大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

原油価格が高騰する背景とは?そのメカニズムを理解して対応するべき

2007年06月12日 | ニュースの視点
21日のニューヨーク・マーカンタイル取引所の原油先物相場は、前週末より1ドル33セント高い1バレル=66ドル27セントと、およそ3週間ぶりの高値で取引を終えた。

原油価格の高騰に比例してガソリン価格が値上がりするのは当然かも知れないが、アメリカの原油価格と小売価格の推移を見るとおかしな点に気づく。

昨年の夏、ピークを迎えた先物原油価格は約1バレル=75ドル、今回は65ドルほどで落ち着いている。

それなのに、ガソリンの小売価格は昨年の夏が1ガロン約3ドルだったのに対し、今年はすでに3ドル20セントとなっているのだ。

原油価格の高騰を言い訳にして意図的に価格を吊り上げているとしか思えない。

アメリカの流れを受けて、これから日本でもガソリン価格が高騰する可能性がある。

そのような場合には、日本は石油備蓄を全て吐き出すなどの対処をするべきだ。

そうすることで、産油国も困ったことになるので、対応策として有効だろう。

毎年あたかも年中行事のように、決まってこの時期に原油価格が高騰するのは、現在原油先物を買っているのは、その8割以上が実需家以外の石油トレーダー、金融機関、ファンド等だからだ。ファンドや金融機関等は、投機的な理由のためにこの時期に原油先物を買い集めて価格を吊り上げる。しかし、実需が伴っていないので、暖冬の兆候などが見えはじめると、冬を迎える前に保有する6ヶ月先物はさっさと売り払わざるを得ない。こうして、この時期だけ原油価格が高騰するというパターンが出来上がるわけだ。

ヘッジファンドの投機的理由のためだけに、原油価格やガソリン価格が変動するというのは、本質的ではないし、何ともみっともない話だ。

ただ、ここ数年の動きを見ていると、そのやり方やパターンも分かってきたので、私たちとしては慌てることなく、粛々と対応していけば良い。

現象の背景やパターンなどを見抜き、論理的な対応を取ること。現象に対して感情的に反応するのではなく、自らの思考によって物事を進めていくことが大切だと私は思う。

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