松下啓一 自治・政策・まちづくり

【連絡先】seisakumatsu@gmail.com 又は seisaku_matsu@hotmail.com

☆圏域行政を考える②地方自治法5条「従来の区域による」の意味

2020-05-17 | 域外住民への関与
 自治体の 3 要素のうち「区域」については、法第5 条第1 項 により「従来の区域による」とされている。これは法施行当時の都道府県及び市町村の区域が、そのまま都道府県及び市町村の区域ということである。

 そして、確定された自治体の「区域」を前提として、第 10 条第 1 項において、市町村の区域内に住所を有する者は、当該市町村の住民とされる。

 区域が出発点とされるが、その区域が争われた事例がある。筑波山の山頂が、どちらのまちに属するかの裁判例がある。ここに、第5条の歴史が書かれている(最高裁昭和 61 年 5 月 29 日第一小法廷判決)。

(1)明治11年7月22日太政官布告第17号郡区町村編制法は、1条において『地方ヲ画シ テ府県ノ下郡区町村トス』と規定し、町村を行政区画の一つとして位置付 けたが、個々具体的な町村につきこれを新たに創設するということはせず に、2条において『郡町村ノ区域名称ハ総テ旧ニ依ル』と規定し、江戸時 代から存続した町村の区域名称を承継した。

(2)続 く明治21年法律第1号町村制は、3条本文で『凡町村ハ従来ノ区域ヲ存シ テ之ヲ変更セス』と規定した。

(3)さらに明治44年法律第69号町村制は、1条 で『町村ハ従来ノ区域ニ依ル』と規定し、

(4)現行の地方自治法も、5条1項で『普通地方公共団体の区域は、従来の区域による 』と規定し、それぞれ、町村の区域については従来のそれを引き継ぐこととしている。

 「町村の境界を確定するに当たつては、当該境界につきこれを変更又は確定する右の法定の措置が既にとられていない限り、まず、江戸時代における関係町村の当該係争地域に対する支配・管理・利用等の状況を調べ、そのおおよその区分線を知り得る場合には、これを基準として境界を確定すべきものと解するのが相当である」としている。
 したがつて、「欧米か」ではなく「お江戸の時代かあ」である。ひぇぇである。

 昔から、境界紛争が起こるが、それは人々の生活圏、社会経済圏がぶつかり合うからである。自分の暮らしに影響がない土地は、関心がない。

 横浜市と横須賀市で境界紛争があったが、その土地が日産自動車の敷地だからである。横須賀市とすると、横須賀の大企業である日産が横浜市になったら、えらいことになる。社会経済活動と密接な関係があるので、本気度が違う(現状が横須賀市が管理しているという現状も大きい。)これについては、すでに書いたことがある。

 江戸時代から連綿と続く区域によって、今日の地方自治が決められている。地方自治法ができる昭和22年から考えても、今とでは、産業構造も鉄道や自動車といった交通手段、インターネットなどの情報通信機器も大きく違う。それにもかかわらず。江戸時代以来からの「従来の例による」という仕組みそのものが制度疲労を起こしている。

 2040年問題を抱える今日、歴史は尊重するが置いておいて、今日にふさわしい区域を考える必要があるのではないか。ここに圏域行政を考える意味がある。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ☆今、議論すべきこと・新たな... | トップ | ☆圏域行政を考える③自治体の現状 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

域外住民への関与」カテゴリの最新記事