知財判決 徒然日誌

論理構成がわかりやすく踏み込んだ判決が続く知財高裁の判決を中心に、感想などをつづった備忘録。

異なる用語を相違点なしとした事例

2010-02-07 08:03:59 | Weblog
事件番号 平成21(行ケ)10136
事件名 審決取消請求事件
裁判年月日 平成22年01月28日
裁判所名 知的財産高等裁判所
権利種別 特許権
訴訟類型 行政訴訟
裁判長裁判官 飯村敏明

1 取消事由2(相違点アの認定の誤り)について
(1) 審決は,相違点アとして,「植栽容器が,特許発明1は,『凹型のセルを有するマットフレーム内に植物育成材を設けてなる植栽マット』であり,複数のそれらが,載置部としての『敷設面』に『敷き詰め』られているのに対し,甲2-1発明は,『凹型構造内に植物育成材を設けてなる植物育成材入りプランタ』であり,複数のそれらが載置部に『載置』されている点。」(審決書12頁17行~21行)と認定し,実質的に相違する理由として,次の2点を挙げる。
・・・

(3) 特許発明1の「敷き詰め」と甲2-1発明の「載置」が相違するとした点について
ア 特許発明1
(ア) 本件訂正明細書の記載
・・・
(イ) 「敷き詰め」の意義
 上記記載によれば,特許発明1において,「敷き詰め」の語は,隣接する植栽マット1の相互間に所用経路の給水管配設用空間部22を形成し得る隙間が存在する配置を含めた意味で用いられている。
・・・

イ 甲2-1発明
(ア) 引用例の記載
・・・
(イ) 「載置」の意義
 上記記載によれば,甲2-1には,従来の屋上,バルコニー等の緑化においては,植物の植えられたプランタ等を適当に配置することから,プランタも同時に見えることによって,美しい景観にすることが困難であるという問題点を解決するため,プランタより高い仕切部を設ける発明が記載されている。

ウ 小括
(ア) 以上のとおり,特許発明1においては,給水管配設用空間部22を形成し得るような「隙間」が存在する状態をも含めて,植栽マットを「敷き詰める」と記載されているのに対し,甲2-1発明においても,雑然としたイメージを排除して花壇のような美しい景観を造り出すように「載置」することが記載されている。特許発明1の「敷き詰め」と,甲2-1発明のプランタの「載置」との間に,格別の相違は存在しない
 なお,審決は,特許発明1には,「容易且つ短時間に敷設等を行うことができるという甲2-1発明にはない新たな作用効果を奏する」(審決書13頁5行,6行)とするが,甲2-1発明の「載置」と特許発明1の「敷き詰め」とにおいて,相違がない以上,特許発明1に「敷き詰め」ることに伴う格別の作用効果は存在しない。

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