リバーリバイバル研究所

川と生き物、そして人間生活との折り合いを研究しています。サツキマス研究会・リュウキュウアユ研究会

アユからナマズ(アメリカナマズ)の病原菌

2008-02-16 20:50:32 | 異人録 外来生物を巡って
農水省 関連頁

エドワジエラ・イクタルリ  PDF版



★テキスト版

平成20年2月15日
都道府県水産主務部長殿
農林水産省消費・安全局
畜水産安全管理課長

エドワジエラ・イクタルリによるアユの感染症に関する調査及び注意喚起について
水産防疫について、常日頃より種々御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、昨年8月から10月にかけ、我が国の数河川で採取されたアユの病魚について、関係機関により原因菌の分離・同定等を行っていたところ、
Edwardsiella ictaluri であるとほぼ同定されました。

我が国におけるE. ictaluri による疾病発生、及びアユでの発症は初めての確認となります。
 (本件は、本年3月27日より開催予定の平成20年度日本水産学会春季大会にて、
広島大学と(独)水産総合研究センター養殖研究所の共同により発表される予定。)

E. ictaluri は、「アメリカナマズの腸敗血症(Enteric septicemia of catfish)」の原因菌とされており、東南アジアのナマズ病魚から分離され世界的にまん延していると判断されたため、2005年にOIEリスト疾病から削除されたものです。今回アユ病魚より分離された菌は、感染実験により、我が国のナマズ及びアユに対し病原性を示すことが判明しました。 
 各都道府県におかれましては、これまで実施している「アユ冷水病防疫に関する指針(平成16年3月アユ冷水病対策協議会作成)」に基づく保菌検査等の際に併せて、下記のとおり保菌検査等の実施及び関係養殖場、漁協等へ指導を行って頂きますようお願いします。
また、文献によると、ニジマスについてもE. ictaluri による自然発症事例(海外にて1例)
が報告されていることから、念のためニジマス養殖業者についても、周知いただきますよう、併せてお願いします。


1.昨年、本疾病の特徴を示したアユ及びニジマスの有無を確認してください。その際、
類似症例があった場合は、発生河川、時期、被害状況、当該魚の由来等について、
2月25日(月)までに当課水産安全室へご報告願います(様式自由)。
2.冷水病菌の保菌検査に併せて、別紙指針に基づき放流用種苗の保菌検査を行い、保
菌アユの放流は控えるよう指導してください。




(別紙)
アユのEdwardsiella ictaluri 感染症(仮)に係る暫定病性鑑定指針
(1)疫学調査
①宿主域:自然発症は、ナマズ類、アユ、ニジマス、danio(Danio devario)、
green knife fish(Eigemannia virens)、rusy barb(Puntius nigrofasciatus)。実
験感染では、ヨーロッパナマズ(Silurus granis)、マスノスケ、ブルー
テラピア(Oreochromis aureus)、ゼブラフィッシュへの感染が報告され
ている。
②発生地域:北米、タイ、ベトナム、インドネシア、トルコ
③夏期の高水温期(20 ℃以上)に発生しやすい。
④アユ由来E. ictaluri は、37 ℃では増殖しないことが確認されている。
(2)臨床検査
①顕著な外部症状に乏しい。
②体表及び肛門部に発赤が認められることがある。
③腹部膨満、眼球突出が認められることがある。
(3)剖検所見
①血液の混じった腹水の貯留が認められることが多い。
②臓器スタンプの染色標本で短桿菌が認められる。
(4)診断法
① SS 寒天培地により腎臓から菌分離を行い、25 ℃で培養する。円形・
透明・表面平滑・辺縁平滑なコロニー、及びコロニー周辺の培地の色
が黄色に変化していることを確認する。
②グラム鑑別陰性、チトクローム・オキシダーゼ陰性を確認する。
③ SIM 培地に接種し、硫化水素非産生、インドール非産生及び運動性
については、接種後少なくとも48 時間は静観し陽性となることを確
認する。
(5)保菌検査
①無菌的に腎臓を取り出し、ホモジネイトまたは細切。
② TSB 培地に投入し、25 ℃で一晩培養する。
③以下のエドワジエラ属特異的PCR によりエドワジエラ属細菌の存在
を確認する。
材料;培養したTSB 培地の一部を100 ℃で5 分間熱処理し、PCR 検査
材料とする。
プライマー;
Eta 21 :TCG GGC CTC ATG CCA TCA GAT GAA
Eta2-490r:TTC TGT AGG TAA CGT CAA TTG TGA
増幅産物サイズ;288bp
反応;最初に94 ℃で2 分間、続いて94 ℃で30 秒間、55 ℃で30 秒
間、72 ℃で1 分間を40 サイクル、最後に72 ℃で5 分間。
④ PCR を実施すると同時にSS 寒天培地により菌を分離し、上記のコロ
ニー性状と生化学的性状を確認する。この時、TSB 培地に明らかな菌
の増殖が認められるときは1 白金耳を、菌の増殖が認められないとき
は0.1ml を寒天培地に広げる。


アユからナマズの病原菌検出=農水省 (時事通信) - goo ニュース

★テキスト版
アユからナマズの病原菌検出=農水省
2008年2月15日(金)22:25

* 時事通信

 農水省は15日、アユからナマズの病原菌として知られている「エドワジエラ・イクタルリ」が検出されたと発表した。日本で菌が見つかったのは初めて。同省は感染拡大を防ぐため、各都道府県に放流前のアユなどの実態調査と注意喚起を呼び掛ける文書を出した。

 病原菌が検出されたのは、東京、広島と山口の3都県。山口では感染により約1400匹死んだ。人間への健康被害は考えられないという。菌は水温が20度以上になると発生しやすいとされる。 
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6 コメント

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うげぇ (とくだ)
2008-02-16 22:40:09
やめて欲しいなぁ、これ以上の病気は…。冷水病だけで、十分に痛めつけられているのに。
いつか来るだろうと思ってたけれど、予想以上に早かったです。エドワジエラ・イクタルリとは何とも憶え難い名前です。
返信する
うへぇ (ナカニシ)
2008-02-17 12:14:42
人手は無いのに検査の仕事が確実に増えます。
診断キットをそろえなくちゃいけないけど、予算は増えるわけではないから・・・。
というのは自分の都合。
病名はおそらく「アユ(の)エドワジエラ症」などに定着すると思います。
しかし、初夏の冷水病と夏~秋の新疾病で、とどめをさされないように祈るばかりです。
返信する
アユだけではない (ニイムラ)
2008-02-18 18:52:28
気がかりなのは、アユだけに感染するわけではないことだよな。
 また、魚種による反応の程度もよく判らない。そして見つかった場所が心配だ。広島と関東というのはどういうことだろう。
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ですね (とくだ)
2008-02-19 09:31:55
ニジマスとマスノスケで感染するのなら、ヤマメだって危ないですよねぇ。冷水病のときも、感染力と毒性はだんだんと強くなっていったので、こいつもたぶん変化するように思います。養魚業者は、一昨年当たりから夏場の成長がおかしいといっていましたので、見つかったのが昨年というだけで、数年前から徐々に広がっていたのじゃないかなぁ。
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更に (とくだ)
2008-02-19 10:24:55
今回の水温が高い環境で活性の高い菌の台頭は、冷水病の温度処理と関係しているような気がします。

冷水病の温度処理は、水温25~27度で飼育するのですが、その中で冷水病菌が減少して、他の菌が増えやすい環境を与えたような気がします。

やっぱり、人間が悪いよなぁ…。
返信する
出口がみえない (ナカニシ)
2008-02-19 22:06:54
こんばんは。
魚種別の攻撃性については、きっと今後の研究で明らかになるでしょう。またより簡便な診断法や薬剤の研究や使用認可についての研究もスタートするでしょう(きっと、たぶん!)。
3都県以外やこれより以前の発生についても、可能性は十分あると思います。

診断法があっても、使える薬が無い、放流をとりやめるわけにはいかない・・・。
一時の流行病であることを祈ることと、疑いのある種苗は下流側に放流・・・しかないのか。
返信する

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