うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

おもに運動に関して、気ままに話したいと思います。
のんびり更新しますので、どうぞ気長にお付き合い下さい。

なでしこジャパン、スウェーデンに逆転勝利で史上初のW杯決勝進出!!

2011年07月14日 | サッカー(女子)
◆女子サッカー・第6回FIFA女子ワールドカップドイツ大会(2011年7月13日)

・準決勝
米国 3(1-0)1 フランス  (@メンヒェングラートバッハ/シュタディオン・イム・ボルシア・パルク)
得点者:米国)9分 ローレン・チェニー、79分 アビー・ワンバック、82分 アレックス・モーガン
   フランス)55分 ソニア・ボンバストール

日本 3(1-1)1 スウェーデン (@フランクフルト/ヴァルトシュタディオン)
得点者:日本)19分&64分 川澄奈穂美、60分 澤穂希
スウェーデン)10分 ジョセフィン・オクビスト

※米国は3大会ぶり3度目、日本は初の決勝進出


<3位決定戦の組み合わせ>
7/16 17:30 スウェーデン vs フランス   (@ジンハイム/ライン・ネッカー・アレーナ)
〔通算対戦成績・スウェーデンの10勝4敗2分〕

<決勝戦の組み合わせ>
7/17 20:45 日本 vs 米国    (@フランクフルト/ヴァルトシュタディオン)
〔通算対戦成績・米国の21勝3分〕

※キックオフの時間は現地時間 日本との時差は+7時間
  通算対戦成績は国際サッカー連盟(FIFA)のHPより参照


国際サッカー連盟の今大会の関連ページ
日本サッカー協会の今大会の関連ページ
今大会の日本女子代表21名(日本サッカー協会HPより)
出場16チームの最終登録メンバー(各国21名)
NHKの今大会の関連ページ

〔写真はロイターより〕


                           *  *  *  *  *


「今日、日本がどうやってボールを支配していたかをご覧になったでしょうか。
あれこそが未来の女子サッカーのお手本です。」


皆様はこのコメントを覚えてますか? これは3年前の北京五輪準決勝の日本vs米国戦で、試合終了後の記者会見で米国のピア・スンドハーゲ監督(ちなみにスウェーデン人)が日本を評したコメントです。この試合の日本は、持ち前の高さとパワーを前面に出した米国に2-4で敗れましたが、先制点を奪って慌てさせるなど内容的には健闘しました。世界の女子サッカーは、今でも体格と身体能力が重視されてます。しかし、この大会の日本は小柄な体躯にもかかわらず、豊富な運動量と巧みな技術をベースに多彩なパスサッカーを繰り広げ、世界の女子サッカー界に大きな一石を投じました。多少の社交辞令を含んでいるとはいえ、なでしこジャパンのサッカーは最終的にこの大会で優勝した敵将まで魅了させました。

米国だけでなく、もうひとつのサッカー大国であるドイツでも、日本女子のサッカーは高く評価されてます。しかし、この両国との対戦成績では日本が圧倒的に分が悪いのを見て分かるように、体格とフィジカルを前面に出して前線で待ち構える長身選手に目掛けてロングボールを放り込んだり、あるいはサイドからクロスを送るチームに対して未だ相性が悪いのは事実です。やはり、体格で劣る日本は、あらゆるカテゴリーの世界大会に参加しても、平均身長と体重では参加チームの中で最低ということが多いです。アジアにおいても、白人国家の豪州はもちろんのこと、中国や南北朝鮮に体格や身体能力で劣ることが殆どです。こういうチームに対する為には、平面で戦うしかないです。つまり、体格に優れた相手との身体的な接触を避ける為に、統一した戦術の下、相手よりも走り勝って、常にボールを支配して組織的に戦い続けることが理想です。FIFAランキング5位のスウェーデンは、今大会参加チームの中ではドイツに次いで平均身長が高い大柄のチームなので、どこまで日本のサッカーが通用するのか見ものでした。

準々決勝では日本はドイツ戦で延長戦まで戦いましたが、スウェーデンよりも休養日が1日多かったです。更には、スウェーデンは豪州戦ではデーゲームでした。体調面ではやや日本が有利でした。この日はいつものメンバーと異なり、FWを不調の永里優季から川澄奈穂美に変更。立ち上がりから激しくプレスを掛けるスウェーデンに対し、やや戸惑いを見せる日本。前半11分、日本はMF澤穂希からDF岩清水梓へのバックパスをスウェーデンのジョセフィン・オクビストにインターセプトされて、ドリブルからミドルシュートを決められて早い時間帯に失点を喰らう、嫌な立ち上がりでした。しかし、その後は日本が落ち着きを取り戻し、次第に技術の長けた日本のペースに。前半18分に、大野忍が中央にドリブルで切り込んで宮間あやへパス。左サイドから宮間が上げたクロスに、ファーサイドの川澄が飛び込み、相手DFに押されて倒されながらも体ごと押し込んでゴールを決め、すぐさま同点に持ち込みます。時間の経過とともにスウェーデンの足が止まり始めたこともあり、日本が優勢に展開するも逆転弾が奪えず、結局1-1の同点のまま前半を折り返します。

後半開始早々に、大野が放ったミドルシュートが惜しくもクロスバーを直撃。日本は後半も攻撃の手を一切緩めず、試合の主導権を完全に掌握。むしろ、前半よりも圧倒し、得点は時間の問題だと思われました。そして、後半15分、右サイドを起点に攻撃を仕掛け、左サイドを駆け上がった鮫島彩がゴール前に詰め寄っていたFW安藤梢に目掛けて縦のクロスを送り、GKがこぼした球を澤が頭で押し込んで、ついに日本は逆転に成功。大黒柱の澤は自らの得点でミスを帳消しにしました。更にその4分後、宮間のロングフィードにスウェーデンのGKが安藤ともつれ合いながらもクリア。そのクリアボールを川澄が巧みなボールコントロールで処理してノーバウンドで豪快に蹴り込み、相手GKの頭上を通り越えて無人のゴールに突き刺す鮮やかなロングシュートを決めて、日本が2点差に突き放します。その後もペースを握った日本は、永里の他に、高瀬愛実と上尾野辺めぐみも交代で投入するなど、余裕たっぷりの戦いで無事にタイムアップの笛を聞きます。日本は圧巻の戦いぶりで3-1でスウェーデンを降し、6度目の大会出場にして史上初のW杯決勝進出を果たしました。

試合前は体格に劣る日本の苦戦を予想されましたが、終わってみれば、シュート数が14対4、ボール支配率では60%対40%と数字的に見ても完全に日本が圧倒。前々回の2003年米国大会のファイナリストであるスウェーデンは、日本とはFIFAランキングがたった1つだけしか違いませんが、結果だけでなく内容的にもここまで大差が付くとは全くの予想外でした。1次リーグでは疑問の残る采配が散見された佐々木則夫監督でしたが、前戦のドイツ戦で途中出場で大活躍した丸山桂里奈に続いて、この日は初めて先発出場した川澄が大当たりするなど、決勝トーナメント以降は選手起用が冴えているのは見事です。そして何よりも、ピッチ上で繰り広げられた「人とボールが連動したパスサッカー」は本当に素晴らしく、我々日本人だけでなく、本場ドイツの観客も大いに唸らせました。世界の女子サッカーの最先端を突き進むこのチームは、まさに「女版バルサ」だと形容出来ます。いや、かつてイビチャ・オシムが提唱した「日本サッカーの日本化」を具現化したのではないのかとも思えました。

奇しくも、7月17日(日本時間7月18日未明)にフランクフルトで行われる決勝で戦う相手は、3年前の北京五輪準決勝の日本戦終了後の記者会見で「未来の女子サッカーのお手本」を予言したピア・スンドハーゲ監督率いる米国です。体格とフィジカルを前面に押し出すFIFAランキング1位の米国は、先程申し上げたとおりに日本とは対極に位置する前近代的なスタイルです。ご存知の通りに、通算対戦成績では日本の24戦21敗3分と圧倒的に分が悪く、今年だけで3回負けてます。日本にとってはかなり厳しい戦いになることが予想されます。ただ、今度の日米対決は優勝トロフィーを賭けた戦いだけでなく、今後の世界の女子サッカーの潮流を占う意味でも重要な戦いとなるのは必至です。世界の歴史を変える為にも、なでしこジャパンが決勝の舞台で奇跡を起こすことを祈りたいです。


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