杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

埋もれていたEM実験報告-岡山県環境保健センター年報より-

2012年11月08日 | EM
環境浄化にEMは効果があるのか?
EMを河川に投入するという環境浄化活動では、常々このような疑問が言われていますが、それを公的機関が検証して発表する事は極めて稀な事で、資料を探してみてもこれぐらいしか見つからないのが現状でした。
この度EM問題を追っている呼吸発電さんが、岡山県環境保健センターで行われた検証実験の報告を見つけてくれました。ありがとうございます。
そしてその内容が極めて重要であると思われましたので、改めてここで紹介したいと思います。

見つかった資料はこちらの2点、岡山県環境保健センター年報の第19号(平成6年)と第20号(平成7年)で、EMの検証実験結果はそれぞれp.33とp.54に掲載されています。

第19号では「フラスコ実験による汚濁湖沼の浄化に及ぼすEM菌の効果の検討」と銘打ち、児島湖の水を季節毎に94年9月(夏)、11月(秋)、95年1月(冬)、3月(春)の4回、場所も4箇所から採取し、使用したEMは「救世EM1」(自然農法研究所:現EM研究所)、それを1/100、1/1000希釈したものと無添加のとを比較しています。
   

実験結果は「まとめ」の部分にあるように、
いずれの系においても対照系(非添加系)と比べて著しい水質改善は認められなかった
と否定的な結論となったのですが、このまとめでは更に、
今後、本研究を進める上では大型水槽による物質循環を考慮した室内実験、あるいは用水路や池沼における野外実験で検討を加え、総合的な解析を行う必要があると考えられた。
としてこの実験結果だけでは不十分として、この言葉通り翌年には、今度は更に大掛かりな実験が行われています。
その模様が第20号のp.54に「汚濁湖沼浄化に及ぼすEM菌の効果に関する研究」として掲載されています。
内容は前年度のフラスコ規模の実験に加え、
 ・障害性プランクトン増殖への影響
 ・水槽規模
 ・用水路規模
 ・小規模閉鎖性湖沼
 ・中規模閉鎖性湖沼
という、実験規模の大きさを変えた環境で実験が行われました。
その結果は、
 ・障害性プランクトン増殖抑制効果→認められず
 ・水槽規模の水質改善効果→認められず
 ・用水路における水質改善効果→一時的水質向上ただしT-P(リン化合物)には効果なし
 ・小規模池の水質改善効果→窒素、リンの除去には効果なし
 ・中規模池の水質改善効果→浚渫後にEMボカシ袋投入→悪臭低減→浚渫による効果と推察
となり、結局、いずれの場合もEMによる著しい効果はなかったとする報告となっています。

ただこの報告書で注目すべきは「4.考察」の項目で、そこには極めて示唆に富んだ重要な提言が述べられています(以下改行・強調処理は引用者によります)。
例えば以下の部分でも、単にEMに効果がなかったと示すだけではなく、
本調査研究においては、水圏生態系の物質循環において重要な役割を担う底泥を含めた系全体としては窒素およびリンの効率的な除去は期待できない結果となった。
したがって、EM菌を用いて水質浄化を図る場合、
(1)SSの除去(透明度の向上)、(2)有機物の除去、(3)悪臭の除去
を主目的とし、窒素およびリンの除去は、例えば水生植物による吸着や底泥の浚渫をはじめとする何らかの別な手法と組み合わせることにより系外へ持ち出す必要があると考えられた。
また、浚渫した底泥の処理や回収した水生植物の堆肥化にEMボカシの技術を応用する事も考えられる。
と、EMの別の利用法を模索していて、ただ全面的にEMを否定するだけではない所が注目されます。
しかしメーカー側が言うEMの水質改善効果については、
微生物による汚濁水域の浄化、すなわち自浄作用は、細菌や微小動物などの微生物の代謝を利用して水中の有機物を分解するものである。~(中略)~
EM菌は好気性細菌群と嫌気性細菌群が共存していることに特徴があるとされており、両者の代謝がうまく噛み合って働いたときに効果的な水質浄化が成立する。
したがって、汚濁湖沼の浄化を図る上では、EM菌や微生物製剤を闇雲に投入するのではなく、微生物間相互作用をはじめとする各種要因を調査・検討し、特に物質循環を考慮した効果的な投入法を検討する必要があるものと考えられる。
として慎重な運用を求め、尚且つ普段見落とされがちなある視点が述べられます。
ここが一番重要な部分です。
環境改善を前提とした環境保全の立場からは、「微生物相改善製剤」の「微生物のバランスからの評価」が最重要事項となる。
EM菌を汚濁水域に投入するということは、すなわち、外来生物による既存の生態系への侵略という、生態学の分野では古くから論じられてきた問題にほかならない。
有用微生物群とはいえ、気候も風土も異なり、土壌には当然異なる微生物相が形成されている沖縄県の土壌から分離したEM菌をそのまま大量培養(複製)して岡山県の土壌に導入する場合に、微生物生態学的には、EM菌の導入は生態系を構成しているエネルギーフロー、物質循環、捕食被食、突然変異、競争、逃避、寄生をはじめとする微生物間相互作用に対して少なからず影響を及ぼすことが懸念される。
したがって、EM菌をはじめとする微生物製剤を有効活用するためには、生態系および環境に及ぼす影響に関してよく理解した上で適正な使用方法を確立する事が必要であると考えられる。
これらの実験は17年もの昔に行われたものではありますが、その提言内容は今現在でも少しも変わる事なくそのまま通用するものです。
いやむしろ、子供達を巻き込む形で全国的に環境活動が行われる様になった今こそ、この提言はもっと広く知られるべきだと私は思います。
「EMを入れれば浄化される」
そんな単純な思いだけでEMを投下している人達は、今一度この提言を心して聞いてもらいたいと願うものです。


関連エントリー)
「生物多様性の見地からEM浄化活動を考えてみる」
「EMだんごを投下する前に考えて欲しい事 」
ジャンル:
環境
コメント (4)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« 「自己責任」と言えば許され... | トップ | 「低線量被ばくでも白血病」... »

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
拝見させて頂きました (のあ)
2015-04-18 15:43:25
 では化学肥料を使えば微生物などの生態系を壊さないってことでしょうか?
今では普通に散布されている雑草を根から枯らすものは?
水稲(田)には普通に大量の雑草駆除剤が撒かれ用水から河川へ流れています。
 EM信者ではありませんが一つの事だけで否定的なものを書くのはいかがなものかと思います。
汚水被害(匂い・激臭)にあっている方たちは何もするなと言いたいのでしょうか?
用水路に汚水がたまり悪臭を放してる時点であなたの言う既存の生態系は壊されてるのではないでしょうか。
そこまで言われるのであればあなたの家庭から出ている排水(台所洗剤・洗濯洗剤・フロやトイレの洗剤)は流してないのですよね?
それが自然の石鹸を使用していたとしてもその地域で作られた石鹸ではないでしょうから微生物の生態系を壊すのではないでしょうか?
プラスチックゴミ捨ててませんよね?埋め立ててるのですから当然、環境破壊し、微生物にも当然影響を与えているでしょう。
そこまで言われる方がまさか電気は使用してませんよね?
このページは自家発電で開設してますよね?
高圧線周辺の環境は無視ですか?
自己満足の知ったげをしたいのですか?
目的がわかりません。
こんなこと書いている暇があったらブラックバスやアメリカザリガニ等の外来種の駆除の旅に行ってください。
純和食のみを口にされてますか?ヨーグルトなんか食べているのであればあなたの体内の微生物の生態系は完全に壊れています。
そんな単純な思いだけでこのブログを書いている人は、今一度この提言を心して聞いてもらいたいと願うものです。
なるほど (バルス)
2015-04-18 15:46:13
飛鳥時代の生活をしてください。
矛先が違います (OSATO)
2015-04-18 22:29:35
いらっしゃいませのあさん、初めまして。

初めにお断りさせていただきますが、このエントリーはあくまで岡山県環境保健センターが行った実験及びその考察の紹介です。
ご不満の点があればそちらの方に言っていただければと思います。

ただ気になった点があったので2,3ご返答させてもらいます。
健康や環境に関する問題で注意しなければならないのは、「人体」・「自然」といういわゆる〔複雑系〕を扱うには、くれぐれも○か×か0か100かの様な「二元論」に陥いる事のない様にするという事です。

>一つの事だけで否定的なものを書くのはいかがなものかと思います。

というコメントを見ますと、どうやらのあさんは他のエントリーをご覧になっていない様に見受けられます。
こちらのエントリー(並びにその続きも)ご覧になっていただければと思います。↓
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/da795e1d4296bbad3aa6c7e89ec819b0

>そこまで言われるのであればあなたの家庭から出ている排水(台所洗剤・洗濯洗剤・フロやトイレの洗剤)は流してないのですよね?

我が家の排水は下水道に繋がっており、その先は浄水場へと繋がり、排水はそこで浄化されて自然水域に放出されています。
これについてもこちらで述べています(ちょっと長いですが)。↓
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/5cab8d9fbec58cd7d685a74a2bf94a13

>自己満足の知ったげをしたいのですか? 
>目的がわかりません。

この点につきましても以前のエントリーで述べております。↓
http://blog.goo.ne.jp/osato512/e/cc5370084f212711985474d25fa38005

失礼ですが、のあさんの仰る事は「極論」ばかりでして、のあさん自身が「二元論」に陥っている様に見受けられます。これは極めて危うい事です。
どうか冷静になって、紹介したエントリーをじっくりお読みになっていただければと思います。
バルスさんへ (OSATO)
2015-04-18 22:36:56
いらっしゃいませバルスさん、初めまして。

申し訳ありません。仰ってる事が意味不明です。
もし私に対してなのならば、バルスさんと同様私も現在の文明にどっぷり浸っており、飛鳥時代の生活などする気は毛頭ありません(笑)。

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。