トーキング・マイノリティ

読書、歴史、映画の話を主に書き綴る電子随想

女法王ジョヴァンナ その三

2015-11-30 21:10:14 | 読書/欧米史
その一、その二の続き フルメンツィオは既に約束の場で待っており、傍の木にはロバが繋がれていた。2人はロバに乗って、夜道を一晩中進む。夜が明けた頃、パンと共にフルメンツィオは持参してきた修道士の服を見せ、恋人にこれに着換える様に云う。修道士の服、つまり男の服を着ることにジョヴァンナは激しく首を振る。聖書では、“女は男の着物を身に着けてはならない。男は女の着物を着てはならない(申命記22: . . . 本文を読む

女法王ジョヴァンナ その二

2015-11-29 20:42:42 | 読書/欧米史
その一の続き 両親とジョヴァンナの親子3人は、修道士の父親の仕事である洗礼や埋葬、ミサをしながら、ドイツやフランスの各地方を放浪していたらしい。彼女が8歳の時に母が亡くなり、それに衝撃を受けた父はそれまでの生き方を変える。父は可愛らしく利発に育っている娘を連れて、豪族や金持ちの商人の家を廻り始める。誰それの家で宴があるという情報をキャッチし、父は宴の始まる頃合を見計らい、その家の扉の前に父娘で立つ . . . 本文を読む

女法王ジョヴァンナ その一

2015-11-28 20:40:15 | 読書/欧米史
『愛の年代記』(塩野七生著、新潮社)を暫くぶりで読み返した。全9編からなる短編集で、どれも味わい深い作品ばかりだが、今回は最終章の「女法王ジョヴァンナ」が特に面白かった。タイトル通り中世の伝説を元に、ローマ法王になった女を描いた歴史小説。私の持っているのは初版が1975年3月の単行本で、70年代当時の社会風潮も伺える。作品は次の文章で始まっている。 「私たち20世紀に生きる女にとって、やろうとし . . . 本文を読む

乙女座の怪人

2015-11-24 21:10:16 | 音楽、TV、観劇
 今日は不世出のロック・ヴォーカリスト、フレディ・マーキュリーの命日である。フレディの誕生日は1946年9月5日、乙女座の男なのだ。8月生まれだが私も実は乙女座、やはりファンとしては同じ星座というだけで嬉しさを感じてしまう。ネットでは占いサイトも多く、血液型も組み合わせた星座占いサイトもある。フレディの血液型は不明なので、血液型なしの占いで検索してヒットした2つのサイトは面白かった。そのひとつは[ . . . 本文を読む

仏教徒とムスリムの対話 その二

2015-11-21 20:40:11 | 読書/ノンフィクション
その一の続き イスラム政治思想が専門の池内恵氏は、一生付き合わざるを得ない本として当然ながらコーランを挙げている。日本人でコーランを最初から最後まで読み通した人は実際には殆どいないだろうと前置きした後、コーランはそもそも頭から読んでいくようにはできていない、と述べる。 コーランは神の使徒で預言者とされるムハンマド自身が、神の啓示を受けてその口を通じて発した神の言葉を、そのまま記したものと信じられて . . . 本文を読む

仏教徒とムスリムの対話 その一

2015-11-20 21:10:06 | 読書/ノンフィクション
 1~2ヶ月ほど前だったと思うが、河北新報にイスラム教への理解を深める講座の案内が載っていた。私がそれを見て驚いたのは、講師がイスラム専門の大学教授若しくは研究者ではなく、何と仏教僧だったこと。イスラムを研究する仏教僧がいても別におかしくはないが、この宗教への理解を訴える仏教僧がいたこと自体、いかにも日本的というか… 件の講座には出なかったし、僧侶の名は忘れたが、こんな講座をすること . . . 本文を読む

トルコ大使館前乱闘事件に思うこと その四

2015-11-14 21:10:17 | 世相(日本)
その一、その二、その三の続き 10月28日、大使館前乱闘事件で日本クルド文化協会は、「日本人に迷惑をかけたことをお詫びしたい」と記者会見で謝罪、それを伝える動画付ニュースサイトもある。この謝罪会見はネット掲示板でも、「ちゃんと謝罪するだけ某国よりマシな民族」と概ね好評だ。だが、動画を見た私の感想は白々しい、の一言だった。記者会見したクルド人は用意されたとしか思えぬ原稿を上手くはない日本語で読み上げ . . . 本文を読む

トルコ大使館前乱闘事件に思うこと その三

2015-11-13 21:10:11 | 世相(外国)
その一、その二の続き 現場に居合わせた人によれば、トルコ大使館前乱闘事件は旗が掲げられたことがきっかけだったという。独立旗を掲げたクルド人をトルコ人が襲撃した、反対にトルコ民族主義の右派政党の旗が掲げられていたことにクルド人が激高した等、情報は錯綜している。クルド人、トルコ人双方ともに先に相手が襲いかかったと主張しており、周辺の防犯カメラや、現場で撮影された動画の解析を進める他に真相は突き止められ . . . 本文を読む

トルコ大使館前乱闘事件に思うこと その二

2015-11-09 21:10:04 | 世相(外国)
その一の続き 同じ事件を報じたニュースサイトでも、YAHOO版は産経と見解がかなり異なっている。ニュースタイトルが「トルコ大使館前の乱闘 差別の根底に潜む恐怖心」、記事を書いたのは毎日新聞記者・藤原章生。藤原は記事で17回も「差別」の言葉を使っており、結論は「恐怖を取り除けば差別は薄まる」。 この記事への私の感想は下らない、の一言。先の産経では、元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による「「遠距離ナ . . . 本文を読む

トルコ大使館前乱闘事件に思うこと その一

2015-11-08 14:40:19 | 世相(日本)
 10月25日、東京都渋谷区神宮前のトルコ大使館周辺で、日本在住のトルコ人とクルド系トルコ人との間で乱闘事件が起きた。大半の視聴者はニュース映像を見て驚愕しただろうし、近年の日本では見られない大規模なものとなった。この事件を報じた産経のニュースサイトがあり、これによれば、当日の大使館周辺は午前7時時点でトルコ人約500人、クルド系トルコ人約50人ほどが集まっていたと見られている。 トルコ総選挙の在 . . . 本文を読む