国際交流のススメ

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週刊新潮が伝える“日本の新聞が書けない舞台の評判”って

2009年11月27日 | 海外公演



週刊新潮の11月26日号の“TEMPOエンターテイメント”セクションに<日本の新聞は書けないNY「香取慎吾」舞台の評判>なる記事が掲載されていました。先週末に終了した三谷幸喜・作・演出、香取慎吾・主演のミュージカル「Talk Like Singing」NYプレミア公演についての記事でしたが、なかなか週刊誌らしい刺激的なタイトルと思い中身を読んでみたのですが・・・

新潮いわく・・・スポーツ紙の芸能欄が揃ってこの公演を大きく取り上げ、860席の劇場はミュージカル好きのNYっ子や、日本から駆けつけたファンで埋まったと報道しているが、現地ジャーナリストによると観客はほとんどが在留邦人や日本人観光客と日本のマスコミ関係者であり、日本で報道されているそれとはかなり違っている。さらに日本のカルチャーを米国人に紹介する「ジャパン トレンド プレス」というサイトに掲載された記事の抜粋 <香取慎吾をミュージシャンと思っている人など誰もいない> <純真な日本人ファンは、彼らのアイドルが“夢の国”で活躍していることだけが喜びなのだろう。これまでも多くのアイドルが、アメリカの有名なステージに立ったが、すべて日本のファンへのプロモーションでしかなかった> を掲載し、この公演の米国での本当の受け取られ方、として紹介している。

AKB48のNY初ライブに関する報道を読んだときにも思ったのですが(詳細は過去ブログをご参照ください)、今回の三谷さんの舞台に関する報道を通しても、やはり日本の報道というのは随分いい加減なものだな思いました。確かに作品が良かったかどうかは個々人でそれぞれなんでしょうけれど、例えば・・・

• 作品に関する観客の意見は批判的なものが圧倒的に多かった、
• 広告以外で米国のメディアで公演が取り上げらることがほとんどなかった、
• 公演後もほとんど批評・後記事が出ず、少ない批評も厳しい酷評ばかりであった、
• NYでの公演でありながら観客のほとんど(90%以上?)が日本人で占めらた、
• オフ・ブロードウェーと言いながらメディアも含めてアメリカ人には全く公演が知られていなかったようだ、
• かなりの数の無料招待券が日系社会でばら撒かれた、
• 現地の状況とは全く乖離した中で開催される、“芸能人”による公演はもう何年も前から現地日本人たちから嘲笑の対象となっている

などという状況があって、さらにそれ以上の裏話をメディアの人たちは仕入れているであろうに、目にする記事は、どこも右に倣えで「香取、NYブロードウェー初舞台は大成功!」の見出しばかり。

人の好みは色々ですから、あれは成功だった、と言う記事があっても良いのですが、これだけ公演に対して批判的でネガティブな意見が大勢を占め、それを裏付けるような事実や噂が溢れる状況にあって、どうして日本ではそういった論調の記事が全く書けないのでしょうか。まあ、芸能マスコミなんて所詮そんなものかもしれないし、TV局も含めて芸能マスコミも芸能界の一部であって馴れ合いや相互依存もあるだろうし、芸能界という隔絶された世界の中に身を置き続けると、一般の人たちの感覚が理解できない政治家と同様、外の世界の普通の感覚というのが見えなくなっているのかもしれませんね。

しかし、今回の公演の場合、そのプレゼンテーションの手法やその後の報道に大きな問題があったと思うし、そういう意味ではマスコミも制作者に加担したのですから、その罪は二重の意味で重いと思うのですが・・・・。

昨日、マイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画「This Is It」を遅ればせながら見てきました。見ながらふと、「Talk Like Singing」に関わった人たちには、是非この映画を見て欲しいなと思いました。ジャンルは若干違うものの、アメリカにおいてメジャーなエンターテイメントを提供する人たちのレベルの高さや細部に至る準備と徹底具合、さらに前半にバックダンサーのオーディションシーンがあるのですが、そのレベルの高さと競争の厳しさを目の当たりにして、彼我の違いを痛感できるのではないでしょうか。よもや同じ地平線で作品を作っているとは思えないのではないでしょうかね。


おまけ:
以下のブログで新潮が紹介していたサイトの記事が読めます。比較的平易な英語で書かれているので、簡単に読めると思います。ただこの記事、記者名が実名でなかったので不明ですが、僕は日本人書いたんじゃないかなと推測していますが・・・。

http://www.japanpress.info/archives/866




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2 コメント

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騒ぐのもばからしい? (とも)
2009-11-27 12:04:01
いつも読まさせていただいています。
なんだかこの舞台の件については騒ぐのも誉めるのも貶すのも狭い範囲の日本人だけのようですね。
キャストも通過点のひとつにしか思ってないし。
ブロードウェイミュージカルを崇拝してる私としては違うものと思って、こういう商売もありかと納得してます。
同じところで論じる必要性もないような。
東京公演も観客が喜んで満足ならいいかぐらいなんですけどこんなんじゃだめですかね。
そうですねえ・・・ (管理人)
2009-11-27 15:48:59
まあ、基本的には見た人しか反応のしようがないですからね。
それと他人の好みまでケチをつけるのは無理ですからね。
あと、基本的にはどうでもいいことでもあるのですけど、
ただ舞台芸術の世界で仕事する者として、ちょっとこれどうよ、と思うことは必要かなとも思いますけどねえ。