ブログ de なんで屋 @東京

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5月25日なんでや劇場レポート(1)免疫ってどこでできるの?

2008-06-01 21:01:52 | なんでや劇場
■免疫ってどこでできるの?
(上の絵の拡大図はこちら→リンク

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そもそも免疫は血液とリンパ液の中にいます。
そして免疫細胞は骨髄中の造血幹細胞が不均等分裂することによってできます。

・造血幹細胞→骨髄系幹細胞+造血幹細胞に分裂
もしくは
・造血幹細胞→リンパ球系幹細胞+造血幹細胞に分裂

自分とそうでないものに分裂すること、これが不均等分裂です。この造血幹細胞の特性は「分化」「自己複製」というまとめ方をされます。
常に造血幹細胞は作り続けられるので造血幹細胞の数は変わりません。
造血幹細胞から分裂した骨髄系幹細胞とリンパ球系幹細胞から免疫細胞ができます。

ちなみに幹細胞とよばれるものは骨髄中にいる場合75%のものが細胞周期上静止状態(細胞分裂を停止している状態)にあるそうです。そして分化したものの細胞周期は短くなっていくようです。 血液細胞は一度分化の道を歩み出すと逆戻りはできません。免疫細胞から幹細胞には戻れないということです。
その辺に関してはこちらにわかりやすく解説されています。→リンク

ではディティールに踏み込んでいきます。

まずは馴染みやすい血液中の免疫細胞の生成過程です

造血幹細胞から分裂した骨髄系幹細胞から血液中の様々な細胞ができます。免疫細胞もその1つです。
血液中には酸素を運搬する赤血球やケガをしたときに止血作用のある血小板、そして細菌などと戦ってくれる白血球がいますね。全て骨髄系幹細胞からできています。
免疫機能として働いてくれる細胞は白血球の中の単球(→血管から出て全身にいくとマクロファージ)と好中球です。この2つは異物(ウイルスなど)を食べる(=くっつく)というしくみで体を守ってくれています。この食作用については前回のなん劇レポートに詳しく書かれているので参考にしてください。

つまり、食べる系の免疫は骨髄系幹細胞からつくられています。


では続いてちょっと複雑になりますが、リンパ系免疫細胞の生成過程です

そもそもリンパ系って何?って思った方はこちらの記事を参考にしてください。

リンパ系免疫細胞は骨髄からリンパ組織にそのまま出て行くNK(ナチュラルキラー)細胞とB細胞、胸腺で成熟してからでていくT細胞があります。
BとTの名前の由来は骨髄(Bone Marrow)と胸腺(Thymus)の頭文字だそうです。

B細胞、T細胞(キラーT、ヘルパーT)といえば異物を個別認識して連係プレーで異物を殺してしまうという高度なことをやってのける細胞たちです。高度な個別認識機能ゆえに非常に高い変異性をもたなければならず、それゆえに欠陥細胞も多くなってしまうため、それらを淘汰する過程が必要になります。


T細胞は胸腺で欠陥細胞をアポトーシス(細胞の自殺、プログラムされた細胞死)するようです。99%に近い未熟細胞がアポトーシスします。
そのあたりのわかりやすいマンガがあるので紹介しておきます。→リンク

ちなみに99%の全てがアポトーシスしきれるわけではないようで、アポトーシスしなかったものの中からアレルギー(自己免疫疾患)の原因になる細胞ができることもあります。アレルギーの話は複雑なのでまた今度。


ではB細胞は?というと濾胞樹状細胞によってアポトーシスを誘発されるようです。

濾胞樹状細胞ってなに?
>リンパ節、脾臓などのリンパ組織のみに存在する。多くの樹状突起をもつ非常に大型の不規則な形をした細胞。突起を結合させてネットワーク構造を形成している。抗原をB細胞に提示し、その抗原に対して高親和性の抗体を産生できるB細胞のみを選択して増殖させ活性化させる。一方、低親和性の抗体を作るB細胞は濾胞樹状細胞により選択され、死滅しリンパ節から消滅する。
独立行政法人 理化学研究所 より

これは仮説ですが、B細胞が作った低親和性の抗体が新たなウイルスになっているという可能性があると考えられます。


つまりT細胞もB細胞も変異性が高い細胞だけに欠陥品が多く、ほとんどがアポトーシスされてしまいます。しかし全てがアポトーシスしきれてるとは言えず、欠陥品からアレルギーの原因である細胞や、ウイルスができている可能性が高いといえます。


ではNK細胞に淘汰過程がないの?というとないそうです。

それはなぜでしょう?

NK細胞は特定の糖鎖(MHCクラスⅠ分子)を用いて敵味方を認識しているということは前回のなん劇ででてきましたね。これが敵認識機能の全てとは言い切れませんが、B細胞やT細胞に比べれば単純な認識機能の細胞です。だから変異を伴う必要がないため淘汰過程も必要ないそうです。

というわけで長くなりましたが、リンパ系免疫の生成過程をまとめると、
骨髄からリンパ組織にそのまま出て行くNK細胞とB細胞、胸腺で成熟してからでていくT細胞があり、B細胞とT細胞は変異性が高いゆえに欠陥品が多く、ほとんどがアポトーシスされてしまうということです。

そして前回のなん劇の内容である

カンブリア大爆発→超外圧期⇒NK細胞という突然変異細胞と共存する方向で進化を進める⇒NK細胞獲得

哺乳類(弱者であるがゆえの)の生存圧力⇒運動神経系の強化→神経伝達組織がウイルスの絶好の生息域→生命危機⇒T・B細胞によりウイルスに対応する免疫機能の獲得


という免疫機能の獲得背景からも、リンパ系の免疫は変異可能性にかけたものであるといえます。


ここで少し横道にそれますが、ガンの話をしたいと思います。

生体の中で、自己複製ができるのは、幹細胞とガン細胞だけなのですが、その両者の違いは、制御された自己複製か、制御不能の自己複製かということです。よってガンになる人は、自己複製制御機能が衰えてしまった高年齢層に多いのです。

しかし、急性小児リンパ性白血病は0~9歳までが多いそうです。しかも小児ガンの80%がこの急性小児リンパ性白血病だそうです。また原因もB細胞系列性(約85%),T細胞性(約15%)とB細胞系によるものがほとんどです

おそらくこの事象から言えることは、小児ガンの原因はリンパ系免疫組織が未発達であるため突然変異を起こしガン化しているのだと考えられます。

ここからもリンパ系免疫組織がという変異性=不安定なものであり、それらと共存して今の免疫機能ができているということがわかりますね


最後にまとめとくと、

くっつく系免疫→骨髄系幹細胞→血液中
変異系免疫→リンパ球系幹細胞→リンパ液中

そして一番大事なところは
リンパ系免疫は変異に賭けた!
ということです。

まことに長い間お付き合いいただきありがとうございました

今回の劇場は生物がいかに逆境に適応してきたかが非常にわかりやすかったですね

では次回のなん劇を楽しみに待ちつつ第2回めのm!sh!ちゃんにバトンを渡したいと思います。

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9 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (どう)
2008-06-02 01:48:12
勉強されていますね
ただ、最初の図が見えないです…
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Unknown (しみっちょ)
2008-06-02 13:02:11
超大作のレポートありがとう!

世間にある「免疫」についての本は
いかにすばらしいシステムか→どう生かすかという視点で書かれたものが多いですが、

>リンパ系免疫は変異に賭けた!

という事実をもみると、ちょっと危なっかしさも感じますね。

返信する
Unknown (asa)
2008-06-02 19:45:29
>くっつく系免疫→骨髄系幹細胞→血液中
>変異系免疫→リンパ球系幹細胞→リンパ液中

分かりやすいっ!ありがとうございます。

免疫も外圧適応態なんですね。
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うぉほ~ (カマタのサル28号)
2008-06-02 19:53:25
masamuneさん、詳しい解説ありがとうごじゃります
返信する
こめんとありがとうございます。 (MASAMUNE)
2008-06-03 02:13:22
>どうさん

いろんな人の協力を得て画像拡大に成功しました!

また次回の劇場の復習に使ってもらえたらうれしいです


>しみっちょさん

確かに危なっかしいですね

今の免疫が普通に作用してもらうような研究で十分な気がします。

まずは自分の体に感謝ですな


>asaさん

>免疫も外圧適応態なんですね。

そうですね。外圧に一生懸命対応してくれている免疫君には頭が下がります


>カマタのサル28号

一緒にがんばって勉強しましょ~
返信する
B細胞がどうやって変異しているかというと、、、 (やっさん)
2008-06-03 03:15:51
劇場中では、さらっと流れてしまいましたが、B細胞やT細胞がどうやって変異を行っているかというと、な、なんと遺伝子を組み替えているらしいのです

これは、すごいことなんですよ
考えてみたらわかると想うのですが、通常の細胞の遺伝子が組み替わることは決してありません
(突然変異はありますけどね

そもそも、こんなことが細胞内で頻繁に起こっていたら、大変なんですよ~
極端にいえば、朝起きたら違う生き物
になっちゃってたって話です

劇場中に議長もおっしゃっていましたが、変異可能性にかける=遺伝子組み換えを行うということは、生物にとって危険な営みなんです

しかし、その背景には、そんな危険な営みに可能性収束することでしか適応できないほど高い逆境下にあったと捉えることもできます

恐るべし免疫細胞・・・
返信する
免疫機能を勉強する意味 (ミサイルマン)
2008-06-03 22:30:48
変異のメカニズムが最も多様化した免疫機能を勉強することは、生物進化の最重要ポイントを勉強するようなものらしいです。

最近なかなかなんで屋劇場に出ることが出来ませんが、何とか時間をつくって参加せねば・・・
返信する
Unknown (たく)
2008-06-04 14:48:40
たしかに人間の体の仕組みはすごい!と思うところも多いですが、免疫機能と変異による小児ガンの発生を見るとデメリットもあるんですね。

ただ、それのリスクを鑑みても免疫機能を獲得することが、人類にとっては、より適応的だったと言うことなんだと思います。

NHKで「病の起源」というシリーズをやっていたのですが、人類が世界中に拡散する過程で得た体の仕組みが、一方では逃れられない病を生み出す原因になっている、というものでした。

↓で皮膚の色の回が紹介されています。
ミーチャンハーチャン: NHK:病の起源-「骨と皮膚の病気」
http://yoiotoko.way-nifty.com/blog/2008/05/nhk_79a4.html
返信する
コメントありがとうございます② (MASAMUNE)
2008-06-05 11:29:07
>やっさんさん

>劇場中では、さらっと流れてしまいましたが、B細胞やT細胞がどうやって変異を行っているかというと、な、なんと遺伝子を組み替えているらしいのです


まじっすか

サラッと流してしまいましたがそんなことをやりながら変異してるわけですね。

そこまでして体を守ってくれている免疫細胞に感謝です


>ミサイルマンさん

そうですよね。安定するために変異を加速させたという免疫メカニズムをしっかり学べば現代社会の問題にも答えを出すヒントになります。

ぜひ一緒に勉強しましょう


>たくさん

おもしろい記事の紹介ありがとうございます。

免疫も皮膚のメラニン色素も外圧に適応するためなんですね
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