20世紀はアンナ・パブロワに始まりシルヴィ・ギエムに終わるといわれるそうです。
彼女は舞台で何回か見ていますが、ガラ公演が多いです。
全幕では白鳥とジゼルを一度ずつみただけです。
ギエム主演の全幕バレエは、チケットをとるだけでも大変で。
ロイヤルの公演は初めからあきらめて、東京バレエ団の客演でみました。
それでもいい席をとるのは難しくて、ジゼルはとくに大変で1階がだめで、2階席。それも正面席はとれず、サイドの席でした。
ただ、2階のサイドとはいえ、一番前の席でしたから十分堪能できました。
一番楽しみにしていたのは、一幕のジゼルのバリエーションでした。
よくローザンヌで10代の少女によっ て踊られるこのバリエーションを、世紀のダンサーがどんなふうに踊るのか、興味がありました。
それはもう、本当に素晴らしい踊りでした。
10代の可愛いダンサーのジゼルとは明らかに違いました。
ジゼルの可愛らしさはあまりありませんでした。恋の喜びも。
でも、テクニックはやっぱりローザンヌの少女たちと比べ物になりません。
さらに大げさな言い方ですが
なんというか、音が美しく鳴り響く、そんな感じでした。
ギエムが踊っていないときと、踊っているときの演奏は違って聞こえるのです。
この場面でそれまではいいな、と思っていた程度だったギエム、本当に好きになりました。
「ギエムは他のトップダンサーと比べて、音楽性で頭一つぬけている」とい う評論家のコメントをみたことがあるのですが、ああこれがそうかと思いました。
とにかく素晴らしい舞台でしたが、一番記憶に残っているのはこのバリエーションでした。
音楽と舞台が輝くようでした。
生の舞台っていいなあ、と思いました。
もうひとつ印象的だったのは、ジゼルの1幕の最後、狂乱と死です。
ここは各ダンサーによってかなり違いダンサーの個性がとても出ます。
ギエムは抑制のきいた演技で有名ですが、ここでも裏切られた悲しみで取り乱すというよりも自分を裏切り、騙したアルブレヒトをはっきりと糾弾していたのが印象的でした。
ギエムらしいな、と思いました。
哀れさより理知的な感じが出ていました。
2幕も素晴らしかったのですが、素晴らしかったとしか思い出せません。
舞台が終わったとき、1階におりて通路で拍手を送りました。
なんとなく上から拍手をするのは失礼に思えました。
本当に素晴らしい舞台で、あのジゼルを2階のサイドとはいえ、一番前で見ることができてよかったなあと思います。
生の舞台をみた回数はそれほど多くはありませんし、全幕はとくに少ないのです。
ギエムのジゼルをみることができたのは本当に幸運だったと思います。