大前研一のニュースのポイント

世界的な経営コンサルティング 大前研一氏が日本と世界のニュースを解説します。

世界の流れに逆行する日本の税制度改革

2007年11月20日 | ニュースの視点
8日、政府の経済財政諮問会議の民間議員は、税制の抜本改革への提言を示した。

これは、「世代間・世代内の公平」など三つの課題を掲げ、具体策として相続税の課税範囲の拡大などを促すものだ。

この期に及んで相続税の課税範囲の拡大とは、会議に出席した民間議員の見識の低さには呆れてしまう。

世界の潮流は相続税の廃止という方向へ向かっているのは明白だ。

イタリア、カナダ、オーストラリアはすでに相続税が廃止されており、アメリカ、イギリス、フランスなど、他の大国でも、今後相続税は廃止予定、もしくはその提案中という国が非常に多くなっている。

また、この動向は相続税だけに留まらない。

先日、来日中のブルガリアのカルフィン副首相兼外相が発表したところによると、ブルガリアでは2008年から所得税率を現在の最高25%から10%に大幅に引き下げると言う。

相続税や所得税を引き下げる方向へと向かう理由は、ボーダレス経済が加速する昨今の国際競争下において、少しでも自国へ富裕層を誘導したいと考えているからだ。

例えば、ブルガリアの場合には、すでにフラットタックスを導入しているロシア・ウクライナ(13%)、ルーマニア(16%)を仮想競争相手として睨んでいるに違いないと私は思う。

だからこそ、それらを下回る10%という提示なのだろう。

このような状況の中、日本の所得税率は未だに40%のままだ。

日本の場合には、ここにさらに地方税(住民税)が加算されるから、結果として税率は50%になり、世界一高い水準になっている。

悲しいことに日本だけが、世界ボーダレス経済の中で、世界の流れに逆行している。

政治家・官僚の方は、少なくとも他の国々と競争できる土俵に立てるように、今ボーダレス経済の中で世界がどのように動いているのかという基本事項だけでも勉強することから始めてもらいたい。

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