みかん日記

省農薬ミカン園の様子や農薬ゼミの活動内容を伝えます。

京都市中央卸売市場第一市場見学

2016-02-10 16:38:25 | 告知

皆様、あけましておめでとうございます。
だいぶ日にちが空いてしまいましたが、先日、1月15日に京都市中央卸売市場第一市場の見学に行ってきました。今回は参加者の感想・メモをまとめる形で見学の報告をしたいと思います。

今回参加したのはゼミ員6人と有志5人の合わせて11人。朝5時に市民研を出発し、市場業務課の西村さん、同じく業務課でゼミOBでもある松重さんと丹波口駅で合流し、ご両名の案内のもと柑橘の競りの見学が始まりました。



競り場の階段に上がらせてもらい、上から競り場を見渡す形で競りを拝見します。



競り場にブザーが響き渡り、午前6時きっかりに競りが開始。始まると同時に何やら意味不明な声が聞こえてきました。そう、これは競り人の声。競りでは、競り人・記憶人・仲卸への運搬係と役割分担がなされており、競り人は大勢の買い手が指で合図した買値を瞬時に見極めて売買を成立させなくてはなりません。これには熟練の技術が必要であり、競り人だけでなく、補助競り参加人と呼ばれる買い手の双方に資格が要ります。競り場での経験を3年以上積むことで試験を受ける権利が得られ、それに合格することで晴れて競りに参加する資格を得ることができるのです。



上手な競りにはスピードが重要。競り人が買値を瞬時に判別し買い手が間髪入れず高値を提示していく。そのテンポが速ければ速いほど、商品に良い値段がつくのです。後で説明しますが、みかんは「個選」という売買方式を多く取っているために競りにかけられる品目が他の果物に比べ非常に多く、常に威勢の良い掛け声が飛び交っていました。

競りの様子( you tube に飛びます)



OBの松重さんが作ってくださった資料によると、平成26年度の京都市場のみかんの取引は、ハウス栽培みかんを除くと極早生・早生・普通みかんすべて和歌山からのものが飛び抜けて多く、次いで多いのは愛媛・静岡ではなく福岡産。やはり新興の愛媛みかんなどは入る隙がなく、関東の市場に出回るようです。



みかんの評価基準は、味・形・大きさ・糖度など。50番を最高として番号でランクづけされたり、赤秀→青秀→優の順に等級が割り振られます。今回見せていただいた中では、5kg で 7000 円のみかんが最も高額なものでした。また、箱の蓋が空いていないものは、信頼されているものだそう。農薬ゼミのみかん園がある下津産のみかんも見受けられました。







次に、野菜の競り場にやってきました。野菜は移動競り。競りにかける品物を順々に回り、買い手が品定めをしていきます。どの商品を競りをしているかわかるように棒を立てて知らせます。



中央卸売市場とは地方公共団体が農林水産大臣の許可をもらって設けた市場のことで、都市部に生鮮食品を円滑に流通させる目的でつくられました。競りにかけられる品目は年間で300。競りにかける方式は個人農家単位の「個選」と、JA など複数人で集まっての「共選」に分かれます。
市場に持ち込まれた品は全て売りきる取り決めとなっていますが、扱う野菜の量は年々減っているといいます。これはイオンなどの大型スーパーが進出したことで、全量競りだったものの多くが市場を介さない相対取引に変わったことが原因。遠方に商品を持っていくとなると前日の夜にトラックを出さないと間に合わないので相対取引にならざるを得ないのです。今では競りで取引されるのは全体の約15%にまで減っています。また、以前は仕入れた物をどれだけ高値で売るかが商店の腕の見せ所でしたが、悲しいかな大型量販店が出現してからは、売値ありきでどれだけ安値で仕入れるかというスタンスに変わってしまったようです。



京都市中央卸売市場の特徴の1つとして、京滋野菜専用の売り場を持つ点が挙げられます。このような地域に特化した売り場を持つのは、日本で初めて設置されたこの京都市場だけ。京野菜のブランド化にも大きな影響を与えたようです。
ブランド化には生産者と卸売業者との信頼と連携が必要です。以前では鳴門金時の成功例のように卸売業者が地域の産地育成事業も担っていましたが、現在では一日中商品の管理に追われるため、そこまで手が行き届かないようです。



みかんの競り場に戻ると、競りを終えたばかりの京都青果の向瀬さんにお話を伺うことができました。
減農薬や有機栽培の野菜は京都市場で扱われているのか、と質問したところ、そのように育てられた野菜は非常に少ないとのことでした。中央卸売市場は公的な機関であるため、有機農産物の場合だと3年以上農薬・化学肥料を使用していないことの証明が必要で、これには時間の面でも費用の面でも非常に手間がかかるため、生産者が一歩踏み出せないのが現状のようです。なので、有機野菜は生産者と小売店・消費者との信頼関係のもとで売買されるのが主であり、そのため集荷が安定せず、有機栽培作物だけを扱うような市場をつくることは難しくなっているのです。



それでも、京都市場でも扱われている岩手県の林檎は、農薬を減らし表示もきっちりされているらしく、農水省主導のエコーファーマー制度も次第に浸透しているようです。
また、原発事故以来、福島のあんぽ柿は出荷されていませんでしたが、今年になってようやく再開されました。放射能量が50ベクレル以上だと全量廃棄になる決まりや放射能量基準値以下である証明を QR コードで確認できる取り組みがされています。



お話の後は競り場のすぐ外に軒を連ねる仲卸店の中を練り歩きました。仲卸店では個人も買うことができるみたいで、近所の方がママチャリで買いに来る姿も見られました。しかし残念なことに、これらの店舗も減りつつあるようです。
最後は水産物の仲卸店街で朝食を摂り、帰宅しました。



今回の市場見学により、やはり市場では有機栽培作物が入り込むのは難しい現状だと分かりました。農薬ゼミとしてはこれからも市場の動向に注意しながらも、生産者の仲田さんと消費者のみなさんの仲介役として信頼を築けるよう邁進する所存です。今回お世話になった市場の職員や警備員の皆さん、本当にありがとうございました。

ふじい

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