国際交流のススメ

舞台芸術・海外公演に関する情報をニューヨークから発信します。

Dorothy Strelsin Theater って

2009年09月01日 | NYの小劇場

http://www.abingdontheatre.org/rentals/dorothystrelsin.aspx


Dorothy Strelsin Theaterは、前回紹介したJune Havoc Theaterと同じAbingdon Theater Arts Complexが運営していて、場所も同じビルの1階にあります。観客の入り口こそ別々ですが、2つの劇場はバックステージが裏でつながっています。ここはアメリカに良くある、Black Box Theaterと呼ばれるスタイルで、June Havocのようなプロセニアムや固定の客席というものがありません。ですから、利用者は基本的には自由に舞台と観客の位置を決めることができます。写真は3面舞台になっていますが、1面だけに客席を設営することは可能です。

アメリカにはこのBlack Box Theaterと呼ばれるタイプの劇場が非常に多く、設定が自由なだけでなく、床から壁まで現状復帰できる限りどんな色に塗っても構わない、という劇場が多いのも特徴です。

ご存知の通り、NY(マンハッタン)は面積が小さく古いビルが多いのですが、劇場街と呼ばれるあたりにも、そういうビルが多くあります。そういうビルでは、各階に様々な劇場やスタジオ、制作事務所などが入る劇場ビル、というのも沢山あります。このJune HavocやDorothy Strelsinが入るビルも1階にこの2劇場があって、その上の階にも3つほど劇場があり、またスタジオなども同居しています。ですから、上階の場合は通常のオフィススペース分の高さしか天井がありませんが、この劇場は1階にあったため天井もそれなりに高く取れています。手入れも行き届いている(アメリカにしてはですが・・・)様子ですし、管理者と所属劇団の質の良さを感じさせます。

前にも書きましたが、マンハッタン西34丁目から57丁目は劇場街(Theater District)と呼ばれ、こういった劇場ビルに多数の小劇場が入居しています。この劇場街以外で、イーストビレッジやソーホーなどダウンタウンと呼ばれる地域にも小劇場が沢山あります。規模や設備はさほど変わりませんが、一般にダウンタウンの劇場は前衛的であったり、実験的であったりすることが多く、劇場街の劇場はストレートプレイが多い傾向にあるように思われます。それは、ブロードウェーを中心とするミッドタウンの劇場街と、ソーホー・ビレッジ地区を中心とするダウンタウンのコンテンポラリーなエリアの性格の違いと言えます。

余談ですが、マンハッタンは小さな島ですが、地区ごとに非常に住み分けがなされています。ミッドタウンではネクタイ・スーツのビジネスマンが多く、ダウンタウンではネクタイ・スーツ姿の人はまず存在せず、カジュアルでお洒落な若者が多くみられます。それぞれ趣味や仕事によって、遊ぶ場所やファッションも全く違うようです。




客席数は最大56席で、3面に客席を組んだ場合のアクティング・エリアは15フィートx13フィート(4.5mx3.9m)。床面は厚ベニヤ敷きで床から3インチ(7.5cm)上がっています。

照明グリッドまでの高さが11フィート9インチ(約3.5m)でパイプが約5フィート(150cm)間隔で入っています。

音響・照明機材は以下の通りです。

Lighting package includes fully computerized control board, 24 2.4 K dimmers (80 amp service available), SourceFour: 12 Ellipsoidal, 10 Par, 8 ParNell; plus 6 Fresnels. Instruments: Board: ETC 24/48 Express. Cable, two-fers, top hats, sidearms, gobo holders are included.

Sound system includes 2 CD playback. Speakers: 3 Turbo Sound TCS-30. Mixing board is a Mackie 1604.






June Havoc Theaterって

2009年08月31日 | NYの小劇場



今日はNYでレンタル可能な小劇場を紹介したいと思います。

その第1回目はJune Havoc Theaterです。マンハッタンの34丁目から57丁目の間、6アベニューから西側をシアター街(Theater District)と呼びますが、ブロードウェー・ミュージカルを上演するような大劇場以外にもJune Havoc Theaterのような小規模の劇場が多数存在しています。その殆どの劇場で客席数は99席以下に抑えられています。実はこの99席以下というのにはスペースの問題以外に大きな理由があります。

テクニカルスタッフにユニオンがあるように、役者にもActors Equity と呼ばれるユニオンがあります。Actors Equityでは、客席数と役者へのギャランティに一定のルールを定めています。例えば99席以下の劇場での公演はShowcaseと呼ばれるカテゴリーに入るのですが、このカテゴリーの場合、謝礼の最低保証が交通費程度で最も安く、これを超えますと、その最低額が何倍かに跳ね上がります。

またNYは土地が非常に狭いですから、元はオフィス・ビルだった建物の一室を改装して劇場としているところも多く、どうしても天井高も低くくなりがちです。また機材はどこも(日本に比べると)古くて、台数も少なく、メンテナンスの状態も良くありません。ただ、99席以下の場合、1週間のレンタルで$2000ぐらいからありますし、高い劇場でも$4500程度で借りられます。また床や壁も塗装できる劇場が殆どですから、そういった自由度も高くなります。

June Havoc Theaterは1週間$4200程度(2009年8月現在)から借りられますが、レジデント・カンパニーと呼ばれる劇場付の劇団が存在しており、スケジュールの中心は、そのレジデント・カンパニーの公演にあてがわれます。また同じスペースにDorothy Strelsin Theatreと呼ばれる56席の小さなブラックボックスタイプの劇場もあります。




以下、June Havoc Theaterの諸条件です。

・ 間口が20尺半(6m15) x 奥行きが17尺(5.1m)
・ プロセニアムの高さが約12尺半(3.8m)
・ 床面は厚ベニヤ貼りで舞台高が1尺(30cm)
・ 照明バトンまでの高さが約13尺半(5.25m)
・ バトンはだいたい1.2m-1.5m間隔
・ 4-6人用楽屋が2部屋
・ 2.4kディマーが48個
・ 照明機材はエリが38台、パーライト12台、パーネル14台、ミニストリップ3台
・ 音響機材は 2 CD playback. Stage: 4 Meyer UPM-1P, 1 Meyer UPM-1P subwoofer; House: 4 Turbo Sound TCS-30,. 2 QCS PLX-1104 amplifiers. Mixing board: Mackie 1604.