ポル・ポトの一人娘であるセットは,世間と隔絶して,金に不自由のない生活を送り,行くところといえば,巨大スーパーマーケットくらいで,ひたすら,自らに背負わされた負の遺産に背を向ける日々を過ごしていました。
そんなセットが,借りた家に敷設してあったコピー機から大量の人の写真が吐き出されてくるという怪現象が発生します。
誰にも知らせることのできず,弔う人もない無数の人びと。
この人たちが何で命を落としてしまったか,それは,いうまでもありません。
セットは,携帯電話の店員と恋に落ちて後,宿命に向き合う覚悟を決めていきます。
まあ,一言でいいますと,この物語は,「赦し」と「癒し」のお話であります。
セットが,死者たちの名前を聞き出し,写真に記入して,成仏を願うという話は,われわれ日本人にとっても,何となく身近に感じると思います。
そして,セットが死者たちから受け入れられた徴として,携帯電話が一斉に鳴り出して祝福を奏でるクライマックスシーンはなかなかに感動的であります。
その意味では,非常に読後感もよく,爽快さもある…とはいうものの,原題でもありますように,あくまでもファンタジーとして,さいのさいの,作者が断わりを入れているところが目立ちます。
思いだしていただきたいのだが,これは真実の物語ではない。
そりゃあまあ,そういう前提で読ませていただいておりますし,こんな念押しを挟み込むことが,興ざめであることは勿論作者も承知しているであろうと思われますが,あえてこういう注釈を入れざるを得ないというところが,或る意味,真実味を感じるわけです。
ポル・ポト政権の行ったことからして,こんなきれいな物語は場違いで怪しからんということへの後ろめたさが見えるのは、穿ちすぎか。
非常に美しく感動的お話であるのに,歴史的事実が強烈なだけに,妙なギクシャク感がある…その居心地の悪さが印象に残ってしまう作品であります。(そんな一面だけをとらえるひねくれ人もおりませんでしょうが)
SFマガジン2007年8月号掲載。
そんなセットが,借りた家に敷設してあったコピー機から大量の人の写真が吐き出されてくるという怪現象が発生します。
誰にも知らせることのできず,弔う人もない無数の人びと。
この人たちが何で命を落としてしまったか,それは,いうまでもありません。
セットは,携帯電話の店員と恋に落ちて後,宿命に向き合う覚悟を決めていきます。
まあ,一言でいいますと,この物語は,「赦し」と「癒し」のお話であります。
セットが,死者たちの名前を聞き出し,写真に記入して,成仏を願うという話は,われわれ日本人にとっても,何となく身近に感じると思います。
そして,セットが死者たちから受け入れられた徴として,携帯電話が一斉に鳴り出して祝福を奏でるクライマックスシーンはなかなかに感動的であります。
その意味では,非常に読後感もよく,爽快さもある…とはいうものの,原題でもありますように,あくまでもファンタジーとして,さいのさいの,作者が断わりを入れているところが目立ちます。
思いだしていただきたいのだが,これは真実の物語ではない。
そりゃあまあ,そういう前提で読ませていただいておりますし,こんな念押しを挟み込むことが,興ざめであることは勿論作者も承知しているであろうと思われますが,あえてこういう注釈を入れざるを得ないというところが,或る意味,真実味を感じるわけです。
ポル・ポト政権の行ったことからして,こんなきれいな物語は場違いで怪しからんということへの後ろめたさが見えるのは、穿ちすぎか。
非常に美しく感動的お話であるのに,歴史的事実が強烈なだけに,妙なギクシャク感がある…その居心地の悪さが印象に残ってしまう作品であります。(そんな一面だけをとらえるひねくれ人もおりませんでしょうが)
SFマガジン2007年8月号掲載。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます