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☆小説 「孤高」 -闘うは、われ、ひとりなり- 「5」 西川攻著  

2012-02-26 21:23:25 | ☆ 小説「孤高」

「覇気と挫折」

 

                     

 

 

 

西川攻(さいかわおさむ)の小説

 

   「孤高」      

   ~闘うは、われ、ひとりなり~

 

 

 

 

    「覇気と挫折」

 

 

 「ひとつで、よかったね!」

 10時間に及んだ手術の麻酔の眠りを耳元でささやいた妻の弾んだ声が遮断した。

 「ウ、ウウ・・。」西園寺裕樹は1時間にも満たない、あたかも昼寝を起された感覚に

初めての体験ではあったものの手術医療の進歩に驚きを実感した。

 

 「生きていたのか!」

 「よぉ-しっ!」

 心の中で自身に渾身の力を振り絞り、気合をかけた。

 裕樹が手術前から気になり続けたのは合併症はともかく人工肛門が大・小二つになったとしたら一体どんな日常になるんだろう。

 今後の政治活動に限りない支障をきたすことになるに違いないと危惧していた。 

 ひとつですんだことで野望がよみがえり、すぐ退院したい衝動に駆られ、今からやるべき上の戦略戦術創りにワクワク感、充実感が体力が衰弱している筈の術後の体を席巻していた。

 然し、事はそううまく運ばなかった。

 2週間ほど経過してから食事が全く出来ないほどの高熱が度々侵襲しこれが3、4日単位で、次々と繰り返される病状に陥った。

右は問題ないが左の腎臓から取り付けた排泄じん管が縮んでしまい腎臓に細菌がつき腎孟腎炎を起していたのである。

従って、この危険な状態を脱出、防ぐ為に、老廃物を体外に出すため新たに腎臓に管を入れなければならず、腰の方からカテ―テル(腎ろう)が挿入されることとなった。

 

「結局、二つになってしまった、これでは二刀流、宮本武蔵だ。」

「われ、ことに於いて、後悔せずか。」

「 あ-あ 、ナンテコッチャ・・・。」

 裕樹は本来の自分にはあるまじき、当日だけは愚痴っぽい女々しい今の己に嫌悪し、冗談と苦笑で吹き飛ばすべく相部屋での病室では努めて明るく振舞うしかなかった。

 

 然し従来はまったく見えなかったものが見えるようになり、

 そして新たな鬼気迫る覇気が確実に術後凄まじい勢いで、彼の使命的野心となって心と体全部に日ごとに増幅浸透していった。

 

まるで、別人に生まれ変わったが如く・・・。

 

 

次回は、3月「天下を取る!」を投稿します。

 

 

平成24年2月26日西川攻(さいかわおさむ)

 



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