舞台の映像の録画をみていて、気に入ったり気になった場面を色々見比べることがあります。
タンホイザーでは最後の場面のローマ教皇の登場。
出てこない演出もあります。
最初にみたときは、教皇の姿はなく、歌で奇跡が起こったことが知らされるという演出でした。
その後にみた演出は教皇がその杖にはえた若葉に驚くというものでした。
面倒なのでそれまでの場面は省略してそこだけみることが結構あります。
バレエ白鳥の湖ではオディールが勝ち誇って去っていく場面が気になります。
これはダンサーによって印象がかわって面白いです。
マリンスキーのユリヤ・マハリナは騙された王子に彼から送られた花束をぱーっと投げつけてあでやかに笑って去っていきます。
ここが素晴らしくて、王子は騙されてもうれしいんじゃないかと思うくらいです。
ギエムを最初にみたのは白鳥ですがここが一番ギエムらしさを感じたシーンでした。
ひきつれたスペイン舞踏団とともに、王子に「お前は負けた」と宣言するかのように指さしてあざやかに去っていきます。
あまり高貴でなく、彼女の素に近いのかなと思いました。
私は最後に花束を王子にまき散らす演出が好きです。
ブルメイステル版ですと、舞踊団は悪魔の部下なので、オディールは舞踊団代表という感じです。オディールもわが舞踏団の勝利という感じで、勝ち誇ってから全員いっせいに去っていきます。
オペラでもバレエでも気に入ったシーンだけ何度もリピートして、見比べるのはちょっと邪道かなと思って内緒にしています。
劇場でみると、そんなことはできないので、録画映像ならではの愉しみです。
ドンキホーテはあまり全幕見る気がしません。
好きなのは第一幕の街の場面のキトリのバリエーションで、ここだけ比べてみます。
街の人たちの手拍子に合わせてスカートをさばきながら踊る様子がいかにも街のアイドルです。
アナニアシヴィリをみて、この踊りが好きになったのですが、やっぱりこのシーンは彼女の踊りが一番好きです。
グランフェッテは、彼女は速く回りすぎで、好きではないのですが、こういう明るい庶民的なキャラクターは似合っていると思います。
他のダンサーでは音楽より速く動いたりしていまひとつ華やかさが機能していない感じです。
この作品はあまりみていません。もっと素敵なキトリもいるかもしれません。
あと、前にもかきましたけど、ジゼルの2幕のアルブレヒトの踊りは大好きです。
どうして無理やり踊らされて殺されるのに、嬉しそうなんだろう。
など、突っ込みいれてみますが、やはり素晴らしいです。
最初のソロでは結構楽しそうですが、女王ミルタが本気になると、無理やりに踊らされているのがわかります。
舞台のはしからはしまで踊って、女王に許しを請うところは、さすがにちょっと気の毒になります。
ざまあみろ、とは思えません。
ものすごくロマンティックに踊るのも、深刻に踊るのもいろいろあります。最初にみたマリンスキーのダンサーはあまり悲壮でなく、優雅でした。
トスカは、実は最後の身を投げるシーンをあれこれ見比べています。悪趣味かもしれません。
最初にみたものがひらりと身を投げるものだったので、録画を何度もみてみごとだなーと思いました。
でも、意外にもっさり、どーんというのが多いので、気になってラストだけ見たりしました。最初にみたものが一番きれいだったのですが、舞台の効果でシルエットをうつして沈んでいくものも印象的でした。
トスカがスカートをさっとさばくところ、部下が「あの方の命の代償は高いぞ」それにこたえて「私の命で!スカルピオ、神の前で」といいはなって身を投げるところ、やっぱりかっこよくて見ごたえがあります。
スカルピオを刺し殺すところもみてしまいます。なんか、殺伐とした場面だらけですが。
まあ、これは自業自得の典型で、ここまでトスカを追い詰めたら、文句もいえないな。と思いました。
「歌に生き、愛に生き」はクリスティの小説で読んでから気になってなんども見ました。愛は神への愛で、恋と訳すのは間違いだそうです。でも、「歌に生き、恋に生き」のほうが、奔放なプリマドンナらしくていいです。
この場面は気の毒すぎて、あまりリアリティを求めません。
歌がすばらしいなあ、と思うくらいです。
オペラはチケットが高すぎるので、映像でしかみません。
バレエも最近は劇場にいっていません。
舞台はそのときの状況によります。生演奏が絶対によいわけではなく、ひどいときはテレビでみるほうがいいですし、席があまりよくないなら、ありがたみがないことも多いです。
ただ、そのときの会場の空気というのは劇場に行かないと味わえません。
そして、舞台のあと、余韻にひたって帰るのも。
舞台には独特のよさがあります。
でも映像には映像の愉しみがあるので、まあいいかな。