーズがあるのならと販売単価を上げて売上かさ上げをはかる。
③スーパー同士はライバル店の販売価格のチェックを怠らないから、それがマーケット水準を押し上げてしまう。
④それでも各店売れる状況が続くなら、スーパーの販売価格は高止まりする(ただし一部には仕入値を吊り上げてでも、モノを確保しようというスーパーもあって、その事が仲介価格を吊り上げる要因になっている例もあると思います)。

何がいいたいのかですが、「価格」と言うのは需給関係で決まるわけで、「品薄で売り切れるほどの需要があるから価格を上げてみる」→「それでも売り切れるならさらに価格を上げてみる」という悪循環に陥るわけなのです。すなわち、スーパーの悪意ある“便乗値上げ”と言うよりは(要するに数量ダウンで落ち込む売り上げを、受け入れられる範囲の価格調整で埋め合わせをしようということですから、悪意と言うのはちょっと違うかなと)、消費者自身の衰えぬ消費マインドが価格を吊り上げているのだということになるわけです。

ということは…。このところ「野菜が高くて嫌になっちゃうわよ」という主婦の声を店頭でもよく耳にしますが、「嫌になっても買っている」から価格が上がるわけで「嫌になったら買わない」ことが大切なのですね。皆が買わなければ、売れなくなるから「価格」は下がる訳です。オイルショックの時の狂乱物価は、「早く買わないとなくなってしまう」→「品薄」→「値上げ」のスパイラルに陥った、まさにこのメカニズムの最悪シナリオがもたらした現象だったのです。亡き我が父は昭和の物価高騰の折々に「高いものは買わなきゃいい。売れなきゃ安くするしかないんだから、買う奴が悪い!」とよく言っていましたが、まさしく正解だったわけです。

物価上昇は内外情勢の変化を受けてその時々さまざまな要因が原因となって起きるわけですが、店頭価格上昇一途の悪循環を導かないためには消費者の冷静な判断が不可欠なわけです。長引く現状の野菜高騰も実は消費者行動にもその原因の一端があるということは、いまさらですが我々一人ひとりがもっと意識してもいいのではないかと思うのです。加えてスーパーが安易な値上げに頼らない強い営業姿勢を構築するためにも、消費者が甘やかさないことも大切であると思う次第です。

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