旅限無(りょげむ)

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月刊『文藝春秋』10月号 其の壱

2005-09-13 19:58:55 | 書想(その他)
■何が何やらさっぱり分からないまま選挙に突入する直前に編集された最新号なので、選挙に関係する記事は「どちらが勝つにしても」の但し書きが付いている割には、現実の選挙結果を予期しているような文章が多いような気がします。いくつか注目した記事を引用しながら、選挙を「反省」してみようと思います。

■追求リポート『役人公費40兆円の暗黒大陸』(伊藤惇夫&取材班)は胸が悪くなるような情報が満載で、余程体調が良い時か精神的な余裕が有る時に読んだ方が良いでしょうなあ。本当に腹が立ちます。でも、こんなミミッチイことを大真面目な顔をしてやっているお役人さん達が哀れにも思えます。さてさて、最新号の特集は「9・11総選挙と日本の選択」という論文9本と対談1本で構成されていまして、これは読ませますぞ!中西輝政さんの『宰相小泉が国民に与えた生贄(いけにえ)』というちょっと長い論文は、御専門の英国政治史からロイド・ジョージを引っ張り出して、小泉さんの「刺客選挙」とそっくりな「クーポン選挙」が1918年に実施された顛末を詳細に述べています。後日談まで書かれているので、小泉さんが圧勝したからには、是非目を通しておくべきだと思いますなあ。オチまで書いてしまうと営業妨害になりますから、差し控えますが、さも有りなん、という筋書きが楽しめます。

■同じ特集に入っている東谷暁さんの『郵政民営化の中身は空っぽ』も、自民党に投票した人の中には選挙前に読んでおきたかった!と悔しがる人もいるかも知れない内容です。さてさて、一番のお楽しみが堺屋太一さんと野口悠紀雄さんの対談『族議員死して官僚の高笑い』です。二人とも官僚の悪口となったら自分の体験を通して楽しそうに語るので、小泉さんが何をしたのかを官僚側から解説してくれています。最後は、選挙に勝った政党に、官僚政治打破を望む、という詰まらない締め方なのですが、対談中に出て来る聞き捨てならならにネタを抜き書きしておきます。


p141 
堺屋 戦後日本の社会構造において、この官僚集団を牽制する力を持っていたのは、民間大企業と自民党政治でした。ところがここ数年のうちに、この三者の拮抗状態の中から政治の力が急速に低下している。……

野口 高度成長期に比べて官僚の力が低下した一つの理由は、税制における山中貞則氏のように、専門的知識を持つ政治家が藤蔵したからです。

■小泉時代になって、政治家が重石にならなくなって官僚が好き放題に動き出したという話なのですが、その恐ろしい具体例が出て来ます。


堺屋 90年代には政治主導の改革が進みましたが、小泉内閣はそういった政治家たちを“族議員”という名のもとに駆逐してしまったのです。その結果、残った官僚の独走となり、官僚だけがどんどん力を強化されています。残念ながら小泉さんはそのことに気付いていない。族議員を潰したからいいじゃないか、と思っているはずです。

「族議員」には良い族議員と悪い族議員がいるという事です。しかし、多くのマスコミは水戸黄門の悪代官と同じ扱いで「族議員」を悪者にしていましたなあ。だから、自分が族議員になれなかった小泉さんが、訳知り顔のジイサン連中をばったばったと切り倒すのが痛快に思えたのでしょう。この筋書きを作ったのが、官僚達だったとしたら、これはエライことですぞ!

其の弐に続く
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