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NHK受信料について ~法的根拠があるか?~

2005年08月19日 | 政治・社会

前々から納得いかないなと思っていたのですが、他の公共料金は、元栓とメータがついていますよね。従って料金を払わなければ利用を停止する事が出来るし、使ったか使わないかがわかるので、利用者の納得も得られます。しかし、NHK受信料にはそその元栓やメータに相当するものがありません。課金して良いかどうかの証拠が全く残らないのです。でも、「法律で決まっているから」と約8割の世帯で支払いに応じているのが実情です。

ここでいう「法律」とは放送法第三十二条で、条文は下記の通りです。

放送法 第32条
1.協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない。ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送(音声その他の音響を送る放送であって、テレビジョン放送及び多重放送に該当しないものをいう。)若しくは多重放送に限り受信することのできる受信設備のみを設置した者については、この限りではない。

しかし、良く見ると「ただし」以降の条件が満たされれば、契約をしなくて良いみたいです。この点に光をあてて、実は契約には法的根拠がないことをこちらのサイトでは指摘しています。

http://friendly.blog5.fc2.com/blog-entry-3.html

このサイトは、放送法や国会答弁などを丹念に調査し、実はNHKの受信料支払いには法的根拠がないことを立証しています。そして、本当に不公平感のない課金形態にするのならばNHK放送にスクランブルをかけるべきである、との持論を展開しています。

不公平感をなくす課金形態が必須であること、それには放送のスクランブル化が有効であること、については私も賛同します。法的根拠がないので支払う必要がないというところも賛同、と言いたいところですが、その論理展開で疑問なところがありましたので、私のブログでも検証させてもらいます。

受信料の支払いは義務ではないhttp://friendly.blog5.fc2.com/blog-entry-3.html


93-参-逓信委員会-1号 昭和55年10月21日

昭和55年10月21日に開催された参議院逓信委員会において、中村鋭一委員の「受信料義務化」に関する質問に対して、当時の郵政省電波監理局長田中眞三郎氏が「、NHKの受信を目的としないもの及びラジオについては免除するわけでございますけれども、」と答弁しています。

その詳細なやり取りは、


○中村鋭一委員
法的に変わりがなくって、しかし、その本音は要するに受信料をちゃんときっちり取りたい。いわゆる不良な契約者を追放して受信料が的確に入るようにしたい。そのためにもNHKは受信料の支払いを怠った者から年率一四・五%の延滞金を徴収できるものとするほか云々とありますし、そういうふうな割り増し金等もあって罰則規定も設けられているようでございますけれど、要するにNHKの受信料をテレビセットのある人からは一個残らず正確に徴収したい、それが放送法改正案の目的であったわけですか。

○政府委員(田中眞三郎君)
お答えいたします。特定な受信を、NHKの受信を目的としないもの及びラジオについては免除するわけでございますけれども、いまの現在の規定では契約ということになっておりますので、非常に性格がただ聞きましたときに不明確である、それを明確に言いあらわすことによりましてNHKの財政の基礎を確立いたしたいという趣旨でございます。

【解説】
この答弁は、現行放送法32条の条文にある「ただし、放送の受信を目的としない受信設備又はラジオ放送は・・・(中略)・・・この限りではない。」の”放送の受信を目的としない”との表現が、具体的には「NHKの受信を目的としないもの」だと明確に規定しており、テレビが受信できる状態で、テレビ受信機を所有しいるだけでは、NHKの受信料の徴収対象にならない事を明確に定めている。即ち、NHKが受信料を徴収できるのは、あくまでNHKの受信を目的として、NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者に限定されることになるのは明白である。

この論理展開について下記2点で違和感を覚えました。

(疑問1)田中眞三郎氏の答弁の意味が日本語として意味不明
(疑問2)「NHKの受信を目的としない受信装置」、目的としていないのは「視聴者」か「受信装置」か?

まず(疑問1)について答弁の意味を分解し、日本語として理解できる形にしてゆきましょう。

お答えいたします。特定な受信を、NHKの受信を目的としないもの及びラジオについては免除するわけでございますけれども、

・「特定な受信」とは何のことでしょうか。またどこにかかる言葉なのでしょうか?
・「免除するわけでございます」とありますが、誰が、何を免除すると言いたかったのでしょうか?
上記2点がわからないので、解釈が出来ません。多分放送法三十二条の例外規程のことを単に補足的に言っているだけとは思うので、ここではとりあえずそのように解釈し「特定の受信」との言葉は、「えーっと」とか「あのー」という言葉だと思って無視することとします(笑)。

いまの現在の規定では契約ということになっておりますので、非常に性格がただ聞きましたときに不明確である、

んー、非常に解釈が難しいですね。もちろん口頭での発言をそのまま残しているだけなのでしょうがないのかもしれませんが。

ここで田中氏が言いたかったのは
「放送法三十二条では『協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない』と書いてありますが、受信者とNHKとの間の『契約』という意味がわかりにくい」
ということだったのでしょうか。

それを明確に言いあらわすことによりましてNHKの財政の基礎を確立いたしたいという趣旨でございます。

ここは理解可能。

これらをかけ合わせると中村氏の「テレビ1台ごとに課金をすることが放送法改正の目的なのか?」との質問に対し、田中氏の答弁は下記の通りと解釈できます。

放送法32条では『協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者は、協会とその放送の受信についての契約をしなければならない』と書いてあります。(ただしNHKの受信を目的としない受信装置及びラジオについては例外です)。しかし、受信者とNHKとの間の『契約』という意味がわかりにくい、それを明確に言いあらわすことによりましてNHKの財政の基礎を確立いたしたいという趣旨でございます。

理解できるようになった結果、実はこれは質問の答えになっていない事がわかりました(笑)。さすがお役人です。

(疑問1)の意味がだいたいわかりました。「特定の受信」とは何のことかは相変わらず良く分かりませんが、とりあえずは「放送の受信を目的としない」=「NHKの受信を目的としない受信装置」と解釈しても良さそうです。

 

では、ここで(疑問2)放送の受信を目的としない受信設備、とは誰が何を目的としていないのか?という点の検証を進めます。

私はこの文章を2通りに解釈しました。

解釈1: 「受信者が」NHK放送の受信を目的としない「で設置した」受信設備
 この場合、受信を目的としていないのは受信者です。受信設備がNHK放送の受信能力を有していているかどうかは関係ありません。

解釈2: NHK放送の受信を目的としない「で製造された」受信設備
 この場合、受信設備がNHK放送の受信能力を有していないと解釈できます。

解釈1ならば、受信者がNHK放送を見たくないと思っている場合契約の必要がないですが、解釈2ならばNHKの放送が受信できないテレビを購入しない限り契約の必要性が出てきます。

これまで国会でも散々この問題について議論しているようです。やはり答弁は解釈2ですね。下記の引用1では、放送法第三十二条の例外規程は、トランシーバみたいな物がたまたまNHKのラジオ放送を拾っても受信料の対象外、という意味であるといっています。また、引用2は昭和27年当時、引用3は平成17年(今年)と53年の隔たりがある答弁を比較しました。どちらにしても、政府の答弁はNHKを聞く聞かないに関わらず受信料を支払う、という解釈に立っております。(余談ですが、50年も今も大衆の考える事にほとんど差がないことに驚きました。昭和27年といえば主権回復という歴史的な年なんですけどね。)

以上見てきた通り、(疑問2)について少なくとも政府としては「解釈2」、すなわち受信設備がNHK放送の受信能力を有しているならば、課金する義務がある、という見解になっています。

=== 引用1 ===
30 - 衆 - 逓信委員会 - 3号
昭和33年10月17日

○小沢(貞)委員 今御説明をいろいろお聞きいたしましたが、それは三十二条の前段の方で、後段の方は「放送の受信を目的としない受信設備を設置した者については、この限りでない。」これに該当しませんか。それともう一つは、第二項はあらかじめ郵政大臣の認可を受けた者ならよろしい、こういうことなんです。だから郵政大臣がその基準か何かを認可さえすれば取らないでいいという道が開けるのではないですか、そのことを聞いているのです。

○莊説明員 失礼いたしました。三十二条の第一項のただし書きでございますが、「但し、放送の受信を目的としない受信設備を設置した者については、この限りでない。」こういう受信設備とはどういうものかという点につきましては、こういうものでございます。すなわち、通信用の受信機などというものがございます。たとえば船でもって、ラジオを聞くためでなくて、もっぱら通信のために受信機を持っておる。しかしその受信機の性能として、目的は通信なのであるけれども、たまたまラジオの部分も入ってくることがあるというようなもの、こういうようなもりのがただし書きに該当するものと解釈いたしております。(略)

=== 引用2 ===
15 - 衆 - 電気通信委員会 - 4号
昭和27年12月05日

○寺島委員 (略)ラジオの場合でございますと、確かに放送法第三十二条の規定に掲げている通り、わが輩は文化放送とラジオ東京だけをエンジヨイしておつて、断じてNHKだけは聞かないのであると力説してみたところで、絶対にNHKを聞かないという反証は上つて来ない。ダイヤルをまわせばNHKの方が入つて来るから、聞いたものとして放送料は払うという理論的根拠が辛うじて苦しくとも成り立つが、テレビの方はそうは行かない。そもそもわが輩は銭をとられて二百円も出してテレビジヨンを見る気はないのだ、NHKの方だけはやめて日本テレビだけを聞くのだというような、機械を固定したような場合といえども、放送法を準用して料金を取立てることになつて来ると、勢いテレビジヨンのあるところ、われわれは日本テレビだけを聞かんと欲するけれども、全部金を払わなければならなぬことになる。いかに郵政省のお上の経営のもとでやられるとしても、妥当なものとしてお金が取立てられるものかどうか。必ず不払い問題が出て来ると思います。これがお考えになつていただきたい一つの点なのであります。
(略)

○高瀬国務大臣 私の解釈では、放送法等によりまして、テレビの方におきましても、この前の改正によりまして、やはりラジオと同じ取扱いができるものと解釈をいたしております。従いまして、ラジオについて放送協会のものは聞かないということでもつて別に扱つて、聴取料をとらないということが技術的にできないと同じような事実は、どうしても起らざるを得ないと考えておりまして、それはラジオについて認められると同じようにテレビジヨンについても認められるべきであろう、こういう解釈であります。

=== 引用3 ===
162 - 参 - 総務委員会 - 10号
平成17年03月31日

○内藤正光君 
(略)
 言うまでもなく、公共放送の受信料制度は昭和二十五年に制定をされました。当時の状況を振り返ってみますと、視聴者も限られていた、そして放送局の数もそんなにあるわけではなかった。そういった状況の中で、私は受信料は、その制度は一定の合理性があったんだろうと思います。しかし、今や多チャンネル、つまりNHKを見ないという人は多いんですね。そしてまた、ペイ・パー・ビュー、有料放送もどんどんどんどん増え続けています。
 そういった状況が変化している中で、私は、NHKも、法律で決まっているからとあぐらをかくんじゃなくて、改めて国民に対して、何ですべての人に払ってもらわなきゃいけないのか、これをしっかり理解をしてもらうべく説明をする必要があるんだと思います。
 私も、実は先日、NHKのホームページ見ました。そして、こういうふうに書いてあります、「なんで受信料を払うの」と。その答えの中に、冒頭こう書いてあるんです。「放送法第三十二条第一項には「NHKの放送を受信できる受信機を設置した者は、NHKと受信契約をしなければならない」と定められています。したがって、テレビをお備えであればNHKを見る見ないにかかわらず、受信料をお支払いいただくことになります。」と、こう冒頭に書いてあるんです。私は、これはとてもじゃないが、納得しろと言っても難しいんだろうと思います。
 ですから、私は改めて委員長にお尋ねしたいのは、なぜNHKを見ていないという人まで受信料を払わなければならないのか、逆の問い方をしたならば、NHKを見ていないという人をも含め、NHKは一体我々国民に何を提供してくれているのか、それをお答えいただきたいと思います。

○参考人(石原邦夫君) ただいま先生御指摘のように、現行の受信料制度でございますけれども、NHKが受信設備を設置した、法律上は者と書いてあります、設置した方ですね、と受信契約を締結する、その契約に従って受信料をお支払いいただく、こういう仕組みとなっているわけでございまして、先生御指摘のように、実際にNHKの番組を見た見ないということは要件となっておりません。当時の状況といたしまして、技術的にそういったことが難しかった、これも現在もそうでございますけれども、そういったような問題もあろうかと存じます。
(略)

以上の議論からは、テレビを持っていてもNHKを見ないならば受信料を払わなくて良い、という結論を導き出す事は出来ませんでした。この主張に基づいて不払いをした場合、契約の義務を怠ったと見なされるのでNHKから民事訴訟にもちこまれる可能性もあります(政府答弁もそのような見解のようです)。ただし何十万と不払い者がいる中で、訴訟を起こすのは費用や手間の面で現実的ではないのと、あまりに強権的な態度に映り、却ってNHKに対する風当たりが強くなる事も予想されるので、当面は訴訟に持ち込まれる事はないものと思われます。

x x x

スクランブル化などで見たい人だけが受信料を支払うようにすれば良いとの意見について、政府の主張とその問題点については今調べているところです。後日調査結果をレポートしたいと思います。

 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (とおりすがりのムーミン)
2006-12-19 21:16:02
NHKは、最悪の組織に成り果てた。

これまでNHKは、「払わない人がいると、払う人が不公平と感じる」と言ってきました。
しかし、本日の会長の発言を聞くと、何ともおかしい。
『受信料引き下げの可能性は無い。チャンネル削減は無い』
…義務化・罰則化を目指し、「どんなに日々の生活に大変な世帯からも罰則付きで取り立てる」道を選んだ。しかし、受信料を下げる気は全くないらしい。
(職員平均年収・福利1600万円以上、天下り、韓国ドラマ、ゴルフ、大リーグ、ギャンブル競馬。高い公共性と関係ない無駄があまりにも多すぎる!)

「まじめに払っている人のため」は「見せかけ、言い訳」
「どんなにささやかに生活している家」があろうとも取立て、「値下げはしない」
あまりに馬鹿にしている行為だとは思いませんか?
ttp://www.nikkei.co.jp/news/sangyo/20061219AT1D150BD18122006.html
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「NHKの受信料」について (ゲスト (T・K))
2008-04-05 16:15:38
NHKには一銭たりとも払いたくないので、メーカーが、テレビにNHK受信拒否設定なるものを作ってくれないものかと いつも思っております。もちろん不正防止のため一度設定したものは変更不可にする必要があると思います。それが無理なら やはり衛星放送などと同様に、見たい人のための有料アンテナもしくはチューナーを販売してゆくべきだと思います。
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