東京オリンピック開催1年前に降って湧いたお台場の水質問題。
2008~2015年まで約8年間、お台場海浜公園エリアに勤務してまして、その間に期間限定の海水浴場を設置する事もあったことは記憶にあったのですが、今回の件もあり、よくよく見てみると「顔を水につけない」などとんでもない条件付きだったんですね。
この水質問題。原因は合流式下水道の問題です。
下水道には合流式と分流式があります。
まず合流式はトイレや台所から発生する汚水と、降水時の雨水を一緒に(=合流)下水管を通して処理場に接続し河川に放流する方法。管の設置が1本で済み安価な施工費で済んだことと、浸水対策と水洗トイレの普及が同時に図れる方法として昭和30年代まで都市部を中心に採用されていました。
一方、分流式は汚水は汚水系統の下水管で処理場に接続してから河川に、雨水は雨水系統の雨水管でそのまま河川に放流する方法で最近はこの方法がとられています。
分流式へ変更された大きなポイントは「水質問題」で、合流式の下水管は、降雨時、下水管に雨水が流れ込みますので処理場の能力を超える量の汚水が押し寄せてきた場合、あふれた分をそのまま河川に流してしまいます(=未処理放流水)。簡単に記してますが、汚水は台所の排水やトイレの排水ですから、降雨時は放流先付近の河川の水質悪化があったり、放流先付近で水を利用する方に対して衛生面での影響は出てしまうのです。
今回のオリンピック会場に於ける「トイレの臭い」とは、まさにこのことが原因となっています。
だったら合流式を分流式に変更すれば良いじゃん…と当然考えるわけですが、そこに至るまでには①穴を掘り新たな汚水管を敷設する、②各世帯の汚水と雨水の配管切り替えを行うという2つの工程が必要となり、そもそもその整備費は税金であり、かつ、敷地内は各世帯にも負担してもらわないといけない費用もありますから、すぐに着手できる性格のものではありません(23区の改修だけで10兆円以上という試算あり)。
厚木市では厚木北地区と南地区のほとんどは合流式(このエリアでは大雨時、トイレの流れが悪くなるはずです)となっており、10年ぐらい前に道路直下に汚水貯留管を設置するなどの対策をとっていますが、近年ではゲリラ豪雨への対応も必要となり、浸水対策、汚水対策のために旭町・あさひ公園には14,000tの雨水貯留施設を設置し、厚木北地区でも5,000tの雨水貯留管を整備することになっています。
こうした能力増強に併せて、各世帯でぜひとも取り組み頂きたいと思うのが、各建物から出る排水のうち、少なくとも雨水については敷地内で浸透処理(=雨水浸透ますを付けるとできる)していただくと、その分、浸水対策にも、また、河川の水質対策にも役立ちます。
画像引用:福岡市下水道局