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クールパッドシーツの選び方(2017年速報版)。

2017年05月09日 | 夏の冷感(クール)寝具



こんにちは、元ふとん屋店長です。
本日は手元の気象計によりますと、
午前八時現在、気温二十七度、湿度四十%、
初夏!という感じの陽気です。

さて愈々クールパッドが欲しい季節になってきました。
当ブログでは毎年クールパッドを取り上げてきましたが、
今年も簡単に冷感寝具についての、
考え方、選び方、買い方などを書いてみたいと思います。
なお今回はパッドシーツを中心に取り上げます。

1、冷感寝具に期待する事
 冷感寝具に期待する事は主に二点です。
 即ち、
  ・体感温度を下げる
  ・体感湿度を下げる
 というものです。

 基本的に睡眠中の気温は33℃湿度50%が適当とされています。
 ところが初夏~夏~秋にかけては、
 湿度か気温のいずれかが当条件を上回ってしまう夜が多く、
 特に発汗量の多さから、
 寝床内の気温湿度が上昇しがちな男性を中心に、
 快適でない睡眠を余儀なくされてしまっている場合が多々あります。

 そこで冷感寝具には温度と湿度の調整が期待されています。
 ではその為に、どの様なパッドシーツを選べばよいのでしょうか。

2、パッドシーツで湿度を下げる
 パッドシーツに気温湿度の調整をしてもらうとして、
 両者のうちより簡単に調整できるのは湿度の方です。
 そこで先ずは湿度について先に考えたいと思います。

 湿度は基本的にはなくてはならないものであり、避けられないものです。
 余り低下してしまっても乾燥して厄介なのですが、
 上昇しすぎてもジメジメしたりして不快感そのものになります。
 つまり程好いところで維持したい存在です。

 ところが睡眠時には、
 部屋に元々ある湿気に加えて大きな問題が生じてしまいます。
 それが睡眠者本人の発汗です。

 ヒトは睡眠の際、平常時よりも体温を約1度下げると言います。
 体温を下げる事で睡眠状態になり、必要な調整を行なう様なのですが、
 入眠時に体温を下げる役割を担っているのが発汗です。
 発汗を利用して体表から熱を放出し、体温を下げる訳です。
 従って量に個人差はありますが、入眠時発汗は誰にでもあります。
 問題はその汗の行方です。

 基本的に出た汗は睡眠中のヒトの周辺にわだかまります。
 というのも睡眠時ヒトは寝具を使っていますので、
 寝床内(ヒトが寝具に包まれている内側をこう呼びます)は、
 掛寝具と敷寝具によって外界と隔絶されており、
 体内から放出された汗は行き場がなく、寝床内を漂うしかないのです。
 これが寝床内湿度上昇の一原因です。
 このままにしておくと湿度が急上昇しますので寝返りが増えたりしますが、
 更には気体化している湿気が液体化してパジャマやシャツを濡らしてしまうため、
 夏風邪の原因となるなど、一層厄介な事になります。
 
 そこでこうした発汗で生じた湿気には、
 素早くどこかへ消えて行ってもらう必要が生じます。
 その役割を果たすのが、敷寝具であり掛寝具です。
 基本的に発汗で生じた寝床内の湿度は、
 (素材にもよりますが)8割弱を敷寝具が、2割強を掛寝具が吸収します。
 夏でも薄いダウンケットを用いるのはこうした吸湿機能が期待されての事です。
 敷寝具は8割弱の湿気の吸収を分担しますので、
 寝床内湿気の早期撲滅にはより大きな役割を与えられていると言えます。

 また湿気は素早く吸収するだけでも問題になります。
 吸った湿気はその時点で消えてしまう訳ではなく、
 発散してもらわないと、結局湿度を上昇させてしまいます。
 こうした湿気の早期吸収発散能力を持ったパッドシーツを、
 私はクールパッドシーツと区別するために、
 「ドライパッドシーツ」と呼んでいます(別に私の造語ではないです)。

 急速吸収即時乾燥が身上ですので、
 表層・中わた・裏地のいずれにもポリエステルを用います。
 この頃はエステル100でも滑らかな表面加工が可能なので、
 感触的に気になる方の比率はかなり減少していると思います。
 売りはともかく乾きが早い事。
 睡眠時、コットンのパッドシーツと比較すると、
 寝汗がハッキリ減ったと感じる方が多いのではないかと思います。
 また洗濯時の乾燥も勿論早いので、当該季節には便利です。
 価格が低いのも特徴で、
 1シーズン持ってくれれば、というものなら数百円から存在します。

 なお表層をエステル100ではなく、
 エステルへの特殊加工を施したりレーヨンなどを使用する事で、
 クール感を出しているものも存在します。
 これら980円~数千円のクール付与型ドライパッドの涼感力は概して当てになりませんが、
 結果的により寝汗を減らす効果はそれなりにある様にも思われます。

 ドライパッドの選び方としては、
 徹頭徹尾、湿気吸収力と速乾性に注目する事、
 寝心地を変えてしまいそうなもの(硬い・柔らかいetc)は選ばない事、
 店頭で購入するなら比較的好みの触感のものを選んでみる事、
 などでしょうか。
 逆にこのジャンルは安価である事が売りなので、
 中途半端に機能が付与されて中価格に踏み込んでしまった商品は、
 鳥渡立ち止まって考えてみても良いと思います
 (このジャンルは中価格帯が最も割を食っていると思う)。
 またメーカーも寝具店も直ぐに天然素材をねじ込んでこようとしますが、
 ドライパッドに関しては初志貫徹で天然素材は排除してしまって良いと思います。
 天然素材で考える場合はまた全然別のアプローチが必要です。
 
 まとめますと、
 ドライパッドシーツは、
 急速吸収即時乾燥を是としたパッドシーツで、
 とにかく寝汗を素早く吸い、素早く発散する事に主眼を置いたパッドです。
 基本的には化学繊維を利用して作られており、
 極々薄い中わたもエステルわたです。
 機能は絞られており、代わりに安価です。
 スーパーからデパートまであらゆる販売店で売られており、
 最も目にし易く選択肢が多い商品です。

3、クールパッドシーツで体感温度を下げる
 湿度を下げるドライパッドに対して、
 涼味を感じさせてくれるのがクールパッドシーツです。
 今回は昔に一世を風靡したアイスジェルパッドは含めません。

 睡眠中に涼しさを感じさせてくれて、
 暑さで目覚めてしまう可能性を下げてくれるクールパッドシーツ、
 その方式には大まかに言って下記の3種があります。
 即ち、
  ・特殊素材
  ・熱吸着
  ・熱伝導
 です。

 特殊素材にはさまざまなものがあります。
 アウターのシャツなどでも現在かなり広く活用されており、
 涼しく感じさせる効果は既に実証済みの技術も多いです。
 寝具業界では代表的なものとして、
 「アウトラスト」
 「PCM」
 などがあります。
 中でも「アイスPCM」は寝室の環境によっては大きな力を発揮します。
 
 熱吸着は寝具業界にクールパッドシーツというジャンルが成立したときからあるもので、
 接触冷感機能とよく呼ばれていました。
 ヒトの表皮にある湿気を布が急速吸収する際、
 ついでにヒトの熱も持って行ってくれるのでヒトは涼しく感じる、というものです。
 現在販売されているクールパッドシーツの多くの割合をこの形式が占めています。
 一瞬しか涼味がないし、一度湿気を吸ってしまうとクール機能を半ば失うので、
 クールというよりはドライパッドシーツの補助機能という様に考えられなくもないです。

 熱伝導は最近の主流です。
 ポリエチレンが配合されているパッドシーツは大体熱伝導機能商品です。
 ヒトが触れている部分から伝わった熱を、
 シーツの表面積一杯に伝導させ飛ばしていく事で、
 熱を一点に籠もらせず、従って涼しく感じるという機能です。
 現時点ではパッドシーツとしての総合力はこの熱伝導が最も優れていると思いますが、
 能力的に期待外れに終わる商品が多い気がするのは難点かも知れません。

 これら各般にわたるクールパッドシーツを細かく見ていくと長くなってしまうので、
 簡単に纏めてしまいます。
 なお2017年モデルはまだ店頭でも出揃っておらず、
 余り検証できていないので、
 不完全な噂話レベルのものとしてお考えください。

 先ず特殊素材使用のクールパッドについて。
 このジャンルでは「西川リビング」の、
 「アイスPCMパッドシーツ」が依然として独走態勢かに見えます。
 もう進歩は止まっておりますので、
 既にお持ちの方など使用経験がおありの方は
 現状の印象をもとに検討してしまって概ね問題ないです。
 相変わらず寝心地が硬くマットレスの寝心地を変えてしまうので、
 ここを容認できるかどうかがカギとなります。

 次に熱吸着について。
 当機能に関してはクールといえばクールかなぁというくらいの期待度が相応しいです。
 上でも記した様にドライパッドシーツの補助機能としてなら優秀です。
 価格的に追いかけない方が利を得やすい様な気がします。

 最後に熱伝導について。
 機能的には非常にピンキリです。
 値段が高いから、エチレン使用比率が高いから良い訳でもなく、購入判断が難しい。
 但し同じエチレンでも熱伝導力に優劣があるのはハッキリしており、
 基本的に現状、
 「高分子(量)ポリエチレン」を標榜しているものが高機能モデルです
 (同じ高分子でもまた更に優劣があると思われます)。
 高分子エチレンを謳った商品は現在、
 ・西川産業
 ・京都西川
 ・昭和西川
 ・フランスベッド
 などが展開している様子です。
 全社共通して中わたを使わずに、
 立体構造(ハニカムなど)で降ってきた湿気を捌こうとしています。(注
 今年もそうした展開は変わらない様子なので、
 目新しさはいまのところ感じられずにいます。
 私としては熱伝導でエステルの中わたを採用した商品を、
 どこかがまた出してくれないものかと首を長くしています。

 まとめますと、
 クールパッドシーツにも機能を持たせるための考え方が色々あり、
 様々な商品が実際に発売されているけれども、
 クール機能については効果に大小があり、
 クールメインのものと、ドライ補助のものがあるので、
 予算と必要性に応じて選択する必要があります。
 また2017年について言えば、
 クール機能に関しては特段の進歩・変化はない様に思える、
 という事になるかと思います。

4、終わりに
 以上、冗漫ではありますが夏の涼感パッドシーツについてみてきました。
 こうした機能性パッドシーツは数百円から数万円まで、
 価格が非常に幅広いのが特徴です。
 是非御自身の睡眠における問題点
  ―例えば暑いのか、蒸しているのか― を整理して、
 必要なタイプを見計らってもらえたらと思います。

 なおクール機能に関しては、
 夏本番の季節においては基本的に機械空調併用が想定されています。
 これはクールパッドシーツは飽くまでも室温に準拠するものであり、
 室温が30℃なのに涼しく感じさせる事ができるものではないからです
 (勿論不快感の緩和には役立つとは思います)。
 そうした意味では今頃の五月・六月、または九月あたりが、
 最もクールパッドシーツの本領を発揮できるシーズンであると言え、
 早い時期の検討が望まれます。
 そのためにも店頭はもう少しクール系寝具の展開時期を早めて欲しいものです。

最後に、
他にもクールパッドシーツに関する記事は色々あります。
右側のカテゴリ欄から「夏の冷感寝具」をご選択ください。
 

注)
 私は昨年(2016年)は産業のものと昭和のものを使用してみましたが、
 産業は湿気を捌くのが上手だが寝心地の改変と肌に対しての荒さに難があり、
 昭和は寝心地の改変は少なく肌にも優しいが湿気を捌くのが遅すぎる(液体化する)、
 などと得手不得手がハッキリ出てしまっていました。
 産業のモデルは元々キルトが硬く肌に対して感触が強いのと、
 湿気を早く大量に表層の裏側へ落とそうとするために、
 立体メッシュ構造に厚みを持たせた事が、
 マットレスの寝心地の改変にも繋がってしまい、難点となってしまっていました。 
 一方の昭和は恐らく表層の肌優しさを出すために表面密度を高くしており、
 それが湿気の表面裏への浸透を妨げてしまい、
 入眠時に一挙に発汗する事で急上昇した湿度を捌き切れていないのではなかろうか。
 昭和のものも一晩の平均で見れば湿気は捌けているのだが、
 序盤の速度を要する段階でのもたつきが湿気の液体化を招いてしまっていると思われる。
 私はクールパッドシーツはドライパッドシーツの機能を高めたものと考えているので、
 ドライ感を得られない昭和のクールパッドよりも、
 産業のクールパッドの方が機能的には結局勝っていると思いますが、
 一方で肌が弱いので寝心地は昭和のものが欲しい。
 最終的には気分と体調で両者を併用しましたが、
 願わくば両立したものが開発・販売されて欲しいものです。



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