「農は過去と未来をつなぐ―田んぼから考えたこと―」 作:宇根 豊 発行:株式会社岩波書店(岩波ジュニア新書)
農は過去と未来をつなぐ――田んぼから考えたこと (岩波ジュニア新書) 宇根 豊 岩波書店 2010-08-21 by G-Tools |
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イネを植えるのに、なぜ田植えって言うんだろう?
田んぼの生きものを数えてみたら、5700種もいることがわかった。
田んぼはイネを育てるだけでなく、多くの生きものを育てているのだ。
環境稲作を提唱してきた著者が、
生産者減少や食糧自給などの問題を考えながら、
「農」が本来もっている価値を1つ1つ拾いあげていく。
(裏表紙より)
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職場の近くには田んぼがいくつも見られる。
車で通り過ぎるばかりだが、
季節季節で田んぼが姿を変えていくのを見るのはいいものである。
この本は、もっと田んぼとイコール自然と触れ合ってほしい、
という願いで書かれている。
自分は、田んぼに入ったこともない。
田んぼに入るきっかけとして著者が挙げるのが「生きもの調査」である。
田んぼには実に多種多様な生き物がいるのである。
「行ったこともない原生自然の生物多様性ではなく、
身のまわりのありふれた世界の生きものたちの生物多様性のほうが大切でしょう。」
なるほど、そりゃそうだ。
著者は減農薬運動などをやってきた人だ。しかし、生産効率を上げる目的のために、
農薬を使ったり機械化を進めたりして、農業は自然破壊をしてしまっている。
それではいけない、本来農業は自然をつくり出してきたのだ、というのが著者の主張だ。
なぜ、「稲植え」と言わず、「田植え」というのか。
イネを私が植えて育てる、のでなく、田がイネを育ててくれる、
私はその手伝いをするに過ぎないのだ、ということなのだ。
「つまるところ、百姓仕事とは田をつくりつづけることでしょう。
『百姓は稲を作らず田をつくる』という本質は、百姓仕事が除草剤やコンクリートや
農業機械という近代化技術に浸食されても、まだ骨の部分が健在なのです。
つくりつづける、そのことが美しい、と言いなおすべきでした。
じつは、つくりつづけようとする情念が百姓仕事を支えているのであって、
経済や経営が支えているのではありません。
仕事とは、本来そういうものでした。
なぜなら、仕事の中に、生産物を得る前に、すでに喜びがあったからです。」
最後に、この本は「HONZ」というサイトで見つけたものである。
「HONZ」の影響で、(影響を受けやすいのだ)最近ノンフィクションに興味が
出てきた。たくさん積まれた小説本も読まなきゃいけないのに!
"Nou wa Kako to Mirai wo Tunagu" by Yutaka Une (2010)