恒例の週一の買い出し。
会津地域の天候は曇りのち雨となっていたが、午前9時ごろは青空の中に眩しい陽が差し込んでいた。
山間地域の奥会津
の天候を読むことは非常に難しく、ここのところの天気予報もあてになってはいなかった。
よって、布団を干したまま出かけたのであった…
今日は金山(カネヤマ)町の沼沢湖へと向かう道中の集落を散策、この辺りの標高は500mくらいであり、カルデラの涼しい風とともに鳥の鳴き声が聞こえていた。
「おめえ、東京から来ただか?、そりゃあ大変だあな。」…金山町の特産品『金山・赤かぼちゃ』の畑を眺めながら、おばあちゃんは話す。
「500円で買ってきた赤かぼちゃの種を、台所の流しに置いておいたらネズミに喰われちまっただ。
赤かぼちゃの交配は蜂がやるんだが、近くにあった普通のかぼちゃと交配させちまったりして大変だあ。(笑)
高地
で作っているから甘味も強くホクホクして旨くてな、『まだ出来ねえだか…?
』と、電話が来るほど人気なんだあよ。」
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フォトフレンド for マイポケット
「この辺りさ熊が出るんだ、2年前だったかなあ…オラがワラビ
を採っていたら、熊の親子に出くわしただ。
母熊はそのまま山さ登って行っちまったが、小熊はそりゃあ愛(メゴ)かったぞ、縫いぐるみみてえだった…オラに近づいてきたが、ワラビを投げたら行っちまった。(笑)」
「昔は家に鍵を掛ける事なんて無かっただが、今は鍵を掛けねえと怖くて眠れねえ
…特に、夜に車が通ると怖ええだよ、飛ばして通り過ぎるならいいんだが、ゆっくり走ってくるだよ。
」
俺「それは山菜泥棒
ではないでしょうか…?、私も『根こそぎ奪っていく栃木ナンバーの山菜盗り。
』の傍若無人な振る舞いには、怒りを感じております。」
「んだ、栃木の連中は本当にひでえ…看板に禁止と書いてあろうが持って行っちまうだ、楽しみにしていた山ブドウの皮まで剥いでいって、もう採れなくなっちまったあよ。
でもな、会津にも悪いのがおるだ…ある時、『ワラビ
を少し採っても良いですか?』と聞いてきただから、オラたちは『どうぞ、持ってってくんつえ。』と言って分けてやっただ。
それから一週間も続けてやって来ただよ!、そこでオラたちは『ワナ(自分)だけで、そんなに食いきれるはずがない…、いったい何をしてるだ?』と問い詰めただ。
そうしたらな、『郡山で転売
していました。』と言うだ…だから皆怒って『もう二度と来るでねえぞ!』と怒鳴りつけてやった。
ところがまたやって来ただで、追っかけただが凄い速さで逃げてっただよ。
(笑)、仕事は学校の先生だっていうだ。」
俺「そのように恩を仇で返す卑劣な馬鹿者が、子供たちに教えている立場だとは…世も末ですね。」
「んだ…ここも昔は30軒近い家があって子供も沢山居ただが…昔はワラビの収穫祭
みたいなのがあってな、2~300人もの人が集まってそりゃあ賑やかだった…もう一度…。」
そう言ったおばあちゃんの眼差し…その遠い目を見ていると、いたたまれない気分になるのだった。
「ここでは、皆で支えあわなければ生きていくのは難しいだ…隣の家
の玄関から返事がないような時は、皆で何とかするだよ。」
俺「お互いに助け合い、支えあって生きていく…それこそが人間の絆とも言うべきものではないでしょうか、この地域に私が惹かれるのも、そういったものなのかも知れません…。」
「んだ…ここではな、困っている人たちを見捨てるような事は絶対にねえだ、田舎
の良いところはそこだあよ。」
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2時間ほどの散策を終え、宮下ダムを経て国道252に合流。
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買い出しを終えて帰路につく…雲行きに不安を感じて急いだのであるが、30分ばかり遅かった。
激しい雷雨
が、無防備の我が布団をすでにメッタ打ちにしており、その光景を車の中から成す術無く見ているしかなかった。
被害は甚大だ、極めて甚大だ…当分は3シーズン用のシュラフで寝るよ。