うんどうエッセイ「猫なべの定点観測」

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女子サッカーのロンドン五輪アジア最終予選の日程が決まる

2011年06月16日 | サッカー(女子)
◆女子サッカー・ロンドン五輪アジア最終予選(2011年9月1~11日 @中国・済南の2会場)

参加国:日本(4)、北朝鮮(8)、豪州(11)、中国(15)、韓国(16)、タイ(34)
(カッコ内は2011年3月18日発表のFIFAランキング

タイは今月行われた2次予選を勝ち上がったチームで、その他のチームは予めシードされて最終予選から参加。
参加6チームがセントラル方式(集中開催方式)で1回戦総当りのリーグ戦を実施し、上位2チームが本大会の出場権を獲得(なお、女子サッカーは世界最終予選と大陸間プレーオフは実施しない)。


最終予選の日程   ※試合開始時間は現地時間(日本との時差は+1時間)
9月 1日(木)15:30 日本 vs タイ   (@山東省スポーツセンター)
    〃   19:00 中国 vs 韓国   (@済南オリンピックスポーツセンター)
    〃   15:30 北朝鮮 vs 豪州 (@済南オリンピックスポーツセンター)

9月 3日(土)19:00 中国 vs 北朝鮮 (@山東省スポーツセンター)
    〃   15:30 豪州 vs タイ    (@済南オリンピックスポーツセンター)
    〃   19:00 韓国 vs 日本   (@済南オリンピックスポーツセンター)

9月 5日(月)15:30 韓国 vs 北朝鮮 (@済南オリンピックスポーツセンター)
    〃   15:30 日本 vs 豪州   (@山東省スポーツセンター)
    〃   19:00 タイ vs 中国    (@山東省スポーツセンター)

9月 8日(木)19:00 豪州 vs 中国    (@済南オリンピックスポーツセンター)
    〃   15:30 タイ vs 韓国    (@済南オリンピックスポーツセンター)
    〃   15:30 北朝鮮 vs 日本  (@山東省スポーツセンター)

9月11日(日)19:00 日本 vs 中国   (@済南オリンピックスポーツセンター)
    〃    15:30 タイ vs 北朝鮮   (@済南オリンピックスポーツセンター)
    〃    15:30 韓国 vs 豪州   (@山東省スポーツセンター)

日本サッカー協会の今大会の関連ページ


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「経験vs体力」の戦いになりそうな予感

9月1~11日に中国の済南で開催される女子サッカーのロンドン五輪アジア最終予選の日程をアジアサッカー連盟(AFC)が発表しました。この予選は、今年の女子サッカー界にとっては、今月末にドイツで開催されるW杯と同様に極めて重要な大会です。単純にレベルだけで比較するなら、W杯(16チームが参加)の方が上です。なぜなら、W杯の出場枠は各大陸の実力に基づいて配分してますが、五輪(12チームが参加)はそれを無視してオセアニア以外の各大陸に2枠ずつ均等配分しているからです(→詳細はこちら)。ただ、世間一般の認知度では、やはり五輪の方が上だと思われてますね。1996年アトランタ五輪と2000年シドニー五輪の両大会では、W杯が五輪予選を兼ねていたので、今でも過去の名残があるのでしょう。なお、五輪の女子サッカーで大陸予選制を導入したのは、2004年アテネ五輪からです。今回のロンドン五輪が3回目となりますが、アジアに与えられた僅か2つの出場枠を巡って、今までで最も過酷な予選となるのは必至です。

というのも、予選のレギュレーションがとても厳しいからです。前回の2008年北京五輪アジア最終予選は地元と敵地でそれぞれ1試合ずつ行う「H&A方式」でしたが、今回は全ての試合を1ヶ所で行う「セントラル方式」(集中開催方式)で実施されます。僅か11日間で5試合を戦うので、文字通りの短期決戦です。しかも、最初の3試合は中1日なので、まさに殺人的な日程です。最近の男子の大会でも、このような過密日程は中々見掛けないので、AFCの健康管理に対する見識を疑いますね。ただ、女子だとプロ選手が少なく、他の職業をしているアマチュア選手が多いから、代表チームに選手を拘束することがあまり出来ず、更には大会の収支面も考慮するので、国際大会を開催する時はなるべく試合会場を少なくして、短い期間に押し込む傾向があります。なので、中1日で戦う日程の大会は意外とあります。昨年5月に中国で開催されたアジア杯でも、日本は11日間で5試合も戦う日程でした(なお、この大会の開催期間は12日間)。しかも、今回の五輪予選と同じく、最初の3試合は中1日での実施でした(→詳細はこちら)。

ただし、この2つの大会はレギュレーションがそれぞれ違うので、各試合の位置付けが全く異なります。アジア杯での日本は、まず1次リーグで格下のミャンマーとタイを相手に2試合戦った後、最終戦で強豪の北朝鮮と準決勝の対戦相手を決める為の実質的な“順位決定戦”を戦い、その後に本当の勝負である決勝トーナメントの2試合を戦いました(なお、この大会の3位以内がW杯本大会の出場権を獲得)。一方、今回のロンドン五輪アジア最終予選は1回戦総当たりの「ラウンドロビン方式」なので、全ての試合の結果が順位に反映されます。しかも、勝ち点が並んだ場合は得失点差や総得点も順位決定に関わるので、今大会最弱のタイを相手にすら手抜きをする事が許されず、全ての試合で難しい戦いを強いられます。ましてや、短期決戦だけに、スタートダッシュに失敗したら命取りになります。

最新のFIFAランキングを見て分かるように、タイ以外の5ヶ国は全て世界16位以内に入っており、女子のアジアのトップクラスは世界的にも強豪地域です。たしかに、総当り戦なので概ね公平な方式だとはいえ、この5強は実力が接近しているのだから、ちょっとした事で勝敗を大きく左右します。中でも、対戦順と試合開始時刻は重要な要素です。総当り戦の場合だと、格下相手といつ戦うのかが問題です。なにせ、今大会は最初の3試合が中1日の強行日程だからです。しかし、今大会の日本は初戦でいきなり最弱のタイと戦います。他のライバルは、初戦の日本のスコアを参考にしながらタイと戦うことが出来るので、日本は温存策がやりにくいです。なので、対戦順は日本が最も不利です。一方、試合開始時刻では、最初の3試合を昼間に戦う豪州が明らかに不利です。次に不利なのは、最後の3試合を昼間に戦う北朝鮮です。しかも、両チームとも残暑の厳しい時期に4試合も昼間に戦います。どのチームにも言えますが、体調管理が重要な鍵を握るはずです。

また、今大会は2つの会場で15試合も実施し、更には1日に2試合も使用する日もあるので、日を追うごとに会場の芝の状態の悪化は必至です。なので、中盤を省略して長いボールを蹴り合う展開になったら、技術はあるが高さで劣る日本にとっては不利な展開となります。ましてや、白人国家の豪州は体格とパワーに優れており、多民族国家の中国も同様です。北朝鮮は世代交代を着々と進めつつあり、近年若年層の世界大会で好成績を収めている韓国も半島特有の身体能力が高いチームです。一方、日本はチームとしての実績や、選手個人の経験と技術と戦術理解度といった面では最も優れてますが、如何せん体格で劣る分、体力勝負に引き摺り込まれたら厳しいです。ましてや、試合を重ねるにつれて、疲労の蓄積も心配されます。短期決戦を勝ち抜く為には、全ての試合を全力で勝利を目指すのではなく、全ての試合が終わった時点で最終的に規定の順位以内に入れる合理的な戦い方こそが大切なのです。今大会は全ての試合の結果が反映されるとはいえ、体力の消耗を考慮すれば、日本も「ターンオーバー制」は視野に入れるべきですね。

今大会のレギュレーションを振り返ると、開催国の中国が有利なことが誰にでも分かります。なにせ、中国は全試合ナイターですから。しかも、タイと真ん中の3試合目で戦えるのも大きいです。最初の2試合をフルスロットで戦った後、格下相手の3戦目で主力を温存して、残り2戦に備える事が可能だからです。また、ライバルとの対戦順も実に巧妙です。韓国は若い選手が主体で勢いに乗っているので、出鼻を挫く為にあえて初戦でぶつけてます。北朝鮮と豪州は昼間の試合でたっぷりと天日干しにして、体力を消耗させるのが魂胆です。近年相性がかなり悪い日本を最終戦にしたのは、累積警告による出場停止を計算に入れているからです。そして明らかに問題なのは、最終日の試合開始時刻が同一ではないことです。この日最後の試合を戦う中国を有利にしているのは明白なので、著しく公平性に欠けてます。通常の国際大会なら、予選の最終戦は八百長の防止や各チームの公平性を保つ為に、複数の会場を使用して同一時刻にキックオフとなるのが原則のはずなので、この日程を決定したAFCの見識を疑います。

中国が露骨なまでに我田引水な運営をするのは、それだけ近年低迷が続いているので危機感の裏返しとも言えます。なにせ、近年の中国女子は、五輪・W杯・アジア大会・アジア杯・東アジア選手権など主要国際大会の全てを開催しており、日本のバレーボール界を遥かに上回る極度の内弁慶体質です。しかし、中国は地の利を得ても、日本・北朝鮮・豪州に引き離されるどころか、かつて弱かった韓国にまで猛追撃されているのが現状です。日本は対中国戦の通算対戦成績は大きく負け越しているものの、逆に過去5年間の対戦では日本が7勝1敗と圧倒し、北京五輪から数えて4連続完封勝利してます。更には、敵地でも現在4連勝中ですし、「完全アウェー」の状況下では何度も戦っているので慣れてます。たしかに、中国は苦戦することはあっても決して負けない相手だとはいえ、彼女達も背水の陣を敷くので、最終戦で勝負を賭ける展開はなるべくなら避けたいです。

世界の女子サッカー界は、米国やドイツのように国内リーグがプロ化して発展しているところもあれば、まだアマチュア選手が主体の発展途上国もあります。もちろん、日本は代表チームの実力とは裏腹に、残念ながら競技環境では後者に分類されます。過去に、日本はシドニー五輪の出場を逃した後、数多くの企業が経済不況や宣伝効果が見合わない事を理由に国内リーグから撤退し、国内女子サッカー界全体が真冬の暗黒時代に突入して大いに苦しんだことがあります。それだけに、ロンドン五輪の出場権を逃すと、代表チームへの依存度が高い日本は深刻なダメージを負うことが容易に予想されます。だからこそ、9月の秋の決戦に向けて万全の準備を整えて、アジアのライバルを叩き潰して3大会連続4度目の五輪切符を必ず獲得しなくてはなりません。

ザックジャパンが9月2日からブラジルW杯アジア3次予選を戦いますが、
同じ時期に一大決戦に挑むなでしこジャパンもみんなで応援しましょう!!




▼日本のアジア最終予選参加国との通算対戦成績  ※2011年6月16日現在です。
(なお、PK戦は引き分けとして扱ってます)
対中国:30戦8勝16敗6分(過去5年の対戦成績:8戦7勝1敗)
対韓国:22戦13勝2敗7分(過去5年の対戦成績:6戦4勝1敗1分)
対北朝鮮:17戦5勝9敗3分(過去5年の対戦成績:6戦3勝1敗2分) ※引き分けのうち日本のPK戦の負けが1試合
対豪州:17戦6勝5敗6分(過去5年の対戦成績:6戦4勝2敗)
対タイ:11戦10勝1敗(過去5年の対戦成績:5戦5勝)


▼ロンドン五輪女子サッカーの出場資格
(本大会の女子は12チームが参加して行われます)

開催国:英国 (実質的なイングランド代表の単独チームです)
欧州(2):6~7月にドイツで開催されるW杯で、欧州勢の成績上位2ヶ国が五輪出場権獲得
南米(2):ブラジル、コロンビア
北中米・カリブ海(2):2012年にカナダで開催される大陸予選の上位2ヶ国が五輪出場権獲得
アフリカ(2):大陸予選の上位2ヶ国が五輪出場権獲得
アジア(2):9月に中国で開催される大陸予選の上位2ヶ国が五輪出場権獲得
オセアニア(1):大陸予選首位の国が五輪出場権獲得


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