日本一“熱い街”熊谷の社長日記

組織論の立場から企業の“あるべき”と“やってはいけない”を考える企業アナリスト~大関暁夫の言いっぱなしダイアリー~

柳井正解説(?)「プロフェッショナルマネージャー・ノート」

2011-02-17 | ブックレビュー
最近ブックレビューをサボっていたので、たまってしまってすっかり時期を逃してしまったものが多いのですが、どうしても取り上げておきたい1冊を紹介します。

★「プロフェッショナルマネージャー・ノート/プレジデント社書籍編集部編・柳井正解説(プレジデント社・1200円)」

どうしても取り上げておきたいと言いましたのはいい意味でではなくて、残念ながら悪い意味でです。まずはじめに、この本は読み物ではないということを十分ご認識いただく必要があると思います。プレジデント社の書籍編集部が作っているからでしょうか、雑誌の企画で一冊のベストセラービジネス書籍を取り上げて20ページ程度の特集にまとめる、まさしく週刊経済誌がよくやっているあの類を思い浮かべていただければよろしいと思います。読んだ後に全く充実感がないと言うか、身についた感じがしないと言うか、本屋の前を通り過ぎただけと言うか、リーダースダイジェストで売れ筋の本の粗筋を読んだだけというそんな中身の薄い要約本です。そもそも編集部が切り貼りの世界で本を一冊作るという事自体に、無理があるのでしょう。確かに原本は文字量が多くてかつ物語仕様なので、一から順序良く読み進める必要があって大変ということで作られたものなのでしょうが、やっぱりこのやり方ではダメということです。

解説の柳井氏は帯にも登場で、氏ご自身の原本の消化の仕方をさぞ多くを語ってくれるであろうと思いきや、ご登場は前書きを含めて正味10ページ程度と肩透かし。これもまたどうなのと言う感じですね。せめて解説であるのなら、本書の各項目について章立て単位でもいいので、もう少し具体的な部分解説があってしかるべきでしょう。「○○のくだりはユニクロの××戦略検討時に思い出し大いに役立させてもらった。具体的には…」のような話が聞けて初めて柳井氏が「解説」を務める意味があるのであり、本書にある柳井氏の位置付けは書籍帯における「推薦文言」の粋を脱していないレベルです。例えて言うなら、雑誌の特集記事中の囲み扱いでインタビューを「柳井氏が語る本書はこう読め!」と作り上げた程度のものです(恐らく本書の柳井氏登場部分もインタビュー原稿でしょう)。これを「解説」とするのは詐欺商売と言われても仕方ない感じがしますが、いかがなもんでしょう。「中身のない本の広告塔に柳井氏を据えて、プレジデントがうまい商売をした」と言ったところでしょうか。

誤解のないように念のため申し上げておきますが、原本の「プロフェッショナル・マネージャー」は柳井氏がおっしゃられる通り経営指南本として実に優れた内容であります。著者であるハロルド・シドニー・ジェニーンの経営者としての波乱にとんだその物語は、原本のストーリーに沿って読んでこそ状況の正確な把握の下、珠玉のマネジメント手法が十分に理解できるのであり、このような本人の人となりさえも無視した乱暴な抜粋本はいささか残念な書籍と言わざるを得ないでしょう。柳井氏の経営者としての愛読書に少しでも触れてみたいと思われる方は、まちがってもこの本ではなく原本の「プロフェッショナル・マネージャー」を読まれることをお勧めいたします。価格もこの抜粋本1200円に対して原本1400円ですから、わずか200円の違いで得るモノは“天と地”ほどの差があると思います。本当は0点と言いたいところですが、原本に敬意を表して2点とします。「もしドラ」に端を発しドラッカーで大儲けしたダイヤモンド社の形を変えた後追い戦略なのでしょうか、こんな子供騙しなマネジメントのエッセンス切り売り商売はやめてもらいたいですね。

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