『ディア・ドクター』見てきました。
う~むむむ…。
鶴瓶が演じる伊野のセリフに「ここでは足りないことを受け入れなきゃいけない」って感じの言葉があって、この作品の中では、あれは自分のことなんだろうけど、最近の社会もそんな感じかなぁ…って思いました。
足りている人は、ちょっとの不満で捨てたり糾弾したり、でもそれしかない人は、偽物だとしても、多少気に入らなくても手放す訳にはいかなくて、しがみついたり。
この映画の中の事件だって、作品のテーマの善か悪かの前に、足りない街『医者がいない街』じゃなかったら有り得ない話なんですよね。
香川照之が演じる製薬会社のセールスマンが、いきなり椅子ごと倒れて、手を差し延べた刑事役の松重豊に「その手は愛ですか?」って聞くシーン、どきっとしました。
人間が他人の為にする行動の全てが優しさや好意なんかでは決してないってことですよね。
「はずみ」とか「ついうっかり」とかだってある。
でも、それに気付いても、誰もそれを咎めないし、それすら受け入れてる柔らかい温かい感じが、特に女性の役者さんから凄く感じました。
監督が女性だからなのかな?
母親が末期のガンであることを、伊野の失踪によって知ることになる医師をしている娘。
その娘が刑事に「もし捕まえたら母をどうやって死なせるつもりだったのか聞いて欲しい」と話すシーンがある。
「どのように死なせるのか」
自分が日々行っている医療は「生かす為の医療」
同じ病状の患者がいたとして、救えないとわかっても、「延命」という生かす治療を行っているのであろう娘が言ったこの言葉。
彼女も伊野を責めてはいないんだろうなぁ~というのが伝わってきます。
誰も、許しを乞う訳ではないけれど、誰一人責める人もいない。
ラストは、にっこり笑える、いいシーンで終わりました。