
なでしこジャパンの初優勝で幕を閉じた今回の女子W杯ドイツ大会。3月11日に発生した東日本大震災以降、国内では辛く悲しい話ばかりでしたし、更には政治&経済のロクでもない出来事が国民の沈んだ気持ちに追い討ちを掛けました。それだけに、今回のなでしこジャパンのW杯初優勝は、震災以降初めて国内に訪れた一大慶事だったので、彼女達の残した業績は非常に大きな意味があります。例えるなら、敗戦で傷ついた国民を勇気づけた力道山や古橋広之進や白井義男、あるいは日本人初のノーベル賞(物理学賞)を受賞した湯川秀樹博士の活躍ぐらいのインパクトがあるのでしょうか。
正直、大会開幕前はサッカーファン以外では関心が低かったです。どの競技にも共通してますが、やはり女子単独の大会だと中々盛り上がりにくいことは否めません。世間一般的にも、なでしこジャパンの名前こそ知っていても、女子にW杯があることをご存知の方は少なかったような気がします。それに、世の中には女子サッカーに興味が薄い(もしくは偏見を持っている)方がいるので、全てのサッカーファンに関心があった訳ではありませんでした。それこそは、関塚隆監督率いるU-22代表がクウェートと戦ったロンドン五輪アジア2次予選や、9大会ぶりにベスト8に進出した吉武博文監督率いるU-17W杯での活躍の方が関心が高かったような気がします。なでしこジャパンが日本を出発した時は、中部国際空港には報道陣が僅か10人しかおらず、見送ったサポーターは関係者以外はなんと0人。ちなみに、同じ日に来日したレディー・ガガには、報道陣が50人、ファンが200人も成田空港に駆け付けたそうです。
それにNHKは、本来なら日本が12年ぶりに参加するはずだった南米選手権(コパアメリカ)の放送権を8億円もの巨費を投じて獲得しただけに、当初は女子W杯よりもコパアメリカの方に明らかに重きを置いてました。しかし、既報の通りに、東日本大震災に伴う国内日程の変更の影響で代表選手の招集が不可能となり、ザックジャパンはコパアメリカには不参加となりました。仮に参加していたら、男女ではネームバリューに差があるので、なでしこジャパンの扱いは間違いなく低かったです。ただ、いくらレベルが高い大会であっても、肝心の自国が参加してない大会だと、サッカーファンならともかく、世間一般的には関心が低くなるのは仕方がないです。なので、NHKは必然的に女子W杯の宣伝に力を入れざるを得ませんでした。皮肉な話ですが、ザックジャパンのコパアメリカの不参加は、結果的になでしこジャパンへの関心と注目度を高めることに繋がりました。
NHKが払った女子W杯の放送権料がいくらなのか分かりませんが、大会の賞金総額が男子W杯と比較してべらぼうに安いことを考慮しても、間違いなくコパアメリカより安いことが推測されます。コパアメリカは日本が不参加だっただけでなく、スター選手を揃えた人気チームの地元アルゼンチンとブラジルの早期敗退でコストパフォーマンスに見合いませんでした。しかし、女子W杯に関してはその逆で、十分過ぎるほどお釣りが出たはすです。当初NHKは、女子W杯の中継試合数は日本戦を中心に15試合程度の予定でしたが、なでしこジャパンの快進撃もあって大会そのものに関心が高まり、最終的に2試合増えて17試合も中継しました(なお、今大会の総試合数は32試合)。なにせ、決勝戦の日本vs米国の視聴率は10.7%(午前5時~7時15分)となり、衛星放送史上最高となりました。大会開幕前は刺身のツマのような扱いだった女子W杯でしたが、終わってみればメインディッシュとなるはずだったコパアメリカから完全に主役の座を奪い取りました。
NHKが中継した全17試合のうち、16試合も生中継を実施するなど、過去の大会では考えられないほどの破格の待遇でした。結果的に、生中継が多かったことが女子サッカーの面白さを伝えたのではと思います。また、NHKは今大会出場した16チームのうち、アフリカ勢とコロンビアを除いた13チームの試合を中継したので、今まであまり知られてなかった世界の女子サッカーの勢力図や、世界各国の有名選手の実力を知る切っ掛けとなり、結果的に日本国内の女子サッカーの普及やファン獲得に繋がったはずです。今大会4位入賞して大躍進を遂げたフランスは日本と同じくパスサッカーを志向する国なので、世界の潮流の最先端を歩んでいることが明らかになりました。フランスは来年のロンドン五輪の出場権を獲得した国だけに、3試合も観られた事はメダル争いの上で大きな意義があります。唯一の録画中継だった準々決勝の米国vsブラジルは、優勝候補同士が対決したサッカーファン垂涎の好カードだったので、結果が分かっていても見応えがあり、日本が決勝を戦う上で非常に参考となりました。
また、NHKは中継したカードが臨機応変の対応だったことが本当に良かったです。例を挙げると、1次リーグD組の最終節は本来ならブラジルvs赤道ギニアを中継する予定でしたが、この試合は完全に消化試合となったので、同組の豪州vsノルウェーに変更。お互いに準々決勝が懸かったこの一戦は、激しい攻防の末に豪州が3-1で逆転勝利を飾り、両国の勢いの差が顕著となりました。準々決勝では、本来なら中継予定の無かったスウェーデンvs豪州の生中継を急遽実施。この試合は日本の準決勝の相手を決める為の試合でしたが、同時にスウェーデンが勝てば開催国ドイツのロンドン五輪出場が完全に消滅する状況でもありました。それだけに、会場が今までのフレンドリーな雰囲気と違って、ドイツ人がかなり殺気立って豪州を一方的に応援したのが印象的でした。北朝鮮と同様に、9月のロンドン五輪アジア最終予選で最大のライバルとなる豪州の試合を3試合も観られたのは、情報収集の上では日本にとって大きな収穫です。たとえ他国同士の試合であっても、やはり真剣勝負の戦いは理屈抜きで面白いものです。
様々な偶然が重なりましたが、今大会のなでしこジャパンは世間の不当なまでに低い評価と関心を結果を出すことによって見返し、更には実力で自身の価値を著しく向上させました。同時に、女子W杯の国内における存在価値の向上にも大きく寄与しました。おそらく、今後の国内女子サッカー界の発展の上でも、今大会は大きなターニングポイントとなるような気がします。また、彼女達の獅子奮迅の活躍と、世界の女子サッカーのトップクラスの試合をたくさん伝えたNHKの働きぶりも高く評価すべきです。なにせ、NHKは誰一人も芸能人を使わなかったので、かなりまともな中継でしたから。男子のW杯のように、全ての試合の完全中継はまだ無理かもしれませんが、次回大会以降もNHKが衛星放送でたくさんの試合を中継してもらいたいです。
一方、地上波の中継権を獲得していながら、数字を稼げないことを理由に「死蔵」させて国民の目から遠ざけたお台場のテレビ局に関しては、今更私の口から語る必要は無いでしょう。
〔写真はロイターより〕
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6月にドイツで開幕する女子サッカーW杯の日本戦をNHK衛星第1で生中継
☆ちなみに、こちらの映像はNHKが極秘に撮影したなでしこジャパンの過酷な秘密トレーニングです。
国家機密であるこの映像が世界中に漏れてしまったので、これからは心して取り組まなくてはならない(笑)。
正直、大会開幕前はサッカーファン以外では関心が低かったです。どの競技にも共通してますが、やはり女子単独の大会だと中々盛り上がりにくいことは否めません。世間一般的にも、なでしこジャパンの名前こそ知っていても、女子にW杯があることをご存知の方は少なかったような気がします。それに、世の中には女子サッカーに興味が薄い(もしくは偏見を持っている)方がいるので、全てのサッカーファンに関心があった訳ではありませんでした。それこそは、関塚隆監督率いるU-22代表がクウェートと戦ったロンドン五輪アジア2次予選や、9大会ぶりにベスト8に進出した吉武博文監督率いるU-17W杯での活躍の方が関心が高かったような気がします。なでしこジャパンが日本を出発した時は、中部国際空港には報道陣が僅か10人しかおらず、見送ったサポーターは関係者以外はなんと0人。ちなみに、同じ日に来日したレディー・ガガには、報道陣が50人、ファンが200人も成田空港に駆け付けたそうです。
それにNHKは、本来なら日本が12年ぶりに参加するはずだった南米選手権(コパアメリカ)の放送権を8億円もの巨費を投じて獲得しただけに、当初は女子W杯よりもコパアメリカの方に明らかに重きを置いてました。しかし、既報の通りに、東日本大震災に伴う国内日程の変更の影響で代表選手の招集が不可能となり、ザックジャパンはコパアメリカには不参加となりました。仮に参加していたら、男女ではネームバリューに差があるので、なでしこジャパンの扱いは間違いなく低かったです。ただ、いくらレベルが高い大会であっても、肝心の自国が参加してない大会だと、サッカーファンならともかく、世間一般的には関心が低くなるのは仕方がないです。なので、NHKは必然的に女子W杯の宣伝に力を入れざるを得ませんでした。皮肉な話ですが、ザックジャパンのコパアメリカの不参加は、結果的になでしこジャパンへの関心と注目度を高めることに繋がりました。
NHKが払った女子W杯の放送権料がいくらなのか分かりませんが、大会の賞金総額が男子W杯と比較してべらぼうに安いことを考慮しても、間違いなくコパアメリカより安いことが推測されます。コパアメリカは日本が不参加だっただけでなく、スター選手を揃えた人気チームの地元アルゼンチンとブラジルの早期敗退でコストパフォーマンスに見合いませんでした。しかし、女子W杯に関してはその逆で、十分過ぎるほどお釣りが出たはすです。当初NHKは、女子W杯の中継試合数は日本戦を中心に15試合程度の予定でしたが、なでしこジャパンの快進撃もあって大会そのものに関心が高まり、最終的に2試合増えて17試合も中継しました(なお、今大会の総試合数は32試合)。なにせ、決勝戦の日本vs米国の視聴率は10.7%(午前5時~7時15分)となり、衛星放送史上最高となりました。大会開幕前は刺身のツマのような扱いだった女子W杯でしたが、終わってみればメインディッシュとなるはずだったコパアメリカから完全に主役の座を奪い取りました。
NHKが中継した全17試合のうち、16試合も生中継を実施するなど、過去の大会では考えられないほどの破格の待遇でした。結果的に、生中継が多かったことが女子サッカーの面白さを伝えたのではと思います。また、NHKは今大会出場した16チームのうち、アフリカ勢とコロンビアを除いた13チームの試合を中継したので、今まであまり知られてなかった世界の女子サッカーの勢力図や、世界各国の有名選手の実力を知る切っ掛けとなり、結果的に日本国内の女子サッカーの普及やファン獲得に繋がったはずです。今大会4位入賞して大躍進を遂げたフランスは日本と同じくパスサッカーを志向する国なので、世界の潮流の最先端を歩んでいることが明らかになりました。フランスは来年のロンドン五輪の出場権を獲得した国だけに、3試合も観られた事はメダル争いの上で大きな意義があります。唯一の録画中継だった準々決勝の米国vsブラジルは、優勝候補同士が対決したサッカーファン垂涎の好カードだったので、結果が分かっていても見応えがあり、日本が決勝を戦う上で非常に参考となりました。
また、NHKは中継したカードが臨機応変の対応だったことが本当に良かったです。例を挙げると、1次リーグD組の最終節は本来ならブラジルvs赤道ギニアを中継する予定でしたが、この試合は完全に消化試合となったので、同組の豪州vsノルウェーに変更。お互いに準々決勝が懸かったこの一戦は、激しい攻防の末に豪州が3-1で逆転勝利を飾り、両国の勢いの差が顕著となりました。準々決勝では、本来なら中継予定の無かったスウェーデンvs豪州の生中継を急遽実施。この試合は日本の準決勝の相手を決める為の試合でしたが、同時にスウェーデンが勝てば開催国ドイツのロンドン五輪出場が完全に消滅する状況でもありました。それだけに、会場が今までのフレンドリーな雰囲気と違って、ドイツ人がかなり殺気立って豪州を一方的に応援したのが印象的でした。北朝鮮と同様に、9月のロンドン五輪アジア最終予選で最大のライバルとなる豪州の試合を3試合も観られたのは、情報収集の上では日本にとって大きな収穫です。たとえ他国同士の試合であっても、やはり真剣勝負の戦いは理屈抜きで面白いものです。
様々な偶然が重なりましたが、今大会のなでしこジャパンは世間の不当なまでに低い評価と関心を結果を出すことによって見返し、更には実力で自身の価値を著しく向上させました。同時に、女子W杯の国内における存在価値の向上にも大きく寄与しました。おそらく、今後の国内女子サッカー界の発展の上でも、今大会は大きなターニングポイントとなるような気がします。また、彼女達の獅子奮迅の活躍と、世界の女子サッカーのトップクラスの試合をたくさん伝えたNHKの働きぶりも高く評価すべきです。なにせ、NHKは誰一人も芸能人を使わなかったので、かなりまともな中継でしたから。男子のW杯のように、全ての試合の完全中継はまだ無理かもしれませんが、次回大会以降もNHKが衛星放送でたくさんの試合を中継してもらいたいです。
一方、地上波の中継権を獲得していながら、数字を稼げないことを理由に「死蔵」させて国民の目から遠ざけたお台場のテレビ局に関しては、今更私の口から語る必要は無いでしょう。
〔写真はロイターより〕
・関連記事
6月にドイツで開幕する女子サッカーW杯の日本戦をNHK衛星第1で生中継
☆ちなみに、こちらの映像はNHKが極秘に撮影したなでしこジャパンの過酷な秘密トレーニングです。
国家機密であるこの映像が世界中に漏れてしまったので、これからは心して取り組まなくてはならない(笑)。

女子W杯は。
日本は世界で珍しくバレーでは男子より女子の方が人気のある国なのに、サッカーは色物扱い的な形でしたからね。
もはや民放地上波で芸能人を使わない中継は
箱根駅伝ぐらいになってしまいました。
このイベントは決して感心しないものの、芸能人を使わずに高視聴率を叩き出している前例があるにも拘らず赤坂TVなどを中心に芸能人起用に拘るのか・・・ワケが分かりません。
競泳や体操に柔道などがメジャーになるのは
嬉しいのですが、民放が中継すると面白みが半減してしまうのには閉口しますよ。
民放が取り上げるぐらいメジャーという事と
反比例して中継される競技が面白くなくなるという現状はどうにかして欲しいですね。
民放は地上波で中継すると番組の質が著しく劣化しますが、BSで中継すると予算の関係で芸能人を使えないせいなのか、皮肉なことにわりとまともな中継になりますね。
U-17W杯はBSフジ(実質的にはCSのフジテレビNEXT)で録画放送してましたが、風間八宏と清水秀彦のネガティブな解説にこそやや問題があったとはいえ(笑)、地上波よりも格段にまともな中継でした。
また、今月上旬に神戸でアジア陸上選手権をBS-TBSで放送してましたが、こちらは4日間に渡って長時間も生中継でした。
この大会は世界陸上の日本代表最終選考会の位置付けだったので、日本人選手を多く取り上げていたのは仕方がないとはいえ、実施した種目はダイジェストも含めて殆ど中継しました。
実況が亀田一家の番アナだったことを除けば、アジアのトップレベルの選手の戦いが見られたので意外とまともな中継でした。
だけど、これが世界陸上になると、「東京ラブストーリー」の主役だった某俳優が大袈裟に司会をするから、せっかくの真剣勝負他台無しになるんですよね・・・。
ちなみに、9月の女子サッカーのロンドン五輪アジア最終予選はNHKが独占中継しますが、地上波なのか衛星なのか現時点ではまだ分かりません。
もし地上波だと、「絶対に負けられない戦いがそこにはある!!」のフレーズで御馴染みの局あのが中継する可能性があるので、本当に勘弁願いたいですね。