みなさん、こんばんは。
去る4月29日(火)に、なんでや劇場「生物史から学ぶ自然の摂理9 免疫細胞の認識機能~知られざる膜タンパクの仕組み~」が開催されました。今回もとても気付きの多い内容でしたね。
とはいえ、その後、楽しみだったGWをはさんでしまったため、今となってはすでに忘却のかなたへ・・・・・・なんて人が多いかもしれません。ということで、今日を含めて3回のシリーズで恒例の「なん劇レポート」をお届けします。
じゃ、まずいつものヤツをお願いします。
ありがごうございます。
それじゃぁ、さっそくいってみましょう。
【復習】
●免疫機能の大別と概略
3月20日の劇場で、免疫細胞と免疫機能には大きく分けて以下のような関係があることを勉強しました。
1)マクロファージ:食べる
2)キラー細胞 :殺す(自滅させる)
3)B細胞 :敵を記憶する(特定の敵に対応する抗体を放出)
ここで、単純な疑問が湧いてきませんか?
「免疫細胞は、なんで自分の細胞(味方)を食べたり殺したりしないのか?」です。
もし、免疫細胞が正常な体細胞を攻撃してしまったら、身体に異変が起こりそうですよね。でも、実際はそうなっていない。なっていないから私たちは、平穏に生活できるわけです。
ということは、目も耳も脳も持たない免疫細胞が、なんらかの方法で敵・味方の区別(識別)をしている、ということになります。それはどういう仕掛けでしょう?
そのヒントとして、免疫機能1)~3)に共通することをあげてみます。それは、「くっつく」こと。
マクロファージは、食べようとする相手とくっついて取り込みます。キラー細胞は相手にくっついてミサイル発射。B細胞が放出する抗体は、相手にくっつき標的となります。いずれも、相手にくっつくことで免疫機能としての作用を発現させているわけですね。
【マクロファージ:「食べる」とはどういうことか】
●くっつく と 食べる の関係
マクロファージは「貪食細胞」と言われ、何でも食べてしまうように思われていますが、そうではありません。食べる相手を選んでいます。じゃぁ、どうなっているんでしょう。
それが、以下の絵にあらわれているんです。
上の絵は、マクロファージがばい菌を食べる過程です。ピンク色がマクロファージ。青色がばい菌です。
一番左の絵:「食作用」のところで、青色のばい菌とマクロファージを結びつけている赤い線があります。こいつが「膜タンパク」。
膜タンパクは細胞膜の表面に分布しているタンパク質で、くっつく作用などを具体的に引き起こしているものです。
つまり、マクロファージとばい菌の膜タンパク同士がくっついた結果、マクロファージは相手を取り込もう(食べよう)とするわけです。
↓膜タンパクは、こんなヤツです↓
この絵は、細胞の表面=細胞膜を拡大した断面図。黄色いツブツブの平面が細胞膜の表面。そこから頭を出している水色や緑色の物体が「膜タンパク」です。
マクロファージの「食べる」という行為について、ここで忘れてはならないことがあります。それは、「相手も自分も同じ」ということ。つまり、絵の上ではマクロファージに食べられているように見えるばい菌は、実は、マクロファージを(内部から)食べようとしているのです。マクロファージもばい菌も、互いの膜タンパクがくっつくいたら「食い合い」を始めている、ということになりますね。場合によっては、ばい菌がマクロファージの体内に飛び込んでくることもあるそうです。
私たちの感覚からすると、「食べる」とは、ライオンとシマウマのように、食う側が食われる側を追いかけるなどして積極的に捕食することなどをイメージしてしまいますが、免疫の世界ではそうはなっていません。
そして、「食べる」ことの本質は「くっつく」ことにあります。逆に言うと、膜タンパク同士がくっつかないと、マクロファージは食べないわけです。
こうなると、膜タンパクが敵か味方かの識別に関係している感じがしますよね。
さて、どうなっているのでしょう?どうぞ、続きを読んでください。
【膜タンパクと識別機能】
●くっつく・はなれる・つかずはなれず
私たちの身体は、細かく分解すると細胞になります。細胞の主たる成分はタンパク質。そして、このタンパク質をもっと細かく分解すると分子になります。ちょっと難しいかもしれませんが、水素や炭素や窒素などが結びついて形成された高分子化合物(有機物)がタンパク質なんですね。
その上で、タンパク質は、分子の結合の仕方によってプラスかマイナスかの電気を帯びていると考えてみましょう。これは、膜タンパクも同じです。膜タンパクには色々な形があるそうですが、いずれにしても、プラスかマイナスの電気を帯びていると考えてみてください。
すると、プラスとマイナスが引き合って、プラスとプラスもしくはマイナスとマイナスは反発し合う電気の性質を思い出しますよね。(イメージしづらければ、磁石のN極とS極の関係を考えてもいいでしょう。)
そう、膜タンパクの識別機能、すなわち、くっつく・はなれる は、すごく単純化すると、この電気的性質を利用しているのです。
●親和型タンパクと反発型タンパク
上記のように、プラスとマイナスの電気的性質を利用した膜タンパクには、ひきつけ合うものと、反発し合うもののいずれかがあります。
ひきつけ合うものを「親和型膜タンパク」、反発し合うものを「反発型膜タンパク」と呼びます。
上の絵の左側は、細胞同士が親和型膜タンパクのみをもっている場合。これは、くっつきます。そして融合します。マクロファージとばい菌の食い合いはこのパターンで発生します。
一方、右側の絵は、親和型膜タンパクと反発型膜タンパクの両方が同居している場合。これは、融合もしなければ はなれもしない。つかづはなれずの関係になります。私たちの体細胞はこのパターン。細胞一つ一つが各々の形や性質を保持したまま、結合状態にある関係です。
ともすれば、同一のDNAから生み出された体細胞なのだから、融合してしまいそうに思います。でも、融合しない(共食いしない)のは、同一のDNAから生み出された細胞であるが故に、同じように親和型膜タンパクと反発型膜タンパクをもってるからなんですね。
これは、近縁のもの同士は共食いしない原則的仕組みだそうです。
まとめると、
・くっつく=親和型膜タンパク同士=食べる・融合する
・はなれる=反発型膜タンパク同士=何も起きない
・つかずはなれず=親和型膜タンパクと反発型膜タンパクが同居=体細胞の基本的な結合様式
ということになります。
・・・・・・ハイ。
ということで、全3回シリーズのうち1回はこれで終了です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
例によって非常に長くなってしまい申し訳ございません。ホント、いつも長くてすみません。
2回、3回もお楽しみに。
たしょう
去る4月29日(火)に、なんでや劇場「生物史から学ぶ自然の摂理9 免疫細胞の認識機能~知られざる膜タンパクの仕組み~」が開催されました。今回もとても気付きの多い内容でしたね。
とはいえ、その後、楽しみだったGWをはさんでしまったため、今となってはすでに忘却のかなたへ・・・・・・なんて人が多いかもしれません。ということで、今日を含めて3回のシリーズで恒例の「なん劇レポート」をお届けします。
じゃ、まずいつものヤツをお願いします。
ありがごうございます。
それじゃぁ、さっそくいってみましょう。
【復習】
●免疫機能の大別と概略
3月20日の劇場で、免疫細胞と免疫機能には大きく分けて以下のような関係があることを勉強しました。
1)マクロファージ:食べる
2)キラー細胞 :殺す(自滅させる)
3)B細胞 :敵を記憶する(特定の敵に対応する抗体を放出)
ここで、単純な疑問が湧いてきませんか?
「免疫細胞は、なんで自分の細胞(味方)を食べたり殺したりしないのか?」です。
もし、免疫細胞が正常な体細胞を攻撃してしまったら、身体に異変が起こりそうですよね。でも、実際はそうなっていない。なっていないから私たちは、平穏に生活できるわけです。
ということは、目も耳も脳も持たない免疫細胞が、なんらかの方法で敵・味方の区別(識別)をしている、ということになります。それはどういう仕掛けでしょう?
そのヒントとして、免疫機能1)~3)に共通することをあげてみます。それは、「くっつく」こと。
マクロファージは、食べようとする相手とくっついて取り込みます。キラー細胞は相手にくっついてミサイル発射。B細胞が放出する抗体は、相手にくっつき標的となります。いずれも、相手にくっつくことで免疫機能としての作用を発現させているわけですね。
【マクロファージ:「食べる」とはどういうことか】
●くっつく と 食べる の関係
マクロファージは「貪食細胞」と言われ、何でも食べてしまうように思われていますが、そうではありません。食べる相手を選んでいます。じゃぁ、どうなっているんでしょう。
それが、以下の絵にあらわれているんです。
上の絵は、マクロファージがばい菌を食べる過程です。ピンク色がマクロファージ。青色がばい菌です。
一番左の絵:「食作用」のところで、青色のばい菌とマクロファージを結びつけている赤い線があります。こいつが「膜タンパク」。
膜タンパクは細胞膜の表面に分布しているタンパク質で、くっつく作用などを具体的に引き起こしているものです。
つまり、マクロファージとばい菌の膜タンパク同士がくっついた結果、マクロファージは相手を取り込もう(食べよう)とするわけです。
↓膜タンパクは、こんなヤツです↓
この絵は、細胞の表面=細胞膜を拡大した断面図。黄色いツブツブの平面が細胞膜の表面。そこから頭を出している水色や緑色の物体が「膜タンパク」です。
マクロファージの「食べる」という行為について、ここで忘れてはならないことがあります。それは、「相手も自分も同じ」ということ。つまり、絵の上ではマクロファージに食べられているように見えるばい菌は、実は、マクロファージを(内部から)食べようとしているのです。マクロファージもばい菌も、互いの膜タンパクがくっつくいたら「食い合い」を始めている、ということになりますね。場合によっては、ばい菌がマクロファージの体内に飛び込んでくることもあるそうです。
私たちの感覚からすると、「食べる」とは、ライオンとシマウマのように、食う側が食われる側を追いかけるなどして積極的に捕食することなどをイメージしてしまいますが、免疫の世界ではそうはなっていません。
そして、「食べる」ことの本質は「くっつく」ことにあります。逆に言うと、膜タンパク同士がくっつかないと、マクロファージは食べないわけです。
こうなると、膜タンパクが敵か味方かの識別に関係している感じがしますよね。
さて、どうなっているのでしょう?どうぞ、続きを読んでください。
【膜タンパクと識別機能】
●くっつく・はなれる・つかずはなれず
私たちの身体は、細かく分解すると細胞になります。細胞の主たる成分はタンパク質。そして、このタンパク質をもっと細かく分解すると分子になります。ちょっと難しいかもしれませんが、水素や炭素や窒素などが結びついて形成された高分子化合物(有機物)がタンパク質なんですね。
その上で、タンパク質は、分子の結合の仕方によってプラスかマイナスかの電気を帯びていると考えてみましょう。これは、膜タンパクも同じです。膜タンパクには色々な形があるそうですが、いずれにしても、プラスかマイナスの電気を帯びていると考えてみてください。
すると、プラスとマイナスが引き合って、プラスとプラスもしくはマイナスとマイナスは反発し合う電気の性質を思い出しますよね。(イメージしづらければ、磁石のN極とS極の関係を考えてもいいでしょう。)
そう、膜タンパクの識別機能、すなわち、くっつく・はなれる は、すごく単純化すると、この電気的性質を利用しているのです。
●親和型タンパクと反発型タンパク
上記のように、プラスとマイナスの電気的性質を利用した膜タンパクには、ひきつけ合うものと、反発し合うもののいずれかがあります。
ひきつけ合うものを「親和型膜タンパク」、反発し合うものを「反発型膜タンパク」と呼びます。
上の絵の左側は、細胞同士が親和型膜タンパクのみをもっている場合。これは、くっつきます。そして融合します。マクロファージとばい菌の食い合いはこのパターンで発生します。
一方、右側の絵は、親和型膜タンパクと反発型膜タンパクの両方が同居している場合。これは、融合もしなければ はなれもしない。つかづはなれずの関係になります。私たちの体細胞はこのパターン。細胞一つ一つが各々の形や性質を保持したまま、結合状態にある関係です。
ともすれば、同一のDNAから生み出された体細胞なのだから、融合してしまいそうに思います。でも、融合しない(共食いしない)のは、同一のDNAから生み出された細胞であるが故に、同じように親和型膜タンパクと反発型膜タンパクをもってるからなんですね。
これは、近縁のもの同士は共食いしない原則的仕組みだそうです。
まとめると、
・くっつく=親和型膜タンパク同士=食べる・融合する
・はなれる=反発型膜タンパク同士=何も起きない
・つかずはなれず=親和型膜タンパクと反発型膜タンパクが同居=体細胞の基本的な結合様式
ということになります。
・・・・・・ハイ。
ということで、全3回シリーズのうち1回はこれで終了です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
例によって非常に長くなってしまい申し訳ございません。ホント、いつも長くてすみません。
2回、3回もお楽しみに。
たしょう
くっつく・はなれる・つかず離れず
って、プラス・マイナスの絶妙なバランスによって起こっているっていうのが大きな気づきでした。
くっつく=食べるという関係が再確認できました。しっかり復習して次回もがんばります。
「免疫細胞は、なんで自分の細胞(味方)を食べたり殺したりしないのか?」
がスッキリしました~
こうやってまとめてくれると、かなり助かります
次の劇場前にまた読み返して復習します
>プラス・マイナスの絶妙なバランスによって起こっているっていうのが大きな気づきでした。
確かにそうですね。
分子の結合というと、とても小さい世界で起こっていることなので、なんとも実感しづらいところです。
でも、実は、私たちの目に見えるもの全ては原子の結合(プラスマイナス)で出来ているものなんですよね。
実感とはかけ離れたところを如何にして理解するか。
ここが私たちのもつ観念機能の腕の見せ所なんでしょうね。
matsu子♂ さん
>いつも楽しんで読ませてもらってます。
ありがとうございます。そう言っていただけると、書いてよかった、と思います。
>しっかり復習して次回もがんばります
復習は、本当に大事ですよね。
最近、劇場に参加して特に思うのが「知ることの楽しさ」です。
知らなかった事を知るときは、予想もしなかったところで新しい気付きが得られるから驚きを伴います。この驚きを伴った理解というのは、なんというか、こう・・・「快感」。この快感は、私たち人類の認識を拡大し、また、多くの人に広める役割をはたしているように思います。
別の言い方をしたら、私たちの脳は、知らなかった事を知ると、それを快感として捉える、ということかもしれません。
いずれにせよ、復習をしないとそんな快感が半減してしまうという意味で、とてももったいないですよね。
さんぽ☆ さん
>こうやってまとめてくれると、かなり助かります
ありがとうございます。お役に立てたことが何より嬉しいです。
劇レポを書くとなると、復習を含めてかなり時間がかかるんです(笑)。
もちろん、自分のための勉強にはなっているんですが、人に伝えるために書いているわけですから、伝わらなければ意味がない。とうことで、一番不安なのが「ちゃんと伝わっただろうか」ということ。
伝わってよかったです。いや、ホントに。