白寿を目指す抗衰老ライフへの誘い

慣れ親しんだ新容器野菜養液栽培に別れを告げ、新たに取組んだ老人の終末課題の経過発信を続けさせて頂きます。

根圏(Rhizosphere)は農業科学の最後の未開拓領域?

2010年11月12日 | 土壌

 

新プランター栽培の培地は、「珪藻殻由来の微細な通導孔間隙が根圏付着微生物の担体となって、培地内の有機物が根系分泌物のみの清潔な根圏環境が得られ、依って、病原性発現が抑止される自然の根圏の微生物と共存する栽培作物にとって、最も好ましい根環境が得られます」と申しました。 

 

実は、其の根圏Rhizosphere)効果でしょうか、新プラター栽培では、均衡培養液を給液するのですが、掛け流しでもないのにpH管理が全く必要無い事が解ったのです。

 

―新プランター栽培の絹さやえんどうの1本の根量と形成されたバクテリア根粒ー

 

ご存知のように、植物は栄養塩類をイオンの形で摂取します。しかし、植物は必ずしも陽イオンと陰イオンをバランスして摂取する訳でもありませんし、水と養分を均等に吸収するとは限りませんから、養液栽培では、培養液の養分イオンの濃縮か低下のどちらかが発生します。又、化学平衡原理に従って水素イオン濃度(pH)も当然、変化します。それで、培地に緩衝能を持たない養液栽培では、培養液の成分組成と栽培植物に最適な範囲のpHを維持させることが必須の管理課題となります。

 

 

―養液栽培の培養液管理システム図―養液栽培研究会イラストよりー 

 

しかし、新プラター栽培は、其の必要が全くありません。一方、施肥方法の異なる土壌栽培では、僅か1-2mm足らずの範囲の毛細根に囲まれた根圏に住み着く微生物と植物根の共生活動が、根圏効果として植物の栄養生理と生長の重要な鍵を握っていると言うのです。

 

其の根圏が、近年、先に紹介した土壌生物学(Soil Biology)分野を含めて、農業科学の最後の未開拓領域として、内外の研究者の高い関心を集めているようです。

 

根圏(Rhizosphere)と言う用語を最初に命名し導入したのは、100年以上前の1904年、ドイツの科学者のLorenz Hiltnerであり、ミュンヘンのBavarian Institute of Plant growth and Plant Protectionの創立以来所長を1902年から1923年まで務められ、其処での研究で明らかにされました。

 

Professor Dr. Lorenz Hiltner, .

それでは、海外資料から其の根圏の概念と研究の概要について、一寸紹介.させていただきます。

 

Hiltnerは、様々な栽培作物の萌芽育成の集中的な研究から、作物で異なる根からの分泌物が異なる微生物集団の発達に寄与していると確信しました。1904年、彼の「根圏(Rhizosphere)」の定義は、植物の栄養分は、根圏の微生物の合成物に著しく影響されるとする考えを中心としたものでした。

 

The Bavarian Institute of Plant Growth and Plant Protection, Munich,

 

健康な根の内部のバクテリア細胞を特に観察し、共生菌糸根との類似性から、根と緊密に関係する微生物集団をバクテリア根(bacteriorhiza)と名付けました。彼は、根圏の概念の中で、有益なバクテリアのみが根の分泌物に集まるだけではなく招かざる微生物も又存在し、それに依って特定の根からの分泌物が調整されると想定しました。その研究観察から、植物の病原性に対する抵抗性は根圏の微生物叢に依存しているとの仮説を建てました。

 

The laboratories and practical plant protection

 

彼は、収穫物の品質は根圏の微生物の合成物に依るかも知れないとの考えさえ持ち、其の科学的な業績に加えて、其の応用分野にも貢献しました。

 

F. Nobbeと共に根粒バクテリアの接種剤(Nitragin)の最初の特許を取得しました。その後、接種剤の改良を重ね、又、植物の播種の保護剤として殺菌剤の塩化銀による種子の被覆を初めて提唱しました。

 

このように、Hiltnerは、根圏の実践的改善の基本的研究の突破口を開き、微生物叢の状況から根圏の理解の重要性を強調しことから、根圏微生物生態学及び土壌細菌学研究の先駆者とされています。

 

植物の栄養代謝や土壌微生物の一層の理解と共に、今日のゲノムやポストゲノムの解析時代にあって、彼のアイデアと其の貢献は100年以上後でも新しさを失っていません。

 

尚、詳しくは、英文になりますが,下記にアクセスしてをご参照ください。

 

"Lorenz Hiltner, a pioneer in rhizosphere microbial ecology and soil bacteriology research"

 

 

 

 

 

 


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