杜の里から

日々のつれづれあれやこれ

「低線量被ばくでも白血病」の記事で分からない事

2012年11月10日 | 原発
11月8日、この日共同通信から「低線量被曝でも白血病」と題された非常に気になるニュースが配信されました。
しかし、この配信ニュースを伝えた各社の報道を見てみますと、その報道の仕方によって随分違った印象を受けてしまいます。
またそもそも、大元となった共同通信の記事にしても、よくよく読んでみると不明な点が色々見えてきました。

ネット内で見つかったのは「中國新聞」、「産経新聞」、「日本経済新聞」、「47ニュース」で、このニュース記事を取り上げている人達のブログ等を見てみると、情報ソースは大体この4誌に基づいている様です。
が、それぞれの記事を読み比べてみますとまた違った印象を受けてしまいます。
まず、一番簡単に紹介しているのが「中國新聞」で、以下の様になります(強調は引用者)。
〔中國新聞〕
低線量被ばくでも白血病 チェルノブイリの作業員 '12/11/8
 【ワシントン共同=吉村敬介】チェルノブイリ原発事故の収束作業などに関わって低線量の放射線を浴びた作業員約11万人を20年間にわたって追跡調査した結果、血液がんの一種である白血病の発症リスクが高まることを確かめたと、米国立がん研究所や米カリフォルニア大サンフランシスコ校の研究チームが米専門誌に8日発表した。
 実際の発症者の多くは進行が緩やかな慢性リンパ性白血病だったが、中には急性白血病の人もいた。調査対象者の被ばく線量は積算で100ミリシーベルト未満の人がほとんど。高い放射線量で急性白血病のリスクが高まることは知られていたが、低線量による影響が無視できないことを示した形だ。
 チームは1986年に起きたチェルノブイリ事故で作業した約11万人の健康状態を2006年まで追跡調査。被ばく線量は積算で200ミリシーベルト未満の人が9割で、大半は100ミリシーベルトに達していなかった。

http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201211080140.html
極めて簡単な記事で、その内容と言えば『低線量の放射線を浴びた作業員約11万人を20年間にわたって追跡調査し』、そしてその結果として、『100ミリシーベルト未満でも白血病の発症者がいた。』という事を言っているだけで、一体何人が白血病となったのかその具体的な数など何も述べられておらず、正直、

「何じゃこりゃ」

といった感じです。
続いて同じソースでちょっとだけ詳しく書いていたのが「産経新聞」でした。中國新聞と違う部分を〔 〕で括り、緑色で色分けしてみます。
〔産経新聞〕
低線量被曝でも白血病 米追跡調査、チェルノブイリの作業員11万人対象
2012.11.8 14:22
 チェルノブイリ原発事故の収束作業などに関わって低線量の放射線を浴びた作業員約11万人を20年間にわたって追跡調査した結果、血液がんの一種 である白血病の発症リスクが高まることを確かめたと、米国立がん研究所や米カリフォルニア大サンフランシスコ校の研究チームが米専門誌に8日発表した。
  実際の発症者の多くは進行が緩やかな慢性リンパ性白血病だったが、中には急性白血病の人もいた。調査対象者の被曝(ひばく)線量は積算で100ミリシーベ ルト未満の人がほとんど。高い放射線量で急性白血病のリスクが高まることは知られていたが、低線量による影響が無視できないことを示した形だ。
 チームは1986年に起きたチェルノブイリ事故で作業した約11万人の健康状態を2006年まで追跡調査。137人が白血病になり、うち79人が慢性リンパ性白血病だった。チームは白血病の発症は16%が被曝による影響と考えられると結論付けた。〕
http://sankei.jp.msn.com/life/news/121108/trd12110814250012-n1.htm(共同)
今度は具体的に137人という数字が書かれ、その中の79人が「慢性リンパ性白血病」であった事が示されます。
よってこの記事からは、
「100ミリシーベルト未満の被ばくをした11万人から137人の白血病患者(うち79人は慢性リンパ性白血病)、この患者の16%が被ばくの影響」
という具合に受け取られる内容となっています。
しかし、「チームは白血病の発症は16%が被曝による影響と考えられると結論付けた。」という部分は人によっては、
 「低線量被ばくした人の16%が白血病になる」
などと誤解されやすい表現となっているので注意が必要と言えます。

そしてもっと詳しく述べていたのが「日本経済新聞」でした。「産経新聞」との違いをまた色分けしてみましょう。
〔日本経済新聞〕
チェルノブイリ除染で被曝、低線量でも白血病リスク
 【ワシントン=共同】チェルノブイリ原発事故の除染などに関わって低線量の放射線を浴びた作業員約11万人を20年間にわたって追跡調査 した結果、血液がんの一種である白血病の発症リスクが高まることを確かめたと、米国立がん研究所や米カリフォルニア大サンフランシスコ校の研究チームが米 専門誌に8日発表した。
 実際の発症者の多くは進行が緩やかな慢性リンパ性白血病だったが、中には急性白血病の人もいた。調査対象者の被曝(ひばく)線量は積算で 100ミリシーベルト未満の人がほとんど。高い放射線量で急性白血病のリスクが高まることは知られていたが、低線量による影響が無視できないことを示した形だ。
 チームは1986年に起きたチェルノブイリ事故で作業した約11万人の健康状態を2006年まで追跡調査。〔被曝線量は積算で200ミリシーベルト未満の人が9割で、大半は100ミリシーベルトに達していなかった。〕
 137人が白血病になり、うち79人が慢性リンパ性白血病だった。〔統計的手法で遺伝などほかの発症要因を除外した結果、〕チームは白血病の発症は16%が被曝による影響と考えられると結論付けた。
〔 これまでに広島や長崎に投下された原爆の被爆者の追跡研究でも、低線量被曝による健康影響が報告されており、線量が低ければ健康影響は無視できるとの主張を否定する結果。チームはコンピューター断層撮影装置(CT)など、医療機器による被曝影響を評価するのにも今回の研究が役立つとしている。〕

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0802A_Y2A101C1CR0000/
ここでは中國新聞には載っていて産経ではカットされていた、
「被曝線量は積算で200ミリシーベルト未満の人が9割で、大半は100ミリシーベルトに達していなかった。」
という部分と、新たに
「統計的手法で遺伝などほかの発症要因を除外した結果、」
という部分が加わっている訳ですが、この記事から得られる情報はまずは、
「11万人中200ミリシーベルト未満が9割」
というものであり、そうすると逆に残り1割の人は200ミリシーベルト以上ともとれる訳ですが、11万人の1割と言えば11,000人であり、つまり少なくとも1万人以上は200ミリシーベルト以上の放射線を浴びていたという事になりますが、その様な理解となっても果たして良いのでしょうか。
また、
「統計的手法で遺伝などほかの発症要因を除外した結果、」
と付け加えられていますが、この「統計的手法」の意味もよく分かりませんし、具体的に何人?と思ってもそれは分からないという内容となっています。

そして一番詳しく述べられていたのが「47ニュース」で、共同通信の配信記事をほぼ全文紹介していました。
日本経済新聞でカットされていた部分をまた色分けします。
〔47ニュース〕
低線量被ばくでも白血病/チェルノブイリの作業員/米追跡調査、11万人対象
 【ワシントン共同】チェルノブイリ原発事故の収束作業に関わった作業員約11万人を20年間にわたって追跡調査した結果、低線量の被ばくでも血液がんの一種である白血病の発症リスクが高まるとの研究結果を、米国立がん研究所や米カリフォルニア大サンフランシスコ校のチームが米専門誌に8日発表した。
 発症者の半数以上は進行が緩やかな慢性リンパ性白血病だったが、中には急性白血病の人もいた。
 調査は、事故発生の1986年から90年までに、主に積算で200ミリシーベルト未満の比較的低線量被ばくだった人〔を対象にした。〕うち約8割は100ミリシーベルト未満だった。
 137人が白血病になり、うち79人が慢性リンパ性白血病だった。統計学的理由で〔事前に20人を除き、117人についてほかの発症要因を除外する分析を行った。〕その結果、約16%〔に当たる19人が被ばくの影響で白血病を発症したと結論付けた。
〔 白血病になった137人は、事故後原発から30キロ以内で緊急対応に当たった人や軍人、原発の専門家だった。
 放射線による発がんの危険性は、100ミリシーベルトを下回る被ばくでは、他の影響に隠れてしまい証明が難しいが、〕
これまでも微量で持続的な被ばくによるリスクの指摘はあった。今回の結果はこの主張を補強する。
 チームはコンピューター断層撮影(CT)装置など、医療機器による被ばく影響を評価するのにも今回の研究が役立つとしている。
〔 昨年3月に起きた東京電力福島第1原発事故では、収束作業の現場の線量が高く、作業員の緊急時の被ばく線量限度を一時、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げた。〕
 (2012年11月8日、共同通信)

http://www.47news.jp/47topics/e/236010.php
この記事内容が共同通信が配信した記事の原文であるかはここでは確認出来ませんが、それでも他のものより数字も具体的に示され、より詳しい内容を知る事が出来ます。
ここでは、
「主に積算で200ミリシーベルト未満の比較的低線量被ばくだった人を対象にした。うち約8割は100ミリシーベルト未満だった。」
とあり、この調査で行った11万人は元々皆200ミリシーベルト未満の人を選んで行った事がここで分かります。
そしてこの中で8割は100ミリシーベルト未満、つまり具体的に言うと調査した11万人中、
 8割→88,000人は100ミリシーベルト未満
 2割→22,000人は100ミリシーベルト以上200ミリシーベルト未満
ということになる訳です。
しかし記事では、この11万人の中から白血病になった人が137人で、うち慢性リンパ性白血病が79人、そして被ばく影響によるものが19人と結論付けている訳ですが、そもそも記事中ではこの19人はただ「白血病」になったとしか書かれていません。
記事の前部分では、
「発症者の半数以上は進行が緩やかな慢性リンパ性白血病だったが、中には急性白血病の人もいた。」
とも書かれている訳ですが、この被ばくによるとされる19人の白血病が、慢性なのか急性なのかはっきりしない内容となっています。
そしてそもそも、この19人が一体何ミリシーベルト被ばくしていたのかという、我々が最も知りたい情報がまるで記されていないのです。
ここまで絞る事が出来たならば、この人達が浴びた放射線量など簡単に分かりそうなものですが、その様な一番大事な情報が明らかにされていないというのはどういうことなのでしょうか。
記事中では
「これまでも微量で持続的な被ばくによるリスクの指摘はあった。今回の結果はこの主張を補強する。」
とありますが、こんな中途半端な数字の出し方で、果たしてどれほど補強出来るのか、はなはだ疑問に思います。
そして尚且つ、
「昨年3月に起きた東京電力福島第1原発事故では、収束作業の現場の線量が高く、作業員の緊急時の被ばく線量限度を一時、100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げた。」
の部分などは何のために付け足したのか、意味不明です。
おそらく福島の原発作業員も白血病のリスクが高まっているとでも言いたいのかと思われますが、それならば尚更の事、もっと具体的な数字を記事中で示すべきではないでしょうか。
などとそんな事を思っていたら、次の日11月9日の河北新報4面(国際面)で、同じ記事が載っていました。↓
  (クリックで拡大)
そしてこの記事には、大分県立看護科学大の甲斐倫明教授(放射線リスク評価)の話も併せて載っています。
比較的低線量の被ばくが白血病などのリスクを高める可能性があることは、これまでも指摘されてきたが、米国立がん研究所のチームの研究結果はそれを補強する新たなデータと言える。
直接的に証明したとまでは言えないが、データを解釈した結果として、低線量の被ばくが発症に関係したと考えるのは妥当だと思う。
広島や長崎の原爆による放射線影響の研究とも整合する結果だ。
談話で述べられている広島での白血病発症リスクについてはこちらにその記述がありますが、それには確かに
「急性および慢性の骨髄性白血病と急性リンパ球性白血病のみにリスクの増加が認められている。 」
とありますが、しかし慢性リンパ性白血病については、
慢性リンパ球性白血病(西欧諸国とは極めて対照的に日本では非常にまれ)にはリスクの有意な増加は認められていない。
とあります。
甲斐教授の話では「データを解釈した結果」とありますが、そもそもこの新聞報道におけるデータから言える事は、記事中にも掲載されているこの図の事しか分からないのではないかと思います。
   
つまり今回の記事ではっきり言える事は、
低線量を浴びた11万人中、137人が白血病を発症し、その中で放射線被ばくの影響と考えられるのは19人
という事だけで、この人たちが浴びた具体的な放射線量は分からない、慢性なのか急性なのかも分からない、そしてそもそも、この11万人中19人という数が、これが通常と比べて多いのか少ないのかすらも示されていないという訳で、結局何だかよく分からない記事であるとしか言えない訳です。

ちなみにこちらは日本における白血病による死亡者数の地区別統計(2009年版)ですが、人口10万人あたり6.06人が平均で、地区別では鹿児島県が一番多く人口10万人あたり15.46人、全国平均の2.5倍以上というデータも示されています(これは地域的要因で、ここではウィルス性の成人T細胞白血病(ATL)が多いためとされています) 。
こうしてみると尚更、今回の記事は一体何だったのだろうと首をかしげるばかりなのですが、同じ疑問を抱いた方達がこちらで話し合っていますので、興味のある方はぜひこちらを見てみて下さい(この中では、発症者の線量は76.4ミリシーベルトであると言われています)。
ここでの意見によると今回の記事は、どうも正式発表前に載せられた疑いすらあるらしいという事で、そうなりますと果たして、この記事にどこまで信憑性があるのかという疑問すら浮かんでくる次第です。

そして今回一番気になった事は、共同通信の記事では、
放射線による発がんの危険性は、100ミリシーベルトを下回る被ばくでは、他の影響に隠れてしまい証明が難しい
と書かれていた部分が、日本経済新聞では、
線量が低ければ健康影響は無視できるとの主張
と書き換えられている事です。
この様な改変はおそらく担当記者自らの手によるものだと思われますが、こういう書き換えにより、低線量被曝の影響に対して読者を偏った視点に誘導しようとしているかの様に見えてしまいます。
この様な微妙な問題も内包した研究内容に触れる場合マスコミは、記者個人の思いよりも、まずは何よりも正確なデータの提示を優先すべきです。
そもそも一番肝心な被験者数のデータすら、共同通信では被ばく線量200ミリシーベルト未満は「8割」と書いているのに、中國新聞と日本経済新聞は「9割」としています。この数字の差は一体どこから発生したのでしょうか。
8割と9割ではその人数差は11,000人にもなり、通常ならば当然統計データの結果に影響を及ぼす数字でもあります。
それほどまでに低線量被ばくした人を多くして白血病リスクを高く見せたいのか、と思わず勘ぐってしまいたい所ですが、このような数字の取り扱いだけはくれぐれも気をつけてもらいたいと思います。
今回の記事についても、これから正式に詳細が明らかになったならば、より詳しい内容をより分かりやすく伝えてくれる様、マスコミ各社にはぜひお願いするものです。


8 コメント

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疫学調査の評価 (bloom)
2012-11-11 07:58:29
あちらではお世話になっています。
こちらではコメントしたことがあったかな?

この調査は原著論文を見ないと判断がつかないですね。
児玉先生のチェルノブイリ膀胱炎も、論文のデータを見れば「はずれ値(たぶん測定ミス)」を無理に入れて尿中のセシウム濃度の平均値を上げているが分かるのですが、対象とした人々の年齢や居住地域、白血病と判断した方法などが分からないと、対照群に比べてどの程度罹患率が上がるのか判断出来ません。
なぜなら OSATO さんが引用したように、白血病には地区的な要因があるし、甲状腺の異常と同様に検査を詳細にすると対照群でも同じ率の以上が見つかるという場合があるからです。

生物学的なリスクの見積もりについては、ブログ記事にまとめるとともに、授業でも解説しています。

http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/65541542.html
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/65541955.html
http://blogs.yahoo.co.jp/bloom_komichi/65546071.html

上記にも書いたように疫学調査の評価はデータがブレやすく、新型インフルエンザ騒動でも分かるように先入観や願望のある人がデータを選んだり統計処理をすると致死率が100倍くらい上がることがあります。

冷戦の頃から放射線生物学の研究は盛んになっていて、その中には「被爆の影響が大きく出て欲しい」という願望を持って(変化無しだと論文にならないので)低線量の長期被爆をさせる動物実験も多く行われてきました。もちろん真実を知りたいと思って実験している人も多くいるし、希に「影響が小さく出て欲しい」と願って実験している人もいます。

人の白血病が動物実験でどれだけ再現出来るのか分かりませんが、捏造をしていない限りは、動物実験のデータと疫学調査が一致するのか・・という点も気になります。
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見たいものしか見ない (OSATO)
2012-11-11 10:22:00
いらっしゃいませbloomさん、こちらでは初めまして。bloomさんのブログはいつも参考にさせていただいてます。

福島原発事故以来、様々な報道や個人ブログ、ツイッターなどを見ていますが、人間というものはつくづく「見たいものしか見ない」ものなのだという事を実感します。
それは学問研究の分野でも同様で、疫学などはそれこそデータの取捨選択によってその解釈が大きく変化するものでもあります。
本来ならばそのばらつきを補完する上でも動物実験などの基礎研究が重要となる訳ですが、それすら恣意的に行われる事もままある訳ですね。
それプラス、今度はマスコミによるバイアスというのがあり、元情報が果たしてどれほど正確に一般市民にまで理解されるのか、一度疑い出したらきりがなくなります。

今回の報道を見ても、元となった論文の詳細も分からない中で、読者の間には数字ばかり(それも間違った数字)が印象付けられるだけとなっています。
そして初めに印象付けられた事からは、人間中々抜けられないものです。
我達としては、まず一方的な情報だけに触れないという事と、その原典(根拠)に当たってみるというのが重要な事となるのですが、そこまでやる人は中々いないというのが現実で、だからこそ伝える側がよりしっかりしないといけないのですね。
今回の研究のより詳細なレポがこれからなされるのかどうか、しばらく注目したいと思います。
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Unknown (ちがやまる)
2012-11-11 12:41:33
はじめまして。
とりあえず論文の梗概は次のようなもののようです。

最近はがん登録で、以前はキエフ付近の医療機関で白血病の発症がとらえられていたようです。で、その発症者と、リストで把握されていた収束作業者とをリンクさせた(誰が発症したかをつきとめた)。白血病を発症した人(最終的に137人)に年齢と居住地域をあわせた対象者をのこりの11万人から1:5くらいで選び出し(最終的に863人)、作業歴等から曝露量(3年目以降の骨髄への累積吸収線量)を算出して、1:5人ずつのグループを考慮した方法で検討したら、線量と発症の有無に関連が認められ、137人の16%が放射線暴露によるという推定値が得られた。

どうでしょうか。
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やっぱり分かりません (OSATO)
2012-11-11 13:09:03
いらっしゃいませちがやまるさん、初めまして。

>のこりの11万人から1:5くらいで選び出し(最終的に863人)
>作業歴等から曝露量(3年目以降の骨髄への累積吸収線量)を算出
>1:5人ずつのグループを考慮した方法で検討

という事は、放射線暴露量については、11万人すべてのデータを調査したという訳ではなく、ピンポイントの無作為抽出(あるいは理論値)による推定値であるという理解でよろしいのでしょうか。
ただ統計処理の仕方なのかもしれませんが、この〔1:5〕という数字の根拠がいまいち分かりません。単に結果的にそうなったという事だけなのか。
私、統計にはうといのでどなたかここの辺りをうまく解説していただけたら有難いです。

元になったと思われる論文はこちらでいいのかしら? ↓
http://ehp.niehs.nih.gov/wp-content/uploads/2012/11/ehp.1204996.pdf
これもどなたか専門家の方に翻訳してもらいたいとお願いするものです。

何かもう、すっかり他人まかせになってしまった…。
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Unknown (ちがやまる)
2012-11-11 14:54:51
「放射線暴露量については、11万人すべてのデータを調査したという訳ではなく」(OSATOさん)そうです。135人は11万人から発症したすべての患者さんでなかったとしても、特別な人だけが抜け落ちたりしていない、患者を代表するほとんどの人と考えられる。これに病気を持っていない人を対応させて(特定の1人の患者さんがいると、この場合は年齢と居住地が同じ人から5人を無作為に抽出して)対照者を集めてきて、患者さんと対照者との間で曝露量を検討する、という、教科書が患者対照研究(コホート内患者対照研究)と呼んでいる枠組みが使われています。
「この〔1:5〕という数字の根拠がいまいち分かりません。」(OSATOさん) 作業や生活条件をくわしく聴き取って対象者すべての人の曝露量を推定しますから、聞き取りに要する時間や人的資源(または予算)にも限りがあります。その一方で1:n のnはある程度まで大きいほうが曝露量と発症との関連をより正確に検討できます。そういう、実行可能性と理想とのトレードオフで決まったのではないでしょうか。

元の論文はそれですね。
翻訳は、、、どなたか実力のある方にお任せしましょう。
(それまでにして読まなければならないもののようには見えませんけれども。)
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Unknown (ちがやまる)
2012-11-11 18:58:44
こんばんは。
きょう私が昼ころに書かせていただいた中で、「3年目以降の」骨髄への吸収線量、とあるところは誤りでした。
「発症直近の2年間の曝露は発症に関わらないと考えられるので、それを外していた。」ということです。嘘を書いてすみませんでした。

嘘といえば、OSATOさんが記事中にひいておられる新聞の図も問題があると思います。
これだと11万人を継時的に追及したみたいに見えるのが1つ。もうひとつは、20人を何らかの理由で除外した、とありますが、除外はしてないようですよ。上で私が書いた嘘(間違え)に関わることですが、発症直前の曝露はを考えないことにしよう、という中で、考えない期間は1年間がいいのか2年間がいいのか、というわりと細かな問題が出てきます。その下位的な問題に答えるため除く年数を変えてどれがいいか見てるのですが、その時に137名の場合と治療に入ってから2年未満で作業歴生活歴の調査を受けた20名を除外した場合と両方を見てます(除外した理由はわかりませんが、病気になったことで過去を客観的に報告しずらくなる、といった事を考えているかもしれません)。除外したのはその時だけのようですから、その矢印に「20人を除いて分析」と書くのは違うと思います。
返信する
原本の検討が必要かも (OSATO)
2012-11-11 23:26:43
>ちがやまるさん

ご丁寧な解説ありがとうございます。
ご指摘の図に関してですがあれは河北新報からの抜粋で、図そのものは記事内容をそのまま要約したものですので、あの図が間違っているという事は、共同の記事内容が間違っているという事になります(河北記事は〔47ニュース〕とほとんど同じですから)。
(ちがやまるさん)↓
>11万人を継時的に追及したみたいに見える
〔共同通信〕 ↓
>収束作業に関わった作業員約11万人を20年間にわたって追跡調査した結果

(ちがやまるさん)↓
>20人を何らかの理由で除外した、とありますが、除外はしてないよう
〔共同通信〕 ↓
>統計学的理由で事前に20人を除き、117人についてほかの発症要因を除外する分析を行った。

共同通信はこの117人を元にその【16%】の19人が被ばくの影響と書き、この部分を「産経」「日経」は【16%が被曝による影響】として流用している訳です。
でもコメント内で紹介した原本のp.4【Results】の項目では確かに、
http://ehp.niehs.nih.gov/wp-content/uploads/2012/11/ehp.1204996.pdf

>A significant linear dose-response was found for all leukemia (【137 cases】, ERR/Gy=1.26(95% confidence interval 0.03, 3.58)).
 (重要な直線的な用量反応はすべての白血病(【137のケース】、ERR/Gy=1.26(95%の信頼区間0.03、3.58))で見つけられました。)
>In our primary analysis【excluding 20 cases】 with direct in-person interviews
 (直接の対面面接をして【20のケースを除いた】私たちの一次解析で)
>the ERR/Gy for 【the remaining 117 cases】 was 2.38 (0.49, 5.87).
 (【残っている117のケース】のERR/Gyは2.38(5.87の0.49)でした。)
>Altogether, 【16% of leukemia cases】 (15% of non-CLL, 18% of CLL) were attributed to radiation exposure.
 (つまり、【白血病のケースの16%】(15%の非CLL、18%のCLL)は放射線被曝の結果と考えられました。)

とあり、この部分を見る限りでは記事内容は合っている様にも思えます。
また、原本p.19にも、

>Other possible reasons were that the 20 cases were undergoing therapy at the time of interview or were in poorer health compared to other cases, which could have influenced the accuracy of recall.
 (他の可能な理由は、リコールの精度に影響を及ぼしたかもしれない他のケースと比べて、20のケースがインタビュー時点で、療法を受けていたか、または、より貧しい健康にはあったということでした。)
>In our primary analyses, we omitted these 20 cases, so results were not unduly influenced.
 (第一の分析では、私たちがこれらの20のケースを省略しても、結果は過度に影響を及ぼされませんでした。)

という表記があります(翻訳は機械翻訳)。
いずれにせよ、やはり原本の翻訳版をじっくり検討してみるのが一番かもしれません。
返信する
Unknown (ちがやまる)
2012-11-12 01:17:02
20人に関してはOSATOさんのご指摘のとおりでした。
化学療法を受けてから2年未満で聴き取りを受けた20人と、それに対応する対照者を除去して主体となる解析をした、と12ページの下から7行目から書いてありますね。
(弁解めきますが、ざっと表2を見たとき、サブグループの患者人数を足すと137になると計算違いをしたままでいたのが敗因でした。)
117人(とその対照と)で検討するとCLL発症にもnon-CLL発症にも曝露量との関連が認められた、ということでした。

わたしが妄言を書いたことでお手間をとらせたとしたら、大変申し訳ありませんでした。
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