曖昧批評

調べないで書く適当な感想など

「刑事コロンボ 逆転の構図」を検証する

2014-02-13 22:59:50 | テレビ・映画
刑事コロンボの第27話「逆転の構図」のラストシーンについて、長年僕は疑問を持っていた。一見「おおっ」と思わせるキレのいい罠だが、よく考えるとおかしいんじゃないかと。


ネタバレするので未見のかたは回れ右したほうがいいです。



犯人はポール・ガレスコという著名な写真家。ダシュラーという前科者が誘拐したように見せかけて奥さんを殺し、口封じのためにダシュラーも殺害。


ラストシーンでコロンボは、誘拐犯が送ってきた写真(実際にはガレスコが撮影)に写っていた時計を拡大して複写。10時を指しているので、アリバイが成立しないと言う。


しかし、ガレスコは苦笑して、それはコロンボがネガを裏焼きしたから左右が逆になったのであり、実際の時刻はやはり2時だと指摘。 オリジナルを見ればわかると言って、棚からそのカメラを取った。


コロンボ「(部下の刑事に)君、今の彼の行動目撃したね?」

部下「はい。しました」

ガレスコ「何を目撃したって?」

部下「あんた自分で罪を認めたんですよ。カメラを確認したんです」

コロンボ「そう。ダシュラーさんのカメラ。あんたは、これも、これも、このカメラも手に取らなかった。(棚には他にもたくさんカメラがあるのに)どうして分かったんでしょうね」

しまった!!!
どのカメラで撮影したのかは、事件の状況的に犯人しか知り得ないのだ。無念ガレスコ。


で、それはいいんだが、少年時代の僕が引っかかったのは、現像したフィルムをカメラの中に残しておくことはない、ということだった。脚本の物凄いミスじゃね?

ポピュラーな35ミリフィルムだったら現像するためにパトローネからフィルムを引き出す。引き出されたフィルムをパトローネに戻すことは不可能だし、そんなことしない普通。ブローニーフィルムなど大きなサイズだとしても、現像してしまったフィルムをカメラに戻すことはないはずだ。

おかしい。

ずーっと気になってはいたのだが、あれはミスだ、失敗作を見直すなんて時間の無駄だと思って十数年が過ぎた。

しかし、最近になってこの作品が傑作であるといった文章をいくつか読んだ。俺が間違っていたのだろうか。そこまで言うなら見直してみるか。

というわけで、NHK BSで録画したやつを見直したのだった。

・ ・ ・ ・ ・

検証するとかタイトルに掲げておいてなんだが、結果はあっけなく出た。犯人が使用したカメラはポラロイドのような、撮影後にカメラからプリントされた写真が出てくるタイプだった。これだったら、確かにオリジナルの原版はカメラの中に残っている。話の前半、事件発覚直後に判明してしまった。


こんなに分かりやすく映してくれていたとは……。

コロンボは「あたしが直接指揮して間違いのないように」、誘拐犯が送ってきたポラロイドの写真を白黒のネガフィルムを入れた別のカメラで複写し、それを特大に引き伸ばしたという。僕はずっと、オリジナルのネガを引き延ばしたのだと記憶してしまっていた。実際には、複写したほうのネガを裏表逆にセットして引き伸ばしてしまったのだ。

ご丁寧に、複写したネガは塩酸に落として溶けてしまったことにして、もうオリジナルを見るしかない状況。

犯人は、写真の素人で小ばかにしているコロンボが直接やったと自信満々なので、ついうっかりドヤ顔でこのカメラの中のオリジナルを確認して見たまえ、と言ってしまったのだった。

観念してから、わざと裏焼きしたんだな、と犯人は見破るが、後の祭りであった。


ちなみに、高校時代に写真部で白黒フィルムの現像と引き伸ばしを毎日やってた僕に言わせると、裏焼きは結構多いミスだ。暗室は暗くて見えづらく、トレイにセットしてからどっち向きに現像機に差し込むのか悩む。引き延ばしレンズで像が逆向きになるんで、セットの方向自体が逆向きだったりするんだよね。たしかそのはずである。

ただ、焼く前に赤フィルターを通して印画紙の位置を決める時に気づくけどね。

というわけで、長年の僕の疑問は氷解し、あれはあれでOKなのだということにはなった。ポラロイド型のカメラだということは、劇中で何度かわかりやすく見せてるので、アンフェアでもない。

だが、犯人が使用したと思われる重要な手がかりなんだから、逆とか裏焼きとかそういう問題じゃなく、普通はすぐ鑑識が中の原版を調べるんじゃないか? フィルムはいつどこの店で買ったのかとか、他に何が写ってるかとか調べるでしょ。ということは、やっぱり、あの時点でカメラの中にオリジナルがあると考えるのは苦しいのではなかろうか。

うーむ。

見たばっかりのものをまた見るのは嫌なので、10年くらい経ったら、また見てみよう。今度は手掛かりのカメラを調べない合理的な理由が描かれているかどうかについて注意しながら。
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