「一気に執れ!」
西川攻(さいかわおさむ)の小説
「孤高」⑨
--闘うは、われ、ひとりなり--
「一気に執れ!」
「退院直後なのに、少し張り切りすぎたみたいですね」と主治医は、無茶は禁物の旨、裕樹に忠告した。
確かに体が疲れやすく、立っておれないほどつらい日々が多くなっていた。
その後、何度か入退院と通院をくりかえしている内に、年が明け、早くも季節は、春となっていた。
そして、新たに肺癌の疑いありと診断された。
「脳や、骨にまだ転移してない」ので、呼吸器だけに、すぐに手術しなければならないこととなった。
結局、右肺の3分の1が切除された。
問題なのは、その間に、先送りせざるを得なかった肝臓癌が、当初、小さいのが1つであったのが大きくなって、更に3つに殖えていた。
癌のマ-カ-も異常に大きな数値を示していた。
このままだと
余命3ヶ月と診断された。
爾来。
抗がん剤治療が開始されたものの、其のひどい副作用により、政治活動ができない絶望的な月日がどんどん過ぎ去っていることが、無念に思え、何よりも其の事が一番つらく裕樹の心を悩ませていた。
当初の大手術後の生還のときに爆発した使命的野心の下に書き綴った自書「総理に向けての5ヵ年プラン」を実行できるのは自分をおいて他はなし、の確信をこんな状況の中にあっても益々強めていた。
「私が総理にならなければ、この日本は絶対変わらない!」
「しかし意気込みや思いだけでは何も始まらない、進まない。」
「時間がない、急がなければ・・・。」
種種考えた末、彼が出した結論は、
「一気に執れ!」
之しかない。
其の刻から西園寺裕樹の
野望達成に向けての
鬼気迫る、驚くべき
大胆不敵な戦略が
開始されることとなる。
闘病編が終わり、いよいよ
5月からは"躍動編”に入ります。
次回は、 「より深く、より静かに」 です。
平成24年4月28日
西川攻(さいかわおさむ)でした。
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