知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的としないとされた事例

2012-02-05 22:39:07 | 特許法17条の2
事件番号 平成23(行ケ)10133
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成24年01月17日
裁判所名 知的財産高等裁判所  
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 中野哲弘

 そこで,甲6補正発明と本願補正発明とを対比すると,甲6補正発明では,通信機能の停止を維持しながら「時計機能」,「電話帳機能」,「マイクによる音声を電気信号に変換する機能」及び「スピーカによる電気信号を音声に変換する機能」を含む複数の機能それぞれを選択可能としているのに対し,本願補正発明では,通信機能の停止を維持しながら,上記「複数の機能」のうち「時計機能」及び「電話帳機能」のみをそれぞれ選択可能としたものであるから,本件補正により,通信機能の停止を維持しながら選択可能な機能の一部が削除されていると認められる。そして,その結果,本願補正発明では,「時計機能」及び「電話帳機能」以外の機能について,どの機能を通信機能の停止を維持しながら選択可能とするかは任意の事項とされることに補正されたといえる。
 そうすると,本件補正により,直列的に記載された発明特定事項の一部が削除され,特許請求の範囲の請求項1の記載が拡張されていることは明らかであるから,本件補正は特許請求の範囲を減縮するものとはいえず,「特許請求の範囲の限定的減縮」を目的とするものに該当するとは認められない
 また,本件補正は,誤記の訂正,明りょうでない記載の釈明を目的とするものにも該当しないことは明らかである。

 以上によれば,本件補正について,「平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。」とした審決の判断に誤りはない。

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