ヘルンの趣味日記

好きなもののことを書いていきます。

マニュエル・ルグリのアルブレヒト

2016年11月28日 | バレエ

アルブレヒトについて書いたら、ルグリのアルブレヒトをみたくなり、動画で探しました。

フェリとルグリのジゼルという、目がちょっと飛び出るようなものを2幕だけですが、みつけました。

フェリはもう、素晴らしいので今は触れませんが
ルグリはすごいなあと思いました。

アルブレヒトのバリエーションはふんわりとロマンティックに踊る人も多いです。
そういう踊りですし。
あるダンサーは素敵なんですが、ふわりと飛んで踊ります。

彼もまた妖精の仲間のようでした。

両者とも、人間ではないようなのです。

でも、そうすると、ジゼルとの対比として、演劇的には変なのです。
だから、アルブレヒトは、弱っていても人間らしさがなくてはいけない。
ルグリは動きが激しく、シャープに感じます。人間的です。

1幕で身分差が二人を分け、2幕では生きている人間とウィリーという存在の違いが二人をわけます。
どちらも結ばれることは無理という前提があり、悲劇性が説得力をもちます。

ルグリはあくまでも人間の貴族で、優雅で品があり、でも力強い。

ウィリーの女王に無理やり踊らされるところは陸にあがった魚がバタバタはねるような感じで、苦しさとか、生きようともがく様子がリアルでした。

もちろん技術もすごい。素人目にもうまいとわかります。
そして、演劇としての説得力があります。
ルグリはすごいと思いました。

そのシーンはかなり技術のいるところで、ルグリがすごいテクニックを披露すると、観客の拍手もすごく盛り上がります。
拍手がやまず、
次の演技ができないくらい。
とても愛されているようでした。

フェリは間違いなく妖精のようで、人間とは思えない軽さです。
ジゼルの2幕の決定版のような素晴らしさでした。
ただ、振り付けがちょっと変えられていて、そこはどうかなあと思いましたが。

これ、DVDで手に入らないかと探していますが、リージョンコードが違うものしかないみたいです。

残念です。

映像の愉しみ

2016年11月25日 | 日記

舞台の映像の録画をみていて、気に入ったり気になった場面を色々見比べることがあります。
タンホイザーでは最後の場面のローマ教皇の登場。
出てこない演出もあります。

最初にみたときは、教皇の姿はなく、歌で奇跡が起こったことが知らされるという演出でした。
その後にみた演出は教皇がその杖にはえた若葉に驚くというものでした。
面倒なのでそれまでの場面は省略してそこだけみることが結構あります。


バレエ白鳥の湖ではオディールが勝ち誇って去っていく場面が気になります。
これはダンサーによって印象がかわって面白いです。

マリンスキーのユリヤ・マハリナは騙された王子に彼から送られた花束をぱーっと投げつけてあでやかに笑って去っていきます。
ここが素晴らしくて、王子は騙されてもうれしいんじゃないかと思うくらいです。

ギエムを最初にみたのは白鳥ですがここが一番ギエムらしさを感じたシーンでした。
ひきつれたスペイン舞踏団とともに、王子に「お前は負けた」と宣言するかのように指さしてあざやかに去っていきます。
あまり高貴でなく、彼女の素に近いのかなと思いました。

私は最後に花束を王子にまき散らす演出が好きです。
ブルメイステル版ですと、舞踊団は悪魔の部下なので、オディールは舞踊団代表という感じです。オディールもわが舞踏団の勝利という感じで、勝ち誇ってから全員いっせいに去っていきます。

オペラでもバレエでも気に入ったシーンだけ何度もリピートして、見比べるのはちょっと邪道かなと思って内緒にしています。
劇場でみると、そんなことはできないので、録画映像ならではの愉しみです。

ドンキホーテはあまり全幕見る気がしません。
好きなのは第一幕の街の場面のキトリのバリエーションで、ここだけ比べてみます。
街の人たちの手拍子に合わせてスカートをさばきながら踊る様子がいかにも街のアイドルです。
アナニアシヴィリをみて、この踊りが好きになったのですが、やっぱりこのシーンは彼女の踊りが一番好きです。
グランフェッテは、彼女は速く回りすぎで、好きではないのですが、こういう明るい庶民的なキャラクターは似合っていると思います。
他のダンサーでは音楽より速く動いたりしていまひとつ華やかさが機能していない感じです。
この作品はあまりみていません。もっと素敵なキトリもいるかもしれません。

あと、前にもかきましたけど、ジゼルの2幕のアルブレヒトの踊りは大好きです。
どうして無理やり踊らされて殺されるのに、嬉しそうなんだろう。
など、突っ込みいれてみますが、やはり素晴らしいです。

最初のソロでは結構楽しそうですが、女王ミルタが本気になると、無理やりに踊らされているのがわかります。
舞台のはしからはしまで踊って、女王に許しを請うところは、さすがにちょっと気の毒になります。
ざまあみろ、とは思えません。

ものすごくロマンティックに踊るのも、深刻に踊るのもいろいろあります。最初にみたマリンスキーのダンサーはあまり悲壮でなく、優雅でした。


トスカは、実は最後の身を投げるシーンをあれこれ見比べています。悪趣味かもしれません。
最初にみたものがひらりと身を投げるものだったので、録画を何度もみてみごとだなーと思いました。
でも、意外にもっさり、どーんというのが多いので、気になってラストだけ見たりしました。最初にみたものが一番きれいだったのですが、舞台の効果でシルエットをうつして沈んでいくものも印象的でした。

トスカがスカートをさっとさばくところ、部下が「あの方の命の代償は高いぞ」それにこたえて「私の命で!スカルピオ、神の前で」といいはなって身を投げるところ、やっぱりかっこよくて見ごたえがあります。

スカルピオを刺し殺すところもみてしまいます。なんか、殺伐とした場面だらけですが。
まあ、これは自業自得の典型で、ここまでトスカを追い詰めたら、文句もいえないな。と思いました。
「歌に生き、愛に生き」はクリスティの小説で読んでから気になってなんども見ました。愛は神への愛で、恋と訳すのは間違いだそうです。でも、「歌に生き、恋に生き」のほうが、奔放なプリマドンナらしくていいです。
この場面は気の毒すぎて、あまりリアリティを求めません。
歌がすばらしいなあ、と思うくらいです。


オペラはチケットが高すぎるので、映像でしかみません。
バレエも最近は劇場にいっていません。

舞台はそのときの状況によります。生演奏が絶対によいわけではなく、ひどいときはテレビでみるほうがいいですし、席があまりよくないなら、ありがたみがないことも多いです。
ただ、そのときの会場の空気というのは劇場に行かないと味わえません。
そして、舞台のあと、余韻にひたって帰るのも。

舞台には独特のよさがあります。
でも映像には映像の愉しみがあるので、まあいいかな。

アルブレヒト

2016年11月22日 | バレエ

バレエの男性のバリエーションで好きなのは、ジゼルの2幕のアルブレヒトのバリエーションです。


ウィリーの女王の命令で無理やり踊らされるダンスです。
ここは音楽もいいし、ダンスも雰囲気があります。
軽やかな音楽に合わせて、何かに憧れるように手を伸ばして踊る、
ほんとうにロマンティックなシーンです。

無理やり意に反して踊らされるんですが、そのわりに美しく軽やかです。
どちらかというと晴れやかな音楽で、変なのですが、
アルブレヒトの魅力が一番出ているところだと思います。

彼が貴族でエレガントな男性であること、それがわかります。

貴族だっていうことは、ジゼルでは結構重要だと思います。
実直だけど、もっさりした森番の男より、洗練されたアルブレヒトに惹きつけられるのがジゼルです。
かなり単純だけど、恋をしてからは、本気でした。
きっかけが見かけや雰囲気でも、
彼女は真剣だったことがこの話に説得力をもたせています。

その真剣さがアルブレヒトを後悔させて、彼にとってジゼルは一生忘れることのできない女性になったでしょう。


ジゼルはアレッサンドラ・フェリが好きですが、アルブレヒトはとくにこのダンサーというのがいません。
フェリと組んだダンサーかな。
とにかくフェリは魅力的で、これでは別れることはできないだろうと思ってしまいます。

アルブレヒトは酷い男だけれど、ジゼルが死んだ後も守りたくなる男でもある。
だからちょっと難しいです。

1幕のジゼルは簡単にだまされるような世間を知らない少女なのですが、2幕でウィリーになって世俗の欲望をすべて失っても彼を守ります。
そうなると、ただの浮わついた貴族ではないのかな?
いいところもあるのかもしれません。

アルブレヒトは、いまひとつ、イメージしにくい人物に思えます。

オペラ座のルグリを全幕でみていたら違ったかもしれませんが、まだこの人、というアルブレヒトはみていません。

料理マンガ

2016年11月18日 | 日記

料理人が主人公のマンガが大好きです。

料理は得意ではないですが、ちょっとアイディアをいただいて参考にすることもあります。ごくたまにですが。

好きな作品です。

「信長のシェフ」


戦国時代にタイムスリップしたフレンチシェフの話。
ドラマでみて、面白かったので原作も読みました。
主人公がドラマと原作とイメージ全然違います。
他の登場人物も違う。とくに明智光秀。
原作のイメージをあまり気にしないのが成功していると思いました。
主人公はすらっとしたアイドルを起用していますが、原作はがっしりした実直な感じ。
ちょっと似ていると、かえってイメージが少しずれると気になりますが、まったく似ていないのでかえっていいです。
一番本質的な「優しすぎるくらい優しい人」というのを外していないので成功しているみたいです。
「いざ参らん、戦国のキュイジーヌ」という決め台詞は原作になくて、オリジナルですが、面白くて
自分で料理しようとすると、頭に浮かんでしまいました。
でも、料理勝負はフェアじゃないなあという気がします。
だって、今の料理の知識と技術をもっていたら勝てて当たり前です。



「大使閣下の料理人」

これもドラマでみました。
ベトナム大使館の料理人の話です。
面白くて何度もみてしまいました。
新幹線を売り込むのって国益なのか?と思うのですが。原作にないヒロインをつくったのが成功しているかも。


「中華一番」

昔、アニメで放映されていて、ちょっと見たことがあります。
中国の清の時代だと思います。
中華料理の天才少年の話。
とくにストーリーが面白いわけではないですが、中華食材の薬効のことなんか取り上げていてへーっと思いました。

神戸の中華の素晴らしさに気が付いてから、コミックを読んでみると、色々面白く思えます。

四川とか広州とか地域による違いも今よむと違った面白さがあります。
主人公は四川出身の少年で、広州で修行して、さらに中国のあちこちに旅をしますので。


「沈夫人の料理人」

大好きなマンガです。これも中華料理。

とても気の弱い主人公と美食家で気の強い雇い主の夫人の話。
作品中、中華料理作る様子が面白くて、自分でできるわけはないのですが、ちょこっと取り入れたり、これはできそう、みたいに思ったり。
これも薬効について詳しくて
体を冷やす材料、温める材料。とか、色々興味深いです。

主人公の兄が麺打ちの達人で、麺を打つ勝負のとき、ラーメンが食べたくなりました。

飲んだくれでだらしなくてどうしようもない料理人ですが、麺を打つのは達人で、
彼と仲のよくない沈夫人が、見事だ、達人の域だと賞賛する場面が好きです。

この夫人は人を使うのが上手で、自信をなくした主人公とか、仲の悪い主人公の兄をうまく動かします。

このマンガで羊は熱性、豚は温性と知りました。
羊は中国の東北地方で食べられるのはそういうことかな。
冬瓜は体を冷やすとか、白きくらげは美容によいとか。

いろいろ興味深いことがわかります。




天才料理人がつくる料理はまあ、ありえないものもありますが、結構おもしろいのもあります。
なにより、美味しそうで、読んでいて楽しめます。

なんとなく作っているのを読んで、自分にもできそうな気がしてきます。錯覚ですが。

料理が人の問題を解決していくというのが共通で、王様の仕立て屋もそうですが、天才職人の手腕が人を幸せにするパターンです。


一種のファンタジーの面白さかな、と思います。

料理自体はありえないものも、実在するものもどっちもありますが、作る人はちょっといないような天才です。


トリスタンとイゾルデ

2016年11月16日 | 日記

調べたら、この作品は楽劇だったのですね。
勘違いしてワーグナー楽劇は見たことないと書いてしまいました。

映像ですが、いくつか見たことがあります。

イゾルデの最後の歌は有名なソプラノ歌手でもとても難しいようです。
必ず高音が苦しそうになります。
でも、一人低音と同じ力強さで楽々と歌う歌手がいて、すごいなあと思いました。
ブリギッテ・ニルソンという人ですが大変有名なソプラノだったようです。
詳しくないのであまり知らないのですがワーグナーというと、名前があがる人だったそうです。

でも「愛の死」は美しいですが、違和感があります。
イゾルデが悲嘆のあまり死んでしまうのに、死ぬ前に演説みたいな歌を歌うのがどうも奇妙です。
なんとなく演説みたいに感じます。
ワーグナーは、いくらオペラでもこれはちょっと・・・
というくらい現実離れしたところがあるように思えます。


このオペラで好きな演出があります。

第3幕で
マルク王やたくさんの人がトリスタンの死を嘆き悲しむ。
そしてイゾルデはトリスタンの死を悲しんで息絶える。

これらがすべて瀕死のトリスタンがみた夢だったという演出です。
ジャンピエール・ポネルという人の演出で私はよく知りませんが、有名な演出家だそうです。

夢オチでも、説得力のある演出だと感じました。
トリスタンの死の間際にバタバタいろんな人がやってきて、死者のそばでああだこうだと騒ぐのはどうも変に思えます。
でも、トリスタンが死の間際にそうしたことを夢に見るならリアルで説得力があります。
すべて彼がそうあってほしかった願望だったのだ、と。

リアルだということ以外もこの演出は好きです。
最後に有名な歌を歌い終えたイゾルデがふっと消えてしまって、トリスタンを親友一人が看取っていたとわかります。

寂しいけれどとっても心にしみる終幕です。
この解釈がとても好きです。
見終わって、素敵だなあと感動しました。

トリスタンはイゾルデが自分のために駆けつけてくる夢を見て、自分が死んだら、イゾルデは悲嘆のあまり死んでしまう、自分をそのくらい愛してくれているんだ、
そう夢にみて死んでいく。
なんか、人間らしくて好きです。

そして夢が消えるとトリスタンのそばにいたのは親友一人だったというのも。
さみしいけれど、忠実な親友が最後までいたということで救われます。

そんなに忠実な親友がそばにいるのに、恋人の夢をみているトリスタンは勝手です。
だけど人間的で可愛いとも思います。

ワーグナーのオペラのストーリーは面白いけど、登場人物に現実味が感じられません。異星人の物語みたいに思えます。

でもこの演出は人間の心理が描けているようでとても好きです。
イゾルデの姿がふっと消えたときの情景は今でも目に浮かびます。


このトリスタンは幸せな夢をみて死んだので、
ある意味ではハッピーエンドなのかもしれません。