(承前) 獲物はおそらく、巣立ったばかりの若ハトで、まだうまく飛ぶことができず、また、外敵の恐怖も、知悉していなかったのだろう。 さて、おむは一旦、獲物をリリースした。 ここで、私はどうするか? | |
ハトはもう飛べず、歩くことしかできない。従って、このままならば、逃げ切れずに、おむになぶり殺しにされる。(猫は、空腹でなくとも、そうするのだ。) | |
両者が端的な野生動物であれば、私はそのまま「自然」に任せたろう。だが、おむが毎日充分な給餌を受けていることを、私はよく知っている。 私は、ダメモトで、ハトの救助を試みることにした。 | |
私の行為の正邪や善悪について判断するつもりはないし、そんな判断は無意味である。 (もしここで、私が道徳的ないし人道的であるべきことを欲するのであれば、そもそも猫にもハトにも関わらず、例えばアフリカで餓死しつつある子供達のため時間と労力とカネを使うであろう。) | |
再度襲いかかろうとするおむを押さえつつ、また、横から近寄ろうとするおかか先生を牽制しつつ、偶然通りかかったご婦人の助力も得て、私はこのハトを捕えることができた。 | |
傷ついたハトの親(と覚しきハト)が、橋の下で一部始終を見ていた……。 | |
私は急遽帰宅した。 拙宅では、かつて兄がハトを飼育したことがあるが、当時の鳩舎や器具は今はもうない。 ただ、金属製の鳥籠がある。ひどくサビているが、当面の役に立ちそうだ。 | |
ハトは両翼の付け根をやられていた。が、ぐったりしているわけでもなく、羽ばたくこともできる。 | |
翼の付け根の内側の創傷部。肉が露出している。 |