人だすけ、世だすけ、けんすけのブログ

愛知13区(安城市・刈谷市・碧南市、知立市、高浜市)
衆議院議員 おおにし健介

【書評】雑巾がけ

2012年05月22日 | Weblog
「雑巾がけ 小沢一郎という試練」 石川知裕・新潮新書

 読んでいて、「あるある」と、共感するところが多かった。私も立候補をする前に、馬淵澄夫代議士の秘書をしていた。ある時期は、一日の中で夫人よりも長い時間を馬淵代議士と過ごしていた。もっとも、私が秘書をしていたのは3年ほどだし、代議士も私のことを地元秘書に比べれば、ずっと優しく扱ってくれたので、私が「雑巾がけ」なんて言うのはおこがましいが、秘書経験者としては石川代議士の気持ちはよく分かるし、自分も代議士となった今、「秘書道」とも言うべきこの本の内容をうちの秘書にも、ぜひ、読んで欲しいと思う。

 私は、秘書をしていた時に周りの先輩秘書を見ていて、思っていた「よい秘書の必須条件」、それは、ボスへの思いが強いことと、「先読み」して仕事ができること。石川代議士は、そのどちらにも当てはまる。石川代議士は、高校生からの小沢ファンで、スーパーチルドレンだと自称する。小沢さんを心から尊敬しているのが、よく分かる。しかし、盲目的に礼賛しているのではない。本書には、小沢さんの「ダメ」なところも書いてあるし、心の中で小沢さんに対して「おい、おい。」と突っ込みを入れている場面が何度も出てくる。その気持ちは秘書経験者として、すごくよく分かる。これから修業する人へのアドバイスにある「政局に予定を入れない」というのは、まさに「先読み」そのものである。
 小沢さんの前では、妙に緊張することや、自らの立候補についてボスの了解を得る時のボスとの微妙な関係なども自らの体験と重ねて読ましてもらった。

 もう一つ感じたのは、小沢さんと馬淵の共通点である。石川代議士が小沢さんに魅かれたのは「強さへのあこがれ」だと書いてあるが、最近は、「父性」を感じさせる政治家が少ない気がする。野党時代の小沢代表のポスターに、たしか「日本のオヤジ、動く。」といったキャッチコピーのポスターがあった気がする。小沢さんは、まさにこわいオヤジのイメージだ。馬淵は、私生活でも6人の子供の父親で、現代風のパパの優しさもあるが、怒ったら、こわいオヤジだ。私も自分にないその力強さ、「父性」に魅かれてついてきた。

 実は、馬淵自身も雑巾がけの経験がある。馬淵は、「丁稚奉公」と言うが、修業時代の思い出話を秘書をしていた時に、よく聞かされた。馬淵がオヤジと呼ぶ投資家に、草刈りや運転手から始めて、商売のイロハを叩き込まれたこと。本書では、これから修業する人へのアドバイスとして「物の頼み方、頼まれ方」ということが書いてあるが、馬淵は、オヤジから、「金の払い方、受け取り方」を教えられたと話してくれた。同じ支払いをするにも、あり難く受け取ってもらう払い方があるし、反対に気持ちよく支払いをしてもらう金の受け取り方があると言う。馬淵の運転手から、「おやじ」に認められて、30代で上場企業の役員に抜擢されるまでの話は、さながら秀吉の「信長の草履とり」の逸話のようだ。最近では、「松下政経塾出身者が日本の政治を悪くしている」という声まであるが、政経塾出身の政治家に共通するのは、若くて、政策通だが、世間知らずで、人の気持ちが分からないという批判だ。私が馬淵代議士に天下をとらせたいと思うのは、民主党の若手政治家の中で、実社会での経験が豊富で、雑巾がけも、落選も経験していて、「日本を良くするのは馬淵だ」と思うからだ。

 石川代議士も、「おわりに」で、逮捕された今でも小沢さんについていく理由を問われれば、現在の政治家の中で最も政策がよく、実行力があり、「日本を良くするのは小沢さん」と思うからだと述べている。秘書だったからではなく、客観的に、日本のためにそう考えているところが、私の馬淵に対する想いと近い気がする。さらに、続けて、「人柄」や「清廉さ」こそが、もっとも重要だと言わんばかりの世論には戸惑うと述べている。「人柄がいいが無能な社長」より「独善的だが有能な社長」を選ぶのは当然だという石川代議士の主張は、実は、私が辿り着いた「小沢一郎論」とまったく同じだ。
 私の支援者の中にも小沢さんが好きな人と大嫌いな人がいる。大嫌いな人の主張はこうだ。政治は「信なくば立たず」だ。カネの問題で国民の信頼を失った人間がリーダーになる資格がないというものだ。私は、これも一理あると思う。一方では、「清濁併せ飲む」のが政治家だ。「クリーンだけど能力のない政治家」より「グレーだけど実力のある政治家」に任せるのが当然じゃないかという声も理解できる。当たり前だが、クリーンで実力があれば、それが一番いいに決まっている。だから、私は排除するのではなく、小沢さんの「実力」をうまく使えばいいと思うし、一方で、法的にシロかどうかは別にして、現在の国民世論では、表の顔になるのは難しいと思っている。

 最後に、私も、辞めて公募に応募する許しをもらった時に、馬淵から「お前もまだまだだな、だけど、まぁ、がんばれ」みたいなことを言われた気がする。この本を読んで、石川知裕衆議院議員という人物そのものに関心が湧いた。実は、以前にこのブログに「悪党」の感想を書いたら、議員会館のエレベーターで石川代議士に会った時に「ブログ読みましたよ。感想を書いていただき、ありがとうございます。」と丁寧に挨拶されて、驚いたことがある。なかにはエレバーターで会って挨拶しても返事もしない議員がいる中で、この辺は、まさに雑巾がけで人間ができているかどうかの差だと思う。


最新の画像もっと見る